まさおさまの 何でも倫理学

日々のささいなことから世界平和まで、何でも倫理学的に語ってしまいます。

有川浩 『阪急電車』

2013-04-23 23:49:30 | 性愛の倫理学
先々週の週末にある方主催のお花見に行き、
私がふだん知り合わないようないろいろな方々と交流を深めてきました。
そのなかの1人に本屋さんに勤めている方がいて、
なんかいろいろ本の話をしているうちに有川浩の話になりました。
有川浩は間もなく実写版映画が公開される 『図書館戦争』 の作者です。
私はもともと有川浩のことも 『図書館戦争』 のことも何も知らなかったんですが、
このあいだ卒業したうちのゼミ生が小説 『図書館戦争』 の大ファンで、
その影響で卒論のテーマを 「図書館員の倫理」 と設定して卒論を書き上げました。
私は 『図書館戦争』 というタイトルを聞いて、
「図書館」 という概念と 「戦争」 という概念を結びつける意味がまったくわからず、
何の興味も引かれなかったんですが、彼女からいろいろと熱い説明を受けているうちに、
とりあえずちょっと読んでみようかなという気になり、
読んでみたらハマってしまってシリーズ全巻あっという間に読破してしまいました。
『図書館戦争』 についてはそのうちいくつかの観点から論じてみたいと思っています。

さて、お花見に話を戻すと、その本屋さんの方は有川浩なら絶対に、
『阪急電車』 がオススメと教えてくださいました。
自分の本の趣味はちょっとフツーと違っているとずーっと思っていましたので、
人に本を薦めたことも、人に本を薦めてもらったこともあまりなかったのですが、
昨年あたりから人から薦められた本がほとんどアタリで、
あ、こうやって自分の世界って広がっていくんだなあと、
51歳にもなってやっと実感していましたので、
『阪急電車』 もぜひ読んでみようと思って、すぐに本屋さんでゲットして読んでみました。
みごとにアタリでした。
一気に読み終わってしまいました。

この本、いろんな読み方が可能な本なのですが、
ちょうど昨日、青春の思い出の話を論じたばかりですので、
今日のところはそれに絡めて話を進めてみたいと思います。
この小説では、恋の終わりのところも描かれていますが、
それよりも恋の始めのお話というのがいくつかあって、
それがけっこう胸キュンです。
まあ、現実にはこんなにすんなり恋は始まらないよなあとも思いますが、
偶然を必然へと変えていくその戦略が描かれていて参考になります。
昨日私は、「どうやって告白するか策を練るときの心細さ、
当日、2人きりになってからどのタイミングでなんと切り出すか、
心臓がバクバクし頭が真っ白になってしまうような緊張感」 と書きました。
この最初の部分のハードルをどうやって乗り越えていくか、
これは青春の永遠の課題だと思います。
この本にはそのマニュアルというわけではありませんが、
心構えとか、うまくいったケーススタディみたいなものが描かれていて、
それは現実の世界においても十分に参考にできるものだと思います。

有川浩は 『図書館戦争』 でもそうでしたが、今どきの若者の男女が、
お付き合いの過程においてそれぞれどんなことを考えているのかという、
心の内面をストレートに描くのを得意としている作家だと思います。
それは文学作品としてどこまで深いのかという批判を惹起するかもしれませんが、
今どきの若者にはクリアに直接届くメッセージになっていると思います。
男の子と女の子がお互いにそれぞれのことを気遣いながら、
場合によってはそれがすれ違ってしまってマイナスに働いたり、
また場合によっては得も言われぬ深い思いやりに昇華して2人を強く結びつけたり、
そういうどっちに転ぶかわからない儚い、でも繊細な機微に満ちた関係性を、
わかりやすい言葉で小説化しているのが有川浩だと思っています。
『阪急電車』 はそういう彼女 (有川浩は女性です) の特長がよく表れた作品です。

みんながみんな同じ感想を抱くかどうかわかりませんが、
私はこの小説を読みながら、自分の青春の一番の思い出を思い出していました。
皆さんもぜひこれを読みながら、青春の思い出に浸ってみてください。


P.S.
この小説を語るのにこの観点というのはあまりにも限定されすぎていますが、
その他の観点、見方に関してはまた別の機会に論じたいと思います。


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