ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

神篭池

2017-10-12 17:19:53 | 佐賀県
2017年9月22日 神篭池
 
神篭(こうご)池は佐賀市久保泉町川久保の筑後川水系巨勢川右支流(河川名未確認)にある灌漑目的のアースフィルダムです。
1929年(昭和4年)、1934年(昭和9年)と九州北部を立て続けに襲った大干ばつにより、佐賀県各所で溜池築造の機運が高まります。
神篭池も昭和10年代から建設の動きが出ますが土地買収に手間取ったうえ、戦争による人員・物資不足などから工事は遅延し、結局戦後復員兵や引揚者を動員して1948年(昭和23年)に竣工しました。
溜池名の神篭池は工事中に見つかった神籠石(古代山城の遺構)に由来しています。
完成後は受益者で組織される神篭池水利組合が管理を行っています。
その後国営筑後川下流土地改良事業により佐賀導水路からの受給が始まり安定した用水供給が可能となっています。
 
佐賀市中心部から県道51号を北上すると長崎自動車道の手前で右手に神篭池の堤体が見えてきます。
 
堤体を左手に回り込むと写真のような施設が現れます。
池のほぼ真下を佐賀導水城原金立線が通っており、需要期にはここからの補給を受けます。
奥に見える高架橋は長崎自動車道。
 
池の西側に天端に向かう道があります。
関係者以外立ち入り禁止と書かれたゲートがありましたが、たまたま水利組合の方がおられ許可を得て立ち入ることができました。
右岸湖畔にある取水設備
2008年(平成20年)の改修で設置されたものです。
 
堤体右岸上流側に橋が架かっています。
実はこれが洪水吐。
 
洪水吐導流部。
 
貯水池は総貯水容量31万7000立米。
奥の山は帯隈山で神篭池建設の際に古代山城跡らしき遺跡が発見されました。
池の名称はこの遺跡に由来します。
 
コンクリートで護岸された上流面。
 
 
天端。
 
天端から取水設備を望みます。
周辺にはミカン果樹園が広がりますが、1990年代のオレンジ輸入自由化によりこのあたりのミカン農家の多くは廃業したようです。
 
普段は関係者以外立ち入り禁止ですが、関係者の方がおられ池を見ることができました。
加えて佐賀導水からの補給やオレンジ輸入自由化によるミカン農家の苦境など詳しいお話を伺うことができました。
 
2523 神篭池(1149)
ため池コード 412010022
佐賀県佐賀市久保泉町川久保
筑後川水系巨勢川
16メートル
100メートル
316.8千㎥/285千㎥
神篭池水利組合
1948年

不動池

2017-10-12 12:26:11 | 福岡県
2017年9月21日 不動池
 
不動池は左岸が福岡県糸島市飯原、右岸が同市雷山の雷山川水系長野川右支流不動川源流部にある灌漑目的のアースフィルダムです。
ダム便覧には1936年(昭和11年)に当時の前原町の事業で建設と記されており、管理は飯原地区が行っています。
昭和初期は西日本で干ばつが続きこれを契機に築造された溜池が多くありますが、不動池も同様かと思われます。
堤体右岸に竣工記念碑がありここには由来やその後の経緯などが記されていると思いますが、残念ながら立ち入り禁止で見ることができません。
 
糸島市中心部の筑後前原から県道564号線をひたすら南下、紅葉で有名な千如寺(雷山観音)を目指します。雷山観音から500メートルほど進むと右手にダートの林道が分岐しており、これを5分ほど進むと不動池に到着します。
残念ながら池は立ち入り禁止。
 
フェンス越しに天端を撮影
最近草刈りが行われたようです。
 
上流の樹間から
上流面はコンクリートで護岸
堤体中央に斜樋、右岸に横越流式洪水吐があり、堤体に石碑が建っています。
たぶんここに池の由来等が記されているはずなんですが・・・・
 
石碑と洪水吐をズームアップ
さすが民度が低い福岡、厳重なフェンスを乗り越えて不法侵入するアフォーな釣り師がいます。
 
2387 不動池(1148)
ため池コード 402300156
福岡県糸島市飯原
雷山川水系長野川
17メートル
93メートル
230千㎥/225千㎥
飯原地区
1936年

雷山大溜池

2017-10-12 02:14:20 | 福岡県
2017年9月21日 雷山大溜池
 
雷山(らいざん)大溜池は福岡県糸島市香力の雷山川水系多久川源流部にある灌漑用目的のアースフィルダムです。
1929年(昭和4年)、1934年(昭和9年)と九州北部を立て続けに大干ばつが襲いますが、特に1934年の干ばつでは当時の前原町及び雷山村では作付面積の約半分が収穫皆無という甚大な被害となりました。
これを受け溜池築造の機運が高まり、土地買収など紆余曲折はあったものの1937年(昭和12年)に県営事業による建設が開始され戦時中の物資・人員不足の中、奉仕隊などの動員の甲斐もあり1944年(昭和19年)に無事雷山大溜池が完成しました。
完成当時は福岡県内最大の灌漑用溜池でした。
その後1979年(昭和54年)に大規模な改修を行い現在に至っています。
池の管理は糸島市前原土地改良区が行い、638ヘクタールの農地に灌漑用水を供給しています。
 
糸島市高力の県道564号線『香力台団地バス停』を西に折れると雷山大溜池に到着します。
堤高は25メートルながら堤頂超230メートルの立派な堤体です。
 
右岸から下流面
犬走りを挟んで2段構成になっています。
 
右岸にある竣工記念碑。
 
洪水吐導流部。
 
湾曲した横越流式洪水吐
わかりづらいですが洪水吐手前に穴が開いており、ゲート操作で水位の微調整ができるようです。
 
天端は車道で、上流側は有刺鉄線付きのフェンスが続きます。
こう言っちゃなんですが、福岡は大阪と並ぶ民度が低い土地柄、不法投棄が多いんでしょうねえ。
 
天端からの眺め。
 
総貯水容量は120万立米
自己流域だけでは集水できないため雷山川および長野川からの補給を受けています。
 
天端から見た洪水吐、大きく湾曲しています。
一方で池のすぐそばまですぐ迫る宅地。旧前原町は福岡の衛星都市として昭和40年代以降人口が2倍に膨らみました。
 
円筒形の取水塔。
これは1979年の改修によるものかな?
 
2395 雷山大溜池(1147)
ため池コード 402300001
福岡県糸島市香力
泉川水系多久川
20.5メートル
240メートル
1200千㎥/1150千㎥
糸島市前原土地改良区
1944年