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増村保造監督『濡れた二人』その3

2013-08-25 12:35:00 | ノンジャンル
 また昨日の続きです。
 夜、シゲオが路上でマサオに会います。シゲオ「その顔、どうしたんだ?」「社長にやられたのさ。お前も殴りたけりゃ、殴っていいぜ」「どこへ行くんだ?」「ヘッ、このうち追い出されたのさ」「強姦やったからか?」「そうさ、かえってサバサバしたぜ。あいつは頂いたし、親父やお前にもう頭下げることもない。これでも一人前の漁師なんだ。どこ行っても飯ぐらい食えるぜ」。行こうとして「あー、清江は俺のお古だぜ。かわいがってやんな」。社長「シゲオ、ちょっと来い、話がある」。清江は座って泣いています。「座れ!」「マサオのことだろ?」「さっき清江から事情を聞いたんだ。叩き出してやった! ガキの頃から育ててやった恩も忘れて、とんでもない事しやがる」「悪気じゃないよ。前からこいつが好きだったんだ」「清江はお前の女房になる娘だ。それに手を出すとは。あきれて物が言えん」「話はそれだけかい?」「マサオのやった事は忘れる。清江は狂犬に噛まれたようなもんだ。災難だよ。かわいそうだと思って、今までよりいたわってやれ」「俺、どうしてもこいつと夫婦になるのかよ?」「当たり前だ」「なぜだよ? こいつの親父が網元で、あんたの会社の重役だからか? 金を借りてる手前、断れねえのかよ?」「馬鹿野郎! この子がひでえ目に会ったのもお前のためだ。人の女房なんか追っかけて、ほったらかしにしたせいだぞ」「清江! 親父にそう言ったのか?」。清江、一瞬シゲオを見て、その後、両手で顔を隠します。「お前も男なら責任を取れ。清江を大事にしろ。人の女房なんかに手を出したら、今度こそ許さんぞ!」。父、立ち去ろうとし、「二人の結婚は2、3年先のつもりだったが、来年早々やる。妙な噂が広まるとうるさいからな」。父去り、シゲオは清江の両手を持ちます。「清江!(清江は視線を外したままです)親父をうまく泣き落としたな」。清江はシゲオを見て微笑み、「あんな女にあんたを渡すもんか!」と言って、腕を振りほどき、立ち去ります。
 マリコ、浴衣姿で鏡台を向いています。夫もはやはり浴衣姿で布団の上にあぐらをかいています。夫「あぁ~、いいなぁ、畳の上も」「だから早く来てって言ったのに」「今日だって黙って仕事を抜けて来たんだ。ふふ、今頃みんな探してるだろうな」「いつまでここにいられるの?」「明日の朝、早く帰る。スタッフに迷惑かけたくないよ」。マリコ、振り返り「じゃ、何しに来たの? ここへ?」。夫もマリコへ視線を向け「お前が変な電話をかけてくるから、気になったんだよ。さぁ、おいで」。マリコ、横向きに座り直します。「どうしたんだ?」「あたし」「何?」「あたし、もうあなただけのものじゃなくなったの。今日舟の上でシゲオさんと」。夫の方へ向き直り「怒る? 離婚する? 離婚届、送ってくださってもいいのよ。判、押します」。夫、横向きに座り直し「シゲオって、どんな男だ?」。マリコ近づき「ここの水産会社の社長の息子よ」「好きなのか?」。マリコ、決心したように、頷きながら「えぇ」。「若いのか?」「えぇ」「どのくらい若い、俺より?」「十(とう)くらい」「25か‥‥。(マリコを見据え)君を幸せにできるのか?」。マリコ、視線を外し「分からないわ」夫、言い急いで「君を養っていけるのか?」「分からないわ」「結婚するのか?」。夫を見て、首振りながら「分からない。(音楽、流れ始めます)何も分からない。ただ好きなの」。夫うつむき「僕は、もっと早く来ればよかったのか?」「あなたがいてもいなくても(マリコ、泣き出します)好きなものは好きだと思うわ」「旅先の出来事として、そっとしておくことはできないのか?」。マリコ、首振り、声震わせて「分からない。(夫に背を向けて座り直し)本当に分からないの」。夫、マリコを見据えて「俺たち、愛し合ってるんだろ?」「愛してるわ」「それでも不満なのか?」「「だけど、生きてないわ!」「生きるって、そんなに大事なことなのか?」。マリコ、布団に身を投げ出して、夫を見据え、息をスーと吸い「大事よ! 人間は生き物だもの。生きるってねぇ、泣くことよ、喚くことよ、暴れて引っ掻いて、ジタバタすることなのよ。あたしたち、一度だってそんなこと、したことないわ」。夫、マリコに添って横たわり、肩に手をかけ、「明日、一緒に東京へ帰ろう」「いいの? こんなあたしでも?」。夫、ライトを消します。「あなた」。夫マリコの浴衣を脱がします。(またまた明日へ続きます‥‥)

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