・・・ 柿の灯りを ・・・
❤ 食べごろの富有柿ひと山購いて我はいくつも明かりを抱く 松井多絵子
わが家の近くに大木に囲まれた家がある。昼でも雨戸が閉まったまま、門扉も壊れかけている。表札もない。何年も前から人が住んでいないようである。その庭の木々はみな高木だ。いまは何百もの朱い柿の実が木を飾っている。だれも取らないのは渋柿だからだろうか。1週間前に清里のツアーに参加した時、渋柿のおいしい食べ方を知った。教えてくれたのは若くてよく笑う異国の女性添乗員さん。
「ワタシは中国人です」と彼女が自己紹介するまで日本の女の子と思っていた。日本の大学に留学しクラブツーリズムの添乗員をしているシュウさん。「日本の柿が甘くて大好きです」というときの笑顔が愛らしい。北京で育った彼女は冷凍した渋柿を、シャーベットのように食べていたそうである。渋柿は2日間水に漬けておくと渋みが抜けるとは、、。
シュウさんから聞いたことを試してみたいが、渋柿なんて売っていない。無人の家の柿の実を一つ欲しいなあとおもう。しかし手をのばしても届かない、柿も落ちて来ない。わたしは近くの八百屋さんで富有柿ひと山を買う。特売で6個500円。抱えるといくつも灯りを抱いているような感じがする。朱色の光沢のある肌の柿は眺めて楽しく、食べれば甘くとろりとした食感がなんともいえない。日本では沖縄以外は全国で栽培され、和歌山、福岡、奈良などが栽培面積が広い。北東北や北海道などの寒冷地は渋柿らしい。シュウさんの育った北京は寒冷地だから渋柿しか知らなかったのではないか。北海道の皆さま、柿にはビタミンCがたっぷりありますよ。カゼの予防に渋柿をぜひ召し上がってください。既に柿の木には凍った柿がたわわに実っているかもしれませんね。
笑わず今日も終わってしまうのか我は手にとる笑う富有柿
10月27日 松井多絵子