とにかく書いておかないと

すぐに忘れてしまうことを、書き残しておきます。

書評『AIvs.教科書が読めない子どもたち』(新井紀子著)

2018-03-04 08:02:07 | 読書
 AIについてわかりやすく説明してくれて、AIの発達がこれからの社会にどういう影響を与えるかがわかりやすく理解できる。そして教育の現状が指摘され、今後の教育の在り方について考えさせられる。とてもおもしろい本であり、教育関係者にとっては必読書である。

 筆者は東京大学合格を目指したAIロボット「東ロボくん」の開発者の数学者である。第1章ではその「東ロボくん」プロジェクトの説明がなされる。

そして第2章ではAI技術とは何かが説明される。AIというのは人間のはるかに超えた能力を一方では持っているが。結局はコンピューターであり、人間によって指示されたことしかできないということがわかる。

 次のことばがとてもわかりやすい。

 「論理、確率、統計。これが4000年以上数学の歴史で発券された数学の言葉のすべてです。それが、科学が使える言葉のすべてです。(中略)コンピューターが使えるのは、この3つの言葉だけです。」

 「数学が発見した、論理、確率、統計にはもう一つ決定的に欠けていることがあります。それは「意味」を記述する方法がないということです。」


 つまり、AIは「意味」が理解できないのである。だから東大には合格できないというのが筆者の考えである。とても説得力がある。しかし一方ではそんなAIでも、MARCHには合格できる力があるのだ。これはこれまで人間が行ってきた仕事の多くはAIにとってかわられることを示している。今後人間がやるべき仕事は「意味」に関わる仕事になってくるのだ。

 第3章では、このような状況であるのにも関わらず、多くの中高生が教科書を正確に読めないという調査結果を紹介して、教育の重要性を訴えている。これまでも教科書が読めない子供がいるという話は聞いていたが、ここまでひどかったのかと驚かされる。私は教員をやっているが、反省させられた。なんにも理解できていない高校生が本当に多いのだ。

 教育が大きく変わろうとしているが、その方向性を間違えてはいけないとあらためて思い知らされた本であった。
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