ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

天ケ瀬ダム

2017-10-16 19:15:24 | 佐賀県
2017年9月22日 天ケ瀬ダム
 
天ケ瀬ダムは左岸が佐賀県多久市多久町、右岸が同市南多久町長尾のの六角川水系牛津川右支流瓦川内川源流部にある灌漑用目的のアースフィルダムです。
現地案内板によれば農水省の補助を受けた佐賀県のかんがい排水事業により1982年(昭和57年)に完成しました。
運用開始後は多久市が受託管理を行い多久市南多久町地区のみかん果樹園337ヘクタールに灌漑及び防除用水の供給を行っています。
 
多久市南多久町長尾の県道25号線長尾交差点を南に折れ瓦川内川沿いを南下すると天ケ瀬ダムに到着します。
まずはダム下から
堤体直下には揚水機場があり、堤体は犬走りを挟んだ2段構成で基部は石積みの擁壁です。
 
左岸に洪水吐があります
もろ逆光で洪水吐導流部はこれが精いっぱい。
 
右岸高台から
このアングルも逆光、手前の棚田の稲穂が黄金色に輝いていました。
 
上流面はコンクリートで護岸。
 
天端は車両通行可。
 
天端から。
棚田が広がるのどかな風景。
 
下流面。
 
ダム湖は総貯水容量53万2000立米。
 
左岸の横越流式洪水吐。
 
アングルを変えて。
 
新規開拓されたみかん果樹園向けの貯水として建設されたアースダムですが、1990年代のオレンジ輸入自由化で佐賀のミカン農家は大打撃を受け、ダム周辺のミカン農地も放棄されるか畑地に転換されていました。
 
追記
天ケ瀬ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により新たに1000立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
2541 天ケ瀬ダム(1157)
佐賀県多久市多久町
六角川水系瓦川内川
39.4メートル
270メートル
532千㎥/504千㎥
多久市
1982年
◎治水協定が締結されたダム

本部ダム

2017-10-16 16:38:45 | 佐賀県
2017年9月22日 本部ダム 
 
本部(もとべ)ダムは佐賀県武雄市若木町本部の松浦川水系川古川源流部にある佐賀県県土整備部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助多目的ダムで、川古川の洪水調節、安定した河川流量の維持と既得取水権への用水補給、武雄市への上水道用水の供給を目的として1988年(昭和63年)に竣工しました。
 
県道25号に本部ダムの標識がありこれに従うとダムに到着します。
ダム手前で川古川右岸の道路に入るとダム下に着きます。
自由越流式クレストゲート7門、自然調節式のオリフィスゲート1門のゲートレスダムです。
河川維持放流が行われていますが、ダム下から放流設備は見えません。
 
ダム左岸県道沿いに管理事務所があり、ダムサイトは両岸ともに小さな公園となっています。
こちらは左岸にある建設当時の写真が埋め込まれたモニュメント。
 
左岸から下流面
堤趾導流壁の形が特徴的。
 
上流面
九州北部豪雨の際の水痕が残っていますが、本部ダムではオリフィスからの放流で支え切りクレスト放流には至らなかったようです。
 
減勢工
右岸に放流設備があり河川維持放流が行われています。
 
総貯水容量114万立米と小さなダム湖
上流の棚田が牧歌的。
 
左岸上流側にあるインクラインと艇庫。
地下格納式です。
 
天端
右手は管理事務所、左手は取水設備操作室。
 
右岸から減勢工と堤趾導流壁
左右非対称で波返しがついています。
 
右岸上流から。
 
追記
本部ダムには34万立米の洪水調節容量が設定されていますが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流によりさらに14万1000立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
2555 本部ダム(1156
佐賀県武雄市若木町本部
松浦川水系川古川
FNW
42.1メートル
130メートル
1140千㎥/1090千㎥
佐賀県県土整備部
1977年
◎治水協定が締結されたダム

岸川防災ダム

2017-10-16 15:10:29 | 佐賀県
2017年9月22日 岸川防災ダム
 
岸川防災ダムは佐賀県多久市北多久町多久原の六角川水系今出川左支流岸川にある農地防災目的の重力式コンクリートダムです。
農林省(現農水省)の補助を受けた佐賀県の防災ダム事業によって1962年(昭和37年)に建設され、運用開始後は多久市が管理を受託しています。
洪水時に最大毎秒95立米の水量を調節し今出川下流域154ヘクタールの農地を洪水被害から守ります。
 
厳木多久道路小侍インターから県道338号線を北上、岸川集落の先でダムへの取り付け道路を右にとるとダムに到着します。
ダム右岸高台の竣工記念碑があります。
 
高台から俯瞰。
 
右岸から
堤体の苔が時代感を醸し出しています。
 
上流面。
ゲートハウスが2段に重なる珍しい作り。
 
さらに上流から
写真では分かりませんがクレストに2門のローラーゲートがあり上段のゲートハウスはこの操作室です。
一方常用洪水吐となるコンジットには放流管となるコンジットパイプがありこちらもローラーゲート1門を装備。
下段のゲートハウスはこのローラーゲートの操作室になります。
2017年(平成29年)7月の九州北部豪雨の際に貯め込んだ痕が上流面にくっきりと残っています。
 
天端はゲート部分だけ前面に張り出しています。
一方ピアには上のゲートハウスに上がる螺旋階段がついています。
 
クレストのローラーゲート。
 
導流部には苔。
苔が生えるということはここから放流されることは少ないのでしょう。
一方、平時はコンジットパイプから流入量がそのまま放流されています。
 
有効貯水容量すべてが農地防災容量なので、平時はダム湖は空っぽ。
 
左岸から下流面。
 
昭和30年代のダムということで立派なゲートを装備しています。
上流面の汚れからもわかるように2017年(平成29年)7月の九州北部豪雨の際には貯水容量いっぱいに水を貯め込み、下流の農地を洪水被害から守りました。

(追記)
岸川防災ダムには農地防災容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

2527 岸川防災ダム(1155) 
佐賀県多久市北多久町多久原
六角川水系今出川
26.5メートル
66メートル
330千㎥/306千㎥
多久市
1962年
◎治水協定が締結されたダム

厳木ダム

2017-10-16 12:46:18 | 佐賀県
2017年9月22日 厳木ダム 
 
厳木ダムは佐賀県唐津市厳木町広瀬の松浦川水系厳木川上流部にある国交省九州地方整備局が直轄管理する多目的重力式コンクリートダムです。
松浦川水系一帯での洪水や干ばつ被害、高度成長による都市用水増加への対処として1973年(昭和48年)に建設省(現国交省)は松浦川右支流厳木川上流部への多目的ダム建設を採択します。これに新たな揚水式発電所建設を模索していた九州電力が発電事業者として事業参加し1986年(昭和61年)に竣工したのが厳木ダムです。
厳木ダムは国交省が直轄管理する特定多目的ダムで、厳木川および松浦川の洪水調節、安定した河川流量の維持および既得取水権としての灌漑用水の補給、唐津市および多久市への上水道用水の供給、唐津市沿岸部への工業用水の供給を目的とするほか、揚水式発電により最大60万キロワットの発電を行う九州電力天山発電所の下部調整池となっています。
 
厳木多久道路牧瀬インターから県道37号を北上すると厳木ダムに到着します。
ダム下から
非常用洪水吐として自由越流式クレストゲートを5門クレスト、常用洪水吐として高圧ラジアルゲートを装備したオリフィスゲート1門とコンジットゲート2門を備えています。
また写真では見えませんが左岸(向かって右手)に利水放流バルブがあります。
 
右岸から
正面が管理事務所。
 
右岸展望台から俯瞰。
右岸がわずかに屈曲しています。
 
天端高覧にはみかんを模した装飾が施されています。
オレンジ自由化により廃れましたが、ダム周辺はかつて佐賀を代表するみかんの産地でした。
 
天端は車両通行可能。
 
減勢工
減勢池は逆L字の独特の形状
減勢工左手は利水放流設備、右手の芝生にダム湖名の『さよのうみ』の植栽が見えます。
 
ダム湖は『さよの湖』と命名され総貯水容量は1360万立米。
揚水式発電所である九州電力天山発電所の下部池となっています。
 
インクラインはなく左岸上流面に浮桟橋が設置されています。
 
建設記念碑。
 
上流から遠望
左から取水設備、オリフィスおよびコンジットゲートの予備ゲート、自由越流式クレストゲート。
 
国交省直轄ダムらしくダム湖周辺やダム下は公園として整備され見学ポイントは多彩です。
ただどの公園もちょっと荒れ気味であまり利用されていない雰囲気なのは残念です。
 
追記
厳木ダムには620万立米の洪水調節容量が設定されていますが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流によりさらに668万立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
2545 厳木ダム(1154
佐賀県唐津市厳木町広瀬
松浦川水系厳木川
FNWIP
117メートル
390.4メートル
13600千㎥/11800千㎥
国交省九州地方整備局
1986年
◎治水協定が締結されたダム