死がどういうものか人間にはわかりません。
死んだ人はひとりで死を経験し、その経験を誰にも伝えることができないので、
生きている者には死ぬというのがどういうことかまったくわからないのです。
とはいえ、人間はいずれ自分が死ぬということを知っていますので、
死について気になって気になってしかたがありません。
それでいろいろと想像をめぐらせて、
死ぬ過程はどういうものか、死んだあとどうなるのか等々、勝手に考えてしまうのです。
看護学校の 「哲学」 や 「倫理学」 の授業では、
死をテーマにしたデス・エデュケーションを展開しているのですが、
重たいテーマなので、最初は、
「死んだらどうなると思いますか」 という問いに答えてもらうことから始めています。
日本というのは無宗教の人が多いので、
死後の世界について明確なイメージを抱いている人は少なく、
たいていみんなこの問いを出されてから、初めてその場で考えているようです。
私の分類によると、死後どうなるかということに関する仮説としては、
大きく2種類しかないと思っています。
A.何もなくなる、もしくは、骨や灰など物質だけが残りそれ以外のものは何もなくなる。
B.何らかの形で私たちの意識 (魂とか霊など) が存続する。
この2種類です。
Bの 「何らかの形」 というのをさらに分類すると、3パターンが考えられるでしょう。
B-a.一般の人には見えない形で (幽霊など)、現世のなかをさまよう。
B-b.死んだ後の存在者が集う専用の世界 (天国や地獄など) があり、そこに行く。
B-c.別の人間や動物として、現世に生まれ変わってくる。
古今東西すべての仮説はこの計4つのどれかに分類できるはずですと、
看護学校では得意になって説明していたのですが、
学生さんたちの答えのなかに少なからず、
この4つのどれとも言い難い意見が見られましたので、
第3の仮説 (計5番目) として認定することにいたしました。
C.星になる、または、風になる
このCの答えを書く子が毎年何名かいるのです。
ちょっと分類に困ります。
Aに近い気もしますが、もうちょっとロマンティックです。
「星になってみんなを見守る」 という言い方がよくされるので、
この星は意識をもっているのでしょう。
だとすると、強いて言えばB-cに分類されるのかもしれません。
つまり、意識が存続して星 (とか風) に生まれ変わる、ということです。
しかし、本人たちに聞いてみてもそのへんは曖昧なので、
とりあえず第3の仮説ということにしておきます。
さて、そのうちアンケート結果を集計して論文でも書いてやろうかと思っているのですが、
日本人の若者の多くは死後のイメージとして、
Bのa、b、c を適当に混合したバージョンを抱いているということがわかってきました。
初めて看護学校でこの質問をしたときは、
みんな医学を学んでいる人たちですから、当然Aの答えが多いだろうと思っていました。
しかしAの答えは本当に少数派で、Bの混合バージョンが圧倒的多数派です。
B-a+b 思いが残っていると成仏できずに幽霊として現世にとどまるが、
思いを遂げると成仏して天国に行く。
B-b+c しばらく天国に行ってゆっくり休み、準備が整ったらこの世に生まれ変わってくる。
B-a+b+c 幽霊としてしばらく現世をさまよったあと成仏して天国に行き、
その後再び人間として生まれ変わる。
「恨みが晴れたら成仏できる」 とか 「成仏して天国に行ったあと輪廻転生する」 なんて、
キリスト教や仏教についてちゃんと知っていたらとても言えないようなセリフですが、
多くの学生がこのような言い方をします。
日本では宗教が影響を及ぼしていない分、テレビドラマや霊能者ものバラエティ番組などが、
若者の死生観に多大な影響を及ぼしていることがわかります。
特に、霊や前世などを扱うバラエティ番組は、本当に罪作りだなと思います。
視聴率が取れるからといって、公共の電波を使って、
ああいう怪しい仮説を垂れ流すのはただちにやめてほしいと思います。
せめて番組の最後に 「この番組はフィクションであり、出演者の発言は、
実証不可能なことに関する個人的信念を述べたものにすぎません」
くらいの断りを入れるべきだろうと思います。
むろん、学生たちがこれをどれだけ真剣に信じているのかは不明です。
冒頭に書いたように、
「死んだらどうなると思いますか?」 と問われて初めてこの問題について考え始め、
その場でササッと書いた答えがこれらだからです。
ごくまれに、「たぶん何もなくなるんだろうと思うけど、
天国や生まれ変わりがもしもあったらうれしいと思います」 と書く子もいて、
この意見が彼らの本音なのではないかという気もしています。
しかし問題なのは、彼らがこれまでこうしたことを考えたことがない、ということです。
日本では家庭の中でこうしたことが話題になることはまずないようです。
私の授業では、書き終わったあとにグループで見せ合って話し合うようにしていますが、
多くの学生が、今までこういうことを考えたり、話し合ったりしたことがなくて、
人それぞれいろいろな考えがあることに驚いた、という感想をもらします。
この手の問題に関してはさまざまな考えがある、ということを知っておくことは重要でしょう。
その上でさらに覚えておかなければならないのは、
死生観がこんなにあやふやでバラバラで怪しげなのは日本人くらいだということです。
しっかりとした信仰をもっている人が世界の大多数であって、
彼らは、それぞれの宗教が説くところの死生観をけっこう堅固に信じています。
下手なことを言ったりすると、
相手の宗教や文化を侮辱したことになってしまうかもしれないので、
日本人とはまったく考えや感じ方が違う人たちがいるということを
肝に銘じておく必要があるでしょう。
私が先にやった死生観の分類なども、私としては純粋に学問的にやっているつもりですが、
あれだってひょっとすると侮辱だと受け止められることがありうるのです。
日本にもたくさんの外国の方々がいらしていますから、
宗教や信仰に関わる問題はとてもナイーブな問題だ
ということを認識しておく必要があるでしょう。
死んだ人はひとりで死を経験し、その経験を誰にも伝えることができないので、
生きている者には死ぬというのがどういうことかまったくわからないのです。
とはいえ、人間はいずれ自分が死ぬということを知っていますので、
死について気になって気になってしかたがありません。
それでいろいろと想像をめぐらせて、
死ぬ過程はどういうものか、死んだあとどうなるのか等々、勝手に考えてしまうのです。
看護学校の 「哲学」 や 「倫理学」 の授業では、
死をテーマにしたデス・エデュケーションを展開しているのですが、
重たいテーマなので、最初は、
「死んだらどうなると思いますか」 という問いに答えてもらうことから始めています。
日本というのは無宗教の人が多いので、
死後の世界について明確なイメージを抱いている人は少なく、
たいていみんなこの問いを出されてから、初めてその場で考えているようです。
私の分類によると、死後どうなるかということに関する仮説としては、
大きく2種類しかないと思っています。
A.何もなくなる、もしくは、骨や灰など物質だけが残りそれ以外のものは何もなくなる。
B.何らかの形で私たちの意識 (魂とか霊など) が存続する。
この2種類です。
Bの 「何らかの形」 というのをさらに分類すると、3パターンが考えられるでしょう。
B-a.一般の人には見えない形で (幽霊など)、現世のなかをさまよう。
B-b.死んだ後の存在者が集う専用の世界 (天国や地獄など) があり、そこに行く。
B-c.別の人間や動物として、現世に生まれ変わってくる。
古今東西すべての仮説はこの計4つのどれかに分類できるはずですと、
看護学校では得意になって説明していたのですが、
学生さんたちの答えのなかに少なからず、
この4つのどれとも言い難い意見が見られましたので、
第3の仮説 (計5番目) として認定することにいたしました。
C.星になる、または、風になる
このCの答えを書く子が毎年何名かいるのです。
ちょっと分類に困ります。
Aに近い気もしますが、もうちょっとロマンティックです。
「星になってみんなを見守る」 という言い方がよくされるので、
この星は意識をもっているのでしょう。
だとすると、強いて言えばB-cに分類されるのかもしれません。
つまり、意識が存続して星 (とか風) に生まれ変わる、ということです。
しかし、本人たちに聞いてみてもそのへんは曖昧なので、
とりあえず第3の仮説ということにしておきます。
さて、そのうちアンケート結果を集計して論文でも書いてやろうかと思っているのですが、
日本人の若者の多くは死後のイメージとして、
Bのa、b、c を適当に混合したバージョンを抱いているということがわかってきました。
初めて看護学校でこの質問をしたときは、
みんな医学を学んでいる人たちですから、当然Aの答えが多いだろうと思っていました。
しかしAの答えは本当に少数派で、Bの混合バージョンが圧倒的多数派です。
B-a+b 思いが残っていると成仏できずに幽霊として現世にとどまるが、
思いを遂げると成仏して天国に行く。
B-b+c しばらく天国に行ってゆっくり休み、準備が整ったらこの世に生まれ変わってくる。
B-a+b+c 幽霊としてしばらく現世をさまよったあと成仏して天国に行き、
その後再び人間として生まれ変わる。
「恨みが晴れたら成仏できる」 とか 「成仏して天国に行ったあと輪廻転生する」 なんて、
キリスト教や仏教についてちゃんと知っていたらとても言えないようなセリフですが、
多くの学生がこのような言い方をします。
日本では宗教が影響を及ぼしていない分、テレビドラマや霊能者ものバラエティ番組などが、
若者の死生観に多大な影響を及ぼしていることがわかります。
特に、霊や前世などを扱うバラエティ番組は、本当に罪作りだなと思います。
視聴率が取れるからといって、公共の電波を使って、
ああいう怪しい仮説を垂れ流すのはただちにやめてほしいと思います。
せめて番組の最後に 「この番組はフィクションであり、出演者の発言は、
実証不可能なことに関する個人的信念を述べたものにすぎません」
くらいの断りを入れるべきだろうと思います。
むろん、学生たちがこれをどれだけ真剣に信じているのかは不明です。
冒頭に書いたように、
「死んだらどうなると思いますか?」 と問われて初めてこの問題について考え始め、
その場でササッと書いた答えがこれらだからです。
ごくまれに、「たぶん何もなくなるんだろうと思うけど、
天国や生まれ変わりがもしもあったらうれしいと思います」 と書く子もいて、
この意見が彼らの本音なのではないかという気もしています。
しかし問題なのは、彼らがこれまでこうしたことを考えたことがない、ということです。
日本では家庭の中でこうしたことが話題になることはまずないようです。
私の授業では、書き終わったあとにグループで見せ合って話し合うようにしていますが、
多くの学生が、今までこういうことを考えたり、話し合ったりしたことがなくて、
人それぞれいろいろな考えがあることに驚いた、という感想をもらします。
この手の問題に関してはさまざまな考えがある、ということを知っておくことは重要でしょう。
その上でさらに覚えておかなければならないのは、
死生観がこんなにあやふやでバラバラで怪しげなのは日本人くらいだということです。
しっかりとした信仰をもっている人が世界の大多数であって、
彼らは、それぞれの宗教が説くところの死生観をけっこう堅固に信じています。
下手なことを言ったりすると、
相手の宗教や文化を侮辱したことになってしまうかもしれないので、
日本人とはまったく考えや感じ方が違う人たちがいるということを
肝に銘じておく必要があるでしょう。
私が先にやった死生観の分類なども、私としては純粋に学問的にやっているつもりですが、
あれだってひょっとすると侮辱だと受け止められることがありうるのです。
日本にもたくさんの外国の方々がいらしていますから、
宗教や信仰に関わる問題はとてもナイーブな問題だ
ということを認識しておく必要があるでしょう。
昔から、仏教の死後の世界とか、キリスト教とかの死後の世界とか、なんとなく気になって
本とかで読んだりしていたので、逆に
宗教によって違う世界観?を目の当たりにして、「な~~なんだ、結局こういうのって、
人間が勝手につくりだしたものじゃん」って、
おもっちゃったんですよね(^^;
ちなみに、星になる、って…
星って塵だかなんだかが集まったような
もんだったりしたんじゃなかったのでは…??
と茶々をいれてみたりなんかして…(笑)。
死後の世界がない、と断言することもできないので、いつか死を迎えた時、
初めて私はその答えを見つけることができるのだろうかと、
何年も前に、この問題について、
ボスに意地悪な問いかけをされた頃から
楽しみに待っている桃太郎でした。
最近Mixiでもあまりお会いしなかったので心配していました。
②はすべて人間が勝手に考え出したんじゃん、というのは同感です。
信仰をもっている人たちってなんであんなにひとつの説を信じ込めるのでしょうか。
という感覚が日本人的なのでしょうか。
私はやっぱり①としか考えられないなあ。