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とにかく書いておかないと

すぐに忘れてしまうことを、書き残しておきます。

映画『テーラー 人生の仕立て屋』を見ました。

2021-10-07 06:45:05 | 映画
 映画『テーラー 人生の仕立て屋』を見ました。古い時代の職業の大人があらたな挑戦をする物語で、そこに淋しさと喜びがあります。映画は人々を淡々と描きます。だからこそ理屈ではなく、人々の心が直接見るものに伝わる味わい深い作品でした。

監督:ソニア・リザ・ケンターマン

キャスト:ディミトリス・イメロス、タミラ・クリエヴァ、タナシス・パパヨルギウ、スタシス・スタムラカトス

(あらすじ)
 ニコスと父親は、アテネで男性用スーツの仕立て屋を営んできたが、時代の変化とともにオーダーメイドのスーツの注文が減り、銀行に店を差し押さえられてしまう。そのショックで父親が倒れたため、ニコスは手作りの屋台を引いて、移動式の仕立て屋をすることを思いつく。ある日彼はウエディングドレスの注文を受け、初めて女性服の仕立てに取り組み、うまくいき始める。燐家の妻が女性服の製造に興味を持ち、手伝い始めたことから、ふたりの間に愛情も芽生え始め、ニコスの人生は動き始める。

 時代の移り変わりの中で自分を変えなくてはいけなくなることは現代では「当たり前」となってしまいました。「古い自分を捨てながら生きる」のが現代です。大人はアイデンティティをうしなってしまいます。それはつらいことだと思います。しかし、年はとってもチャレンジしてしまえばそこに楽しみを見つけます。その間の心の揺れがみごとに映像で描かれています。

 生まれ故郷の島では、若い人が減り結婚式がなくなり、ウェディングドレスは売れないというニコスのセリフからは、さまざまな思いが伝わってきます。

 この映画は何かを主張するわけではありません。この時代に生きている人たちの心を描く名作です。


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「折々のことば」より「胡蝶の夢」

2021-10-03 09:45:42 | 折々のことば
 朝日新聞に鷲田清一さんが連載している「折々のことば」で、有名な「荘子」の「胡蝶の夢」が紹介されていた。引用させていただく。

 知らず、周の夢に胡蝶(こちょう)為(な)るか、胡蝶の夢に周為るか(荘子)

 「いったい荘周が胡蝶の夢を見ていたのか、それとも胡蝶が荘周の夢を見ていたのか、私にはわからない」と、古代中国の思想家は言う。私の存在もしょせんは夢なのか、夢ならそれを見ているのは誰か。人はつい、自身もまた動物の一種であることを忘れるように、夢の語りもまた現実を仕立てる不可欠のパーツであることを忘れる。『荘子(内篇〈ないへん〉)』(森三樹三郎訳)から。

 小説における「語り」を勉強しているうちに、自分自身を語るもうひとりの「私」に文学的な発明があるように思うようになった。近代とは「個人の時代」である。「個人」の生き方、考え方が小説の主題となる。作家は小説を書くときに自身をモデルに書くことが多い。自分の心理の動きが一番よく見えるからである。しかし自身の視点から自身を描くことは難しい。ひとりよがりになるからである。だから一度自分自身を離れなければならない。作家はその時、自身を客観的に見ることができる「もうひとりの自分」を探し出す努力を始める。夢の中の自分というのはその結果の一つの発明である。それは深層心理の自分であり、本当の自分である。夢の中の自分を探し求め、そこから自分を見つめなおすことによって、本当の「私」を描くことができる。

 近代小説とは「私」を作り出すことが最大の使命であった。その意味で「荘子」の「胡蝶の夢」は興味深い。現代に生きる知恵は古代にあった。
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岸田新総裁への期待

2021-10-02 10:42:02 | 政治
 茶番にしか見えなかった自民党総裁選が終わり、岸田氏が新総裁となった。
 岸田氏は安倍晋三氏や麻生太郎氏が支援したことで当選した。その結果、人事では安倍氏や麻生氏に配慮しすぎているように見え、批判も多いだろう。しかし、それはある程度しょうがあるまい。最初から自分の思う通りの人事なんかできっこない。どこの社会でも同じだ。

 今後我々が見ていかなければいけないのは、岸田氏がどういう政策を取るのかである。

 「アベノミクス」の方向転換が本当にできるのか。説明責任をしっかりと果たせる政治ができるのか。独りよがりはない、長期的視野に立った外交ができるのか、など安倍、菅政権からの方向転換ができるのだろうか。

 そして私としては、業者によって骨抜きにされた教育改革を、真の教育改革にできるの。つまり教育予算の大幅増額ができるのかが評価のポイントである。

 岸田氏は宏池会の人なのでリベラルであろう。バランス感覚があり、人の意見をよく聞くだろう。人をバカにするような態度はとらないだろう。誠実な印象があり期待はできる。

 しかし期待は期待でしかない。彼はまだなにもしていない。とりあえず、今回の衆議院選挙では安倍菅政権のでたらめさを評価させていただき、自民党には票をいれるわけにはいかない。

 岸田氏には期待したいが、その評価は次の選挙で行うのが筋である。
 
コメント (1)
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