財務省の矢野康治事務次官が文芸春秋に寄稿し、自民党総裁選や与野党の政権公約にみられる大盤振る舞いの財政出動合戦を批判し、日本の財政悪化を早期に食い止める必要性を強調したというニュースを見た。このような耳の痛いことをしっかりと発言してくれる官僚こそ大切にしてほしい。
矢野氏の発言は誰もがそう思っていることであり、おそらく真実である。このままでは財政破綻してしまう。政治家や政治家お抱えの経済評論家はいろいろな理屈をつけて財政破綻はしないと主張するが、そんな打ち出の小づちがあるはずがない。金を使いすぎれば、いつかは破綻するのが経済理論以前の常識である。
政治家は選挙に勝つためにバラマキを主張する。もしこれが続くとすれば民主主義というものも信じられなくなる。しかし日本人はもっと成熟しているはずだ。そんなにお金がなくとも幸せになる術を知っている。もちろん貧乏の苦しみを十分知ってのことだ。だから一生懸命働き、一方では金のかからない楽しみをいろいろと工夫しているではないか。
矢野氏の発言をなかったころにするのではなく、これを機会に冷静で論理的な議論をしてほしい。様々な要素を明確にして、未来への指針を示していただきたい。それが政治の使命である。
そのためにも矢野氏は更迭することなく、要職にそのまま残していただきたい。それができればこの内閣は議論をしてくれる内閣だと理解できる。