えくぼ

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パパを語る佐佐木定綱

2016-10-10 09:46:33 | 歌う

          ~ パパを語る佐佐木定綱 ~

 ~最近、「父親に似てきた」と言われることが増えた。あゝ、なんてこった。将来こうなるのか。と頭を抱えるが、まあ、どうしようもない。遺伝子とやらはそいうものだ。~「うた新聞10月号」で連載第7回の♠「親子でシンクロ」はこんな文から始まっている。文というより「おしゃべり」。私に話しかけてくれのは佐佐木定綱。伝統ある短歌結社「心の花」主宰・佐佐木幸綱の次男である。

 定綱は♠第62回角川短歌賞に決定、(竹中優子(未来)とのダブル受賞である)。定綱は昨年度は「シャンデリアまだ使えますか」が次席。今年の受賞作は「魚は机を濡らす」 連作のタイトルが独特である。「平凡な作品なんか作りたくない」、ジャンプしたい青年か。4回転のジャンプを?

 「父親の若い頃に似ているらしい、血か環境か、なんて議論はどうでもよく、無意識に染みこんでしまっている。短歌については ♠父は力強い短歌だが、ぼくは力強くない。命令形の歌だったり、言い切り、小さいものから大きいものへのダイナミックな視点移動など、模倣した歌はいくつかあるが。歌を作り始めたときは、反抗期もとうに終わっていたので、似ていないものを目指すでもなく、素直にまねをした」。 定綱はまだ30歳、今後が楽しみだ。

 「現状では父と似ているところはあまりなさそうだ。自分では気が付かないが、他人から見たらそっくり、というところも。恐ろしい。 ♠ひとつだけ、短歌への接し方は似ているかもしれない。あまり奇をてらったりせずにうたう。妙な深読みをしたり、迎えて読まずに、歌そのものと向き合う。変に構えたり、豪華なレトリックを凝らしたりはしないで、等身大で対峙する。

 定綱は若いのに、すでに短歌を心得ているようだ。心得ないままに短歌の山道で幾度も遭難しそうになった私とは違うなあと思う。私はもうジャンプはしない。しかし ♠定綱は大けがをしない範囲で盛んにジャンプを。例えば 2月2日 朝日・あるきだす言葉たち

  ♦ 十二時に存在しなくって八時には存在している死骸

  ♦ ねこの血をわが腕より拭うとき流れていた歌口づさむかかな

       「死骸」 8首より 第1首と第8首 

 この定綱の歌をパパの幸綱氏は苦笑されるか。あるいは「やったじゃないか」 かもしれない。角川短歌賞の✿「魚は机を濡らす」 どんな魚か 早く見たい読みたい。       

                  10月10日  松井多絵子