トミーフラナガンが書いたリズムチェンジだ。メロディーらしきものはない。オーソドックスなジャズ独特のリズムパターンがあるだけ、形式は完全なA-A-B-A、トミーフラナガンが何時どのくらいの労力を費やしてこの曲を書いたのかは定かではない。できたものを聞くとすぐにも作れそうな気がする。でも実際は思いつくというのは大変なことだ。まさにインプロヴィゼーションのための楽曲、ジャズプレーヤーのための曲だ。リズムチェンジというのはいろんな解釈が可能だ。だから幅広いアドリブ素材としてジャズの世界に存在している。コード進行を特定したりするのはナンセンスだと思うけど、ひとつトナリティーに関して個人差がよく現れる現象がある。それは全音階的なものと半音階的なものとどちらよりのアプローチをするかということだ。7音のスケールにそってアドリブしたらそれは歌いやすいけど、どうしても退屈になってしまう。半音階的な音はどうしても必要になってくる。要はその割合だ。トミーの演奏はかなり全音階的だ。これは彼の個性であり、またそのメロディーセンスとリズムのよさで素晴らしいインプロヴィゼーションになっている。でもジャズの演奏の中でのこの問題はひとりがどうのこうのということではないのだ。この音楽的な問題にはベーシストの弾く音が大きく関わってくる。メロディーがトナリティーに沿っててもベースラインが半音をいっぱい使ったら全く別の響きになってしまう。ジャズのサウンドというのはバンド全体のことなのだ。そしてベースラインの音選びはベーシストのセンスにかかっている。ジャズのアドリブというのはもちろんソロをとっている人がリードする形で音楽は進んでいくけど、その音がどう響くかはまわりのミュージシャンのセンス、特にベーシストの力量に大きく左右されるものなんだ。