ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

鉄山ダム

2017-10-22 15:27:11 | 福島県
2017年10月8日 鉄山ダム
 
鉄山ダムは福島県南相馬市原町区馬場の太田川水系太田川源流部にある灌漑用目的のアースフィルダムです。
ダム便覧には太田川沿岸土地改良区の事業で1938年(昭和13年)に竣工とあり、土地改良区の前身となる耕地整理組合の事業で建設されたと思われます。
ダムサイトに竣工記念碑がありますが、立ち入り禁止エリアのため碑文を読むことが出ず建設に至る由来やその後の経緯などは不明です。
現在は土地改良区の統合により南相馬市土地改良区が管理を行っていますが、受益地の大半が福島第一原発事故による旧避難指示区域のため貯水は行われていません。
 
南相馬市街から県道49号を南下し、横川ダムの先を4キロほど進むと左手に鉄山ダムの堤体が見えてきます。
下流面は犬走りを挟んで2段構成、草が刈られきれいに管理されています。
水を流す農地はいまだありませんが、来るべき日に備えてきちんと管理されている様は心を打たれます。
 
天端はフェンスに囲まれ立ち入り禁止。
目の前に竣工記念碑がありますが、碑文は反対側のため読むことができません。
 
天端。
 
総貯水容量107万6000立米と灌漑用溜池としてはかなりの規模ですが、水はほとんど溜まっていません。
受益地の大半が旧避難指示区域のため震災以降は低水位での運用が続いています。。
 
右岸の洪水吐と取水設備。
 
ダム下も立ち入りできませんので底樋の確認もできませんでした。
 
追記
鉄山ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には水位低下運用により新たに洪水調節容量が確保されることになりました。
 
0474 鉄山ダム(1164)
福島県南相馬市原町区馬場
太田川水系太田川
25.2メートル
200メートル
1076千㎥/1076千㎥
南相馬市土地改良区
1938年
◎治水協定が締結されたダム

横川ダム

2017-10-22 14:01:47 | 福島県
2017年10月8日 横川ダム
 
横川ダムは福島県南相馬市原町区馬場の太田川水系太田川上流部にある南相馬市が管理する灌漑・工業用水目的の重力式コンクリートダムです。
昭和30年代半ばより当時の原町市南部地域では灌漑用水及び工業用水向けの地下水の過剰摂取による地盤沈下が顕著となり、沈下は年最大2メートルにも及び深刻な問題となってきました。
そこで福島県は地盤沈下対策事業を採択し1984年(昭和59年)に灌漑用水及び工業用水源として横川ダムが建設されました。
横川ダムは原町区988.68ヘクタールの農地への灌漑用水の供給および原町区内の工場および原町火力発電所向けの工業用水の供給を目的として運用され、現在は南相馬市が受託管理を行っています。
横川ダム運用開始に合わせて原町市は市街中心部を地下水採取規制区域に指定、その後同区域での地盤沈下は大きく改善しています。
 
原町中心部から県道49号を南西に進み県道34号を分けると横川ダム管理事務所を示す標識があります。これに従って管理道路を右折すると横川ダム左岸ダムサイトに到着します。
左岸下流側から
クレストは赤いラジアルゲートが2門、オリフィスやコンジットゲートはありません。 
 
下流面。
 
上流面には円形の取水設備。
 
天端は立ち入り禁止でしたが嘱託の管理人さんにお願いしたら写真撮影の許可を頂きました。
 
利水放流設備や減勢工は初めて見る構造です。
左下の建屋は利水放流設備で左手の水路は工業用水向け、右手は灌漑用水向け水路です。
 
導流部下にはシュートブロック、減勢工にはバッフルピアとエンドシルが設置されています。
灌漑用水のうち雲雀ヶ原幹線水路へは奥の青い鉄管で揚水され、南野幹線水路へは減勢工手前の取水口から供給されます。
 
ダム湖は総貯水容量1365万立米。 
 
県道49号線から上流面を見ることができます。
特徴的な半円形の取水設備。
 
 
ダム左岸に管理事務所があります。 
 
 
利水放流設備と減勢工の構造に特徴がありますが、推察のみで実際の仕組みについてはよくわかりません。
次回は市の職員が駐在する平日に再訪してこの施設の仕組みを詳しく教えていただきたいと思います。
 
追記
横川ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には水位低下運用もしくは事前放流により新たに204万~521万立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
0519 横川ダム(1163)
福島県南相馬市原町区馬場
太田川水系太田川
AI
78.5メートル
200メートル
13650千㎥/12750千㎥
南相馬市
1984年
◎治水協定が締結されたダム

高の倉ダム

2017-10-22 12:20:49 | 福島県
2017年10月8日 高の倉ダム
 
高の倉ダムは福島県南相馬市原町区高倉の新田川支流水無川上流部にある灌漑目的の重力式コンクリートダムです。
新田川および右支流の水無川流域は、扇状地形のため中流域は伏流水となり渇水のたびに干ばつ被害が頻発し安定した灌漑用水源の確保は流域農家の悲願となっていました。
1969年(昭和44年)に福島県は農林省の補助を受けた県営かんがい排水事業を採択し、その中核施設として1976年(昭和51年)に完成したのが高の倉ダムです。
現在は南相馬市が管理を受託し、原町区831.5ヘクタールの農地に灌漑用水を供給しています。
 
南相馬市街から県道62号を西進すると高の倉ダム湖に到着します。
総貯水容量は600万立米と本州の農業用ダムとしてはかなり大きな貯水池です。 
 
管理道路を進むと堤体が見えてきます。
クレストには2門の赤いラジアルゲートがあります。
 
ゲート右手に楕円形の取水設備、奥は艇庫です。
 
インクラインと艇庫。
 
天端は立ち入り禁止。
 
下流面
対岸に管理事務所があります。
残念ながら下流側からゲートを拝める場所はありません。
 
農業用ダムとしては珍しくクレストにラジアルゲートを装備したダムですが、ガードは固く見学ポイントは限られています。
 
追記
高の倉ダムは洪水調節容量のない利水ダムですが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には水位低下運用もしくは事前放流により新たに90~250万立米の洪水調節容量が確保されることになりました。 
 
0516 高の倉ダム(1162)
福島県南相馬市原町区高倉
新田川水系水無川
54.2メートル
124.4メートル
6000千㎥/5700千㎥
南相馬市
1975年
◎治水協定を締結したダム