ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

瑞梅寺ダム

2017-10-11 17:12:26 | 福岡県
2017年9月21日 瑞梅寺ダム 
 
瑞梅寺ダムは福岡県糸島市瑞梅寺の瑞梅寺川水系本流源流部にある福岡県県土整備部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助多目的ダムで、瑞梅寺川の洪水調節、瑞梅寺川の安定した河川流量の維持と既得取水権としての灌漑用水への補給、福岡市および糸島市前原地区への上水道用水の供給を目的として1977年(昭和52年)に竣工しました。
また2016年(平成28年)には河川維持放流を利用した瑞梅寺ダム小水力発電所が完成、最大110キロワットの水力発電を行っています。
 
国道252号線から県道563号線を南に折れそのまま南進すると瑞梅寺ダムに到着します。
ダム下から。
洪水吐が屈曲しているのでダムと正対できません。
洪水吐はクレストにラジアルゲートが2門のみ、オリフィスやコンジットはありません。これは昭和40~50年代の福岡県営ダムでよく見られる型式。
一方ダム下右岸に常用洪水吐としてホロージェットバルブが1条あります。
 
ダム右岸から
堤体は右岸が緩やかに湾曲、一方下流面は縦に凹凸が付いています。
 
天端は車両通行可能です。
右岸側が屈曲しているのがよくわかります。
 
洪水吐導流部と減勢工。
 
ダム下の放流設備
減勢池を備えた福岡県営ダムではおなじみの放流設備です。
左上の建屋が2016年に完成した小水力発電所です。
 
天気が良ければ天端からは、博多湾や糸島半島が一望できるそうですが・・・。
 
ダム湖は総貯水容量242万立米
少雨により水位がかなり低くなっています。
 
天端から管理事務所
事務所手前に見えるのは展望台。
 
上流面
左から取水設備、クレストラジアルゲート、放流バルブの予備ゲート。
 
ダム右岸のプラント跡
ケーブルクレーンの台座っぽい。
 
ダム湖の上流が井原山の登山口になっており、休日には結構な登山者が来ダムするようです。
この日駐在した職員さんがBM乗り、ということで車論議で1時間近く盛り上がりました。
職員さんお薦めは天端からの海の眺めでしたがあいにく靄んでおり残念。
 
追記
瑞梅寺ダムには洪水調節容量が設定されていますが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流によりさらなる洪水調節容量が確保されることになりました。
 
2444 瑞梅寺ダム(1146
福岡県糸島市瑞梅寺
瑞梅寺川水系瑞梅寺川
FNW
64メートル
337.5メートル
2420千㎥/2270千㎥
福岡県県土整備部
1977年
◎治水協定が締結されたダム

曲渕ダム(再)

2017-10-11 13:54:35 | 福岡県
2017年9月21日 曲渕ダム(再)
 
曲渕ダム(再)は福岡県福岡市早良区曲渕の室見川水系八丁川にある、福岡市水道局が管理する上水道用水目的の表面石張重力式粗石コンクリートダムです。
明治以降全国各地で近代水道の整備が進みますが、大河のない福岡市では1909年(明治42年)にようやく近代水道整備計画が策定され、1922年(大正11年)に曲渕ダム(元)が竣工します。
翌1923年(大正12年)3月の曲渕ダム、平尾浄水場など一連の水道施設の運用開始により福岡市水道事業がスタートしました。
曲渕ダムは水需要増加を受けて1934年(昭和9年)、1992年(平成4年)の二度にわたり嵩上げ改修が行われ現在の堤高45メートル、総貯水容量260万8000立米の規模となりました。
ダム便覧ではこの改修を曲渕ダム(再)の竣工年度としています。
堤高45メートルは現存する我が国の石積堰堤としては最も高いダムとなっています。
曲渕ダムは福岡市近代水道黎明期を支えた施設として『近代水道百選』に選ばれるとともに、その優れた土木技術を評価して土木学会選奨土木遺産及びBランクの近代土木遺産に選定されています。
また2018年(平成30年)には利水放流を利用した小水力発電所である曲渕ダム小水力発電所が完成し、最大91キロワットの発電も開始されました。
 
早良区石釜の国道263号『水源地前バス停』から右手の旧道に入ると、正面に曲渕ダムが見えてきます。
ダム下は曲渕ダムパークとして整備されていますが、訪問時は小水力発電所設置工事のため立ち入りできませんでした。
堤高45メートル、我が国で最も堤高の高い石積堰堤です。
 
右岸から
2度の嵩上げの嵩上げのあとがはっきりと分かります。
 
1994年(平成6年)の改修工事の竣工記念碑。
 
天端
1994年の改修できれいに整備されました
高覧は御影石、竣工当初のイメージを損なわないようデザイン面で配慮されています。
 
総貯水容量236万8000立米。
 
ダム下はダムパークとして整備されていますが、訪問時は小水力発電所の工事中。
 
下流面の石積。
 
上流面
奥は管理事務所、右手の浮桟橋に巡視艇が係留されています。
 
高欄親柱と大正風の照明
親柱には曲渕ダムと刻まれています。
 
緩やかに湾曲した横越流式洪水吐
越流堤も石積です。
 
1934年(昭和9年)の改修竣工記念碑。
 
福岡県では河内ダムと対をなす貴重な石積堰堤です。
ダム下は工事中でしたので機会があればぜひ再訪してみたいと思います。
 
2376 曲渕ダム(元)
福岡県福岡市早良区曲渕
DamMaps
室見川水系八丁川
37.3メートル
----メートル
1422千㎥/1422千㎥
福岡市水道局
1922年 
1934年 嵩上げ再開発
-------------
 
3341 曲渕ダム(再)(1145)
福岡県福岡市早良区曲渕
室見川水系八丁川
45メートル
160.6メートル
2608千㎥/2368千㎥
福岡市水道局
1992年 再・再開発事業竣工

南畑ダム(再)

2017-10-11 02:19:22 | 福岡県
2017年9月21日 南畑ダム(再)
 
南畑ダム(再)は福岡県筑紫郡那珂川町五ケ山の那珂川水系那珂川本流上流部にある福岡県県土整備部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
人口規模に対して大河の少ない福岡では慢性的な水不足に悩まされる一方、福岡市中心部を貫流する那珂川の治水が必須の課題となっていました。
そこで福岡県は建設省の補助を受け那珂川上流部への補助多目的ダム建設事業に着手し、1965年(昭和40年)に竣工したのが南畑ダム(元)です。
しかし運用開始後も水不足は解消せずとりわけ1978年(昭和53年)~79年(昭和54年)にかけての渇水では福岡都市圏で実に287日間に及ぶ取水制限が実施される事態に陥ります。
これを受け貯水池掘削による利水容量拡大を目的とした再開発事業が着手され1985年(昭和60年)に南畑ダム(再)が竣工しました。
南畑ダム(再)は那珂川の洪水調節、安定した河川流量の維持と既得取水権への用水補給、那珂川源流部にある福岡市水道局脊振ダムと連携した福岡市水道局への上水道用水の供給を目的とするほか、利水従属発電として九州電力南畑発電所で最大1600キロワットのダム水路式水力発電を行っています。
その後1992年(平成4年)には河川維持放流を利用した小水力発電を行う福岡県企業局ちくし発電所(最大出力550キロワット)が増設されました。
さらに2017年(平成29年)には当ダム上流2キロ地点に新たに五ケ山ダムのが竣工し、福岡県最大の貯水量を誇る同ダムの運用開始により那珂川水系の治水・利水事情は大きく改善しました。
 
国道385号線で筑紫耶馬渓を抜けると南畑ダムに到着します。
ダム手前の分岐を左に採ると筑紫耶馬渓遊歩道入口に出ます。ここに車を置いて上流に向かうと南畑ダムが見えてきます。
非常用洪水吐としてクレストに2門のラジアルゲートがありますがオリフィスやコンジットゲートはありません。
ゲートがクレストゲートだけというのは昭和30~50年代竣工の福岡県営ダムでよく見られるスタイルです。
 
左岸の国道385号線から見た下流面。
 
上流面
取水設備は昭和30年代らしく半円形、奥は管理事務所。
 
上流から遠望。
 
天端とゲート操作室。
 
洪水吐導流部と減勢工。
 
福岡県営ダムではおなじみ、減勢池を備えた放流設備。
河川維持放流以外の水は右上の水路から九州電力南畑発電所送られたのち上水道用水として放流されます。
一方右手の白い建物は1992年に完成した福岡県企業局ちくし発電所。
 
ダム湖は総貯水容量600万立米
訪問時は少雨と上流の五ケ山ダムの試験湛水のため水位がずいぶん低くなっていました。
 
堤体にエレベーターがないため、ダム下への移動にはこのモノレールが使われます。
 
インクラインはなく巡視艇は浮桟橋に係留されています。
 
追記
南渕ダム(再)には洪水調節容量が設定されていますが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流によりさらなる洪水調節容量が確保されることになりました。
 
2414 南畑ダム(元)
福岡県筑紫郡那珂川町五ケ山
DamMaps
那珂川水系那珂川
FNW
 
63.5メートル
220.4メートル
5000千㎥/4560千㎥
福岡県県土整備部
1965年
-------------
2451 南畑ダム(再)(1144)
福岡県筑紫郡那珂川町五ケ山
那珂川水系那珂川
FNWP
 
63.5メートル
220.4メートル
6000千㎥/5560千㎥
福岡県県土整備部
1985年再開発竣工
◎治水協定が締結されたダム