ジャズピアニストのジャズ批評

プロの耳で聞いたジャズをミュージシャン流に批評。

Monk's Mood Ⅱ

2010-04-17 01:57:05 | Weblog
和声を確定させる上で完全5度は最重要な意味を持っている。根音に対して5度の音を持っていないコードはやはり不安定だ。でもそのコードにはそれなりの用途がある。そしてコードはその中にトライトーンを含んでいるかどうかがそのコードの性質を決める大きな要素だ。トライトーンは6種類ある。そしてそのトライトーンを同時に2種類含む和音もある。2種類含むということはその種類は5種類あるということだ。そしてそのうちの2種類にはその組み合わせによって中に完全5度が含まれる。したがって強い音程根音が発生する。あと3種類のうちの1種類はディミニッシュコード。このコードにはトライトーンのほか3種類の短3度と1種類の長6度が含まれる。12音を4等分したような形状からも根音は弱い。実際の楽曲の中では重要なのは最低音でドミナントモーションを代理したような使われ方をされることが多い。そして残りの2つ、これには一応コードネームをつけることができる。☆7♭5だ。♯11ではない。コードの中に完全5度が存在しないのだ。トライトーンを2つも含んでいるという構造上ドミナントモーションに利用されることが多い。でもドミナント7THではない。モンクはこのサウンドを多用する。モンクの頭の中にはただ単にドミナント7THが鳴っているのだろうか?もちろんジャズはフェイクミュージックだ。プレイヤーが独自の解釈をして和声を組み立てて自分の音楽にすれば良いのだ。でもモンクの世界はやはり独特でそれが「Monk's Music」でもある。和声のひとつひとつがモンクなのだ。このコードのときに5度を押さえてしまうとサウンドがしっくりいかない。このコードにコードネームをつけたりサブドミマイナーと呼んだりドミナントと呼んだり、伝わりさえすればそれでいいようなものだけど演奏する方がやはり深い理解をしていないとつまらない音になってしまう。