どんな音階素材を使ってインプロヴィゼーションに臨むかによって楽曲のニュアンスは大きく変わってくる。もちろんある程度の標準になるスケールはあるが、あとは個人の自由。自分のイメージするサウンド感覚でスケールを選べばよいのだ。その選択の基準になるのは、サウンドの緊張度である場合が多い。音楽の中での緊張度はどうあるべきか?もちろんこんな問いに正解はないのだが、できるだけ客観的な視点で捉えること、そして緊張度を即興的に変えられるアドリブの技術を持つことが重要だと思う。瞬間的に選んだ音こそがアドリブの正解なのだ。固定観念は音楽を堅苦しくしてしまう。それに一つの旋法にとどまって音楽が進むと三全音が威力を発揮しだして調性感も固定化されてしまう。いわゆるイオニア的になってしまう。インプロヴィゼーションは耳が頼りだ。旋律の半音階的な変化も事前に察知できる訓練がとても必要だ。ジャズスタンダード曲はミュージシャンが選んだ重要なアドリブ素材だ。それをいわば教材にしていろいろインプロヴィゼーションを試してみることがジャズ演奏の「耳」を鍛えることにもなる。結果を気にしても始まらない。後の分析は人にまかせておけばいいのだ。アートブレイキーがジャズはミスした音をどう処理するかが重要だと言っていた。ミスを不思議な音として正当化させてしまうしまうのもアドリブ芸術のひとつかもしれない。