ジャズピアニストのジャズ批評

プロの耳で聞いたジャズをミュージシャン流に批評。

Whisper Not

2015-01-05 01:11:24 | Weblog

1956年に当時ジャズメッセンジャーズにいたベニーゴルソンが書いた曲。そのあと1958年にアニタオデイが歌詞をつけて歌ったことで、ボーカルチューンとしても有名になった。タイトルにもなったエラのアルバムもある。もちろんゴルソン自身の演奏も数多く残されている。形式はA-A-B-A、32小節、お決まりのセカンドリフもあるが、Aの部分のチェンジだ。ウソか本当か知らないが、ゴルソンがごく短い時間で思いついて書きあげたということで有名になっている。作曲に要する時間を特定するのは難しい、というかある意味ナンセンスだ。たいていは書き始めた時からの時間だろうけど、音楽を作るには、その前の音楽の勉強という膨大な時間が隠されている。反対に何年がかりの大曲といっても途中で休むこともあるし、頭の中だけで構想を練る時間も含まれている。絵画や小説などもそうだが確かに、筆の早い人遅い人さまざまだ。どちらがどうのこうのというのはない。良いものを作ればそれでいいのだ。作曲ははずれも多い。表面には出てこないけど、完成したけどよくないとか、途中でいやになってボツにしたとかという曲は作曲をしてるひとならいっぱいある。ジャズインプロヴィゼーションもそういう傾向がある。ただし、ジャズの演奏の場合だめだなあと感じても最後までやらないと責任は果たせないからとにかく最後までやる。途中でフッとよくなったりもする。最後まで全然だめな時もある。一晩で10曲、それ以上やる時もあるからいろんなことが起きる。いちいち気にしてられない。音楽作品に完璧なものが存在するのかどうか、ベートーベンのシンフォニーですらベートーベン自身に聞いたら修正したい部分があるかもしれない。アドリブのある部分、本人からしたらミスしたところが「味」になっているような名盤すらある。音楽のミスとはなにか?たいした問題ではないのかもしれない。

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