ジュノ・ディアス『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』その１

　朝日新聞で紹介されていた、ジュノ・ディアスの'07年作品『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』を読みました。
　ドミニカにおける土着的な呪いのことをフクと呼び、それを避ける呪文はサファであることが先ず語られます。俺が知るオスカーは幼稚園の時には他のドミニカ男同様の女たらしでしたが、６才でアメリカへ移住し、７才でその頂点を迎えると、後は風体がどんどん醜くなるにしたがって、筋金入りのRPGやSFファンタジーに夢中のオタク野郎となり、高校生活の最後の年には二人のオタク仲間にも彼女ができてしまう中、一人ふられ続けます。その年の夏には姉のロラとともに母によって故郷のサント・ドミンゴに送られますが、そこでも周囲から孤立し続け、やがて宇宙オペラの大作を書き始めるようになり、アメリカに戻って来た後、大学受験の準備中、同じ受験生のアナと付き合うようになりますが、手も握らないうちに、彼女は兵役から戻ってきた恋人マニーの元に戻り、それからしばらくしてアナがマニーから暴行を受けると、オスカーは彼を射殺することを考えますが、実行には移せず、その後、オスカーはタロガーズ大学に入学し、やはり女の子に恋いこがれながらも縁のない生活が続くのでした。
　一方、私ことロラはパンク娘で、アルドという若者と恋に落ち、家を留守にしたりして母と険悪な仲となりますが、ある日母の手を叩いてしまい、母との決裂は決定的になります。母によってサント・ドミンゴに送られた私は、全てに優れ学校の人気者となり、やがて映画館でアルバイトをするマックスと付き合うことになります。
　時代は遡り、オスカーの祖母のラ・インカと母のベリの時代。彼女らは50年代のドミニカのバニに住んでいて、ベリは13才で良家の子女が通うエル・レデントル校に通うようになり、学校で一番ハンサムなジャックを恋人としますが、やがて二人の肉体関係がスキャンダルとなり、ベリの学籍は抹消され、ウェイトレスとして働き始めると、ギャングの愛人となり、妊娠が判明した後、彼がドミニカの独裁者トルヒーヨの妹と結婚していたことが分かり、それでも彼と結婚すると言い張ったベリは、ある日サトウキビ畑の中で深夜半殺しの目に会いますが、マングースの幻影を見て助かり、その夜トルヒーヨは暗殺され、16才でアメリカに移住していきます。
　時代は下り、オスカーの時代。俺ことユニオールがケンカで半殺しの目に会った時、唯一看病してくれたのはロラで、俺たちは付き合うようになっていきます。オスカーが自殺未遂事件を起こした時、俺は彼に救いの手を差し伸べ、彼に生活習慣の改善指導までしようとしましたが、結局オスカーに拒否され、怒った俺が彼を殴ったため、俺はロラから絶縁を言い渡されます。やがてオスカーはゴスの子・ジェニに恋して付き合うようになりますが、これも結局ふられ、彼は鉄橋から飛び降りて自殺未遂事件を起こした後、再び俺の前に現れるのでした。（明日へ続きます‥‥）

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