ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

天山ダム

2017-10-13 15:17:56 | 佐賀県
2017年9月22日 天山ダム
 
天山ダムは佐賀県唐津市厳木町天川の六角川水系天川源流部にある九州電力が管理する発電目的のロックフィルダムです。
オイルショックを契機に電力各社は火力偏重の発電体制を見直し、火力や原子力との連携が図れ余剰電力を有効利用できる揚水発電に着目します。
福岡市周辺への人口集中や沿岸各所への工場進出などで電力需要のピークが上昇していた九州電力も1980年代より積極的に揚水発電所建設を進め、同電力2番目の純揚水発電所として1986年(昭和61年)に天山発電所が建設されました。
天山ダムは同発電所の上部調整池として同年竣工し、下部調整池である国交省管理の厳木ダムとの有効落差520メートルを利用して最大60万キロワットの揚水式発電を行っています。
上部ダムの天山ダムは有明海に注ぐ六角川水系、下部ダムの厳木ダムは玄界灘に注ぐ松浦川水系となっており、上部ダムと下部ダムで水系を超える揚水式発電となっています。
さらに天山ダムは九州電力、厳木ダムは国交省と異なる事業者によるダム間での揚水式発電も全国で二箇所に留まっています。
 
県道37号線を北上し厳木ダム、厳木川調整池をやり過ごし唐津市厳木町天川地区に入ると天山ダムを示す標識が現れます。
これに従って右折すると天山ダムに到着します。
天山ダムはダム右岸が公園になっていますが、堤体へは立ち入りできずフェンス越しに眺めるのみです。
おまけに訪問時はガスに包まれ堤体も見ること叶わず・・・。
 
ガスの切れ間に・・・・。
 
上流にあるこの施設は余水吐でしょうか?
 
水利使用標識。
 
天山ダムの案内板。
 
追記
天山ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により新たに300万立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
2550 天山ダム(1152)
佐賀県唐津市厳木町天川
六角川水系天山川
69メートル
380メートル
3270千㎥/3000千㎥
九州電力(株)
1986年
◎治水協定が締結されたダム

嘉瀬川ダム

2017-10-13 13:21:37 | 佐賀県
2017年9月22日 嘉瀬川ダム 
 
嘉瀬川ダムは左岸が佐賀県佐賀市富士町小副川、右岸が同市富士町畑瀬の一級河川嘉瀬川本流上流部にある国交省九州地方整備局が直轄管理する多目的重力式コンクリートダムです。
一級河川嘉瀬川は古くから九州最大の穀倉地帯である佐賀平野の水源となってきましたが、集水域が小さいため水量の季節変動が大きく、また中流平野部は天井川となっているため少雨による渇水と豪雨による洪水が頻発していました。
一方高度成長による都市用水需要の増加や農水省の農業水利事業の採択などにより新たな水源確保も切迫した課題となっていました。
そこで1973年(昭和48年)に建設省九州地方建設局(現国交省九州地方整備局)は嘉瀬川上流部への多目的ダム建設を軸とする『嘉瀬川総合開発事業』を採択しまが、用地買収交渉に20年以上の歳月を要し2005年(平成17年)にようやく本体工事に着手し2011年(平成23年)に嘉瀬川ダムが竣工しました。
 
嘉瀬川ダムは国交省が直轄管理する特定多目的ダムで、嘉瀬川の洪水調節、安定した河川流量を維持と既得取水権としての流域農地への灌漑用水の補給、農水省による『国営筑後川下流白石平野土地改良事業』による9180ヘクタールに対する新規灌漑用水の供給、佐賀市への上水道用水の供給、王子製紙への工業用水の供給、九州電力嘉瀬川発電所での最大2800キロワットのダム式水力発電を目的としています。
しかし、事業着手から完成までに40年近い年月を要し、この間に高度成長の終焉とバブル崩壊、人口減少時代への突入など経済・社会情勢が大きく変化したことで利水需要は当初見通しを大きく下回ることになります。
皮肉なことに嘉瀬川ダム竣工前年より国交省は全国のダム事業見直しを進め多くの事業が縮小・廃止となっています。
 
長崎自動車道佐賀大和インターから国道323号線を北上、古湯温泉を過ぎると右手に嘉瀬川ダムが現れます。
下流から
21世紀のダムらしくクレストには自由越流式洪水吐が並び、さらにオリフィスゲートが1門、コンジットゲートが2門設置されています。
 
右岸から下流面
両岸には堤趾導流壁。
 
天端は車両通行可能
今どきのダムらしく各種建屋はコンクリート打ちっぱなし。
 
減勢工
副ダムが2基あります。
 
左岸には九州電力嘉瀬川発電所と放流設備、ポンプ設備が並びます。
 
ダム湖は『富士しゃくなげ湖』と命名されています。
総貯水容量7100万立米は佐賀県では最大の貯水池です。
訪問時は貯水率30%、水位が非常に低くなっていました。
 
上流面と取水設備。
 
上流から遠望
取水設備の右手にコンジットゲートの予備ゲート、その間にオリフィスゲートがあります。
 
水位が低いため、普段見れない水没した施設が顔を出しています。
こちらはダム建設で水没した九州電力川上発電所の水圧鉄管。
 
道路とガードレール、そして橋梁。
 
ダム湖上流には副ダムがあります。
堤高29.5メートルで型式は台形CSG
ダム湖上流部の湖面水位維持を目的としています。。
 
追記
嘉瀬川ダムには1750万立米の洪水調節容量が設定されていますが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流によりさらに2977万7000立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
2553 嘉瀬川ダム(1151)
佐賀県佐賀市富士町小副川
嘉瀬川水系嘉瀬川
FNAWIP
97メートル
454.5メートル
71000千㎥/68000千㎥
国交省九州地方整備局
2011年
◎治水協定が締結されたダム

北山ダム

2017-10-13 02:31:21 | 佐賀県
2017年9月22日 北山ダム
 
北山(ほくざん)ダムは左岸が佐賀県佐賀市富士町関屋、右岸が同市富士町藤瀬の一級河川嘉瀬川本流上流部にある灌漑・発電目的の重力式コンクリートダムです。
佐賀平野は古くから九州有数の穀倉地帯となっていましたが、主要水源である嘉瀬川は天井川のためたびたび渇水による干ばつ被害が発生し安定した灌漑用水源の確保は流域農民の悲願でした。
一方戦後の食糧難に対処するため農林省(現農水省)は各所で『国営農業水利事業』を着手します。嘉瀬川流域でも1950年(昭和25年)に『国営嘉瀬川農業水利事業』が採択され、その中核施設となったのが北山ダムです。
一方戦後の電力不足を打開するために新たな電源開発を進めていた九州電力は同事業に電気事業者として事業参加、北山ダムは灌漑・発電目的の重力式コンクリートダムとして1955年(昭和30年)に竣工しました。
ダム湖の北山貯水池は総貯水容量2225万立米の規模を誇り、農業用ダムとしては九州最大、2012年(平成24年)に嘉瀬川ダムが完成するまでは佐賀県最大の貯水池となっていました。
北山ダムは運用開始後は佐賀土地改良区が受託管理を行い、管内9248ヘクタールの農地に灌漑用水を供給するほか、九州電力小関発電所で最大5600キロワット、鮎の瀬発電所で1万7600キロワット、南山発電所で4300キロワットと計2万7500キロワットの発電を行っています。
またダム湖周辺は県立脊振北山自然公園に指定され北山国民休養林や北山少年自然の家、21世紀県民の森などが整備される一方、ダム湖は有名な釣りスポットとなっており佐賀県有数のレクリエーションエリアとなっています。
 
嘉瀬川ダムから富士しゃくなげ湖に架かる銀河大橋を渡りそのまま県道を進むと北山ダムを示す標識が現れます。これに従って右折すると北山ダムが見えてきます。
クレストにラジアルゲート2門を装備。
 
右岸から
扶壁上にゲート操作室が乗るスタイルは中国電力のダムでよく見られる形状です。
扶壁のコンクリートが白く、最近ゲート部分の改修があったようです。
 
 
上流面
竣工から60年以上経過した年月を感じさせます。
対岸の塔は少年自然の家の展望台です。
 
灌漑用取水設備は半円形でいかにも戦前から昭和20年代のダムらしいデザイン。
有名な釣りスポットということで湖畔には貸しボートが並んでいます。
 
こちらは九州電力の発電用取水口。
これも昭和20年代らしい大掛かりな設備。
 
現在はゲート工事中ですが天端は歩行者・自転車が通行可能。
 
減勢工。
奥は放流設備からの水路。
 
どうやらダム下にも行けたようです。
後の祭り。
 
ダム湖の北山貯水池
総貯水容量2250万立米と佐賀県第二位の規模で、ダム湖の周囲すべてが公園となっています。
 
追記
北山ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により新たに279万4000立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
2524 北山ダム(1150)
佐賀県佐賀市富士町関屋
DamMaps
嘉瀬川水系嘉瀬川
AP
 
59.3メートル
180メートル
22250千㎥/22000千㎥
佐賀土地改良区
1956年
◎治水協定が締結されたダム