製作地 カンボジア南部
製作年代(推定) 20世紀前期~半ば
素材/技法 絹、天然染料 / 綾地・緯絣
長さ3m近くに達する中央の”緑色”染め分けが印象的なこの絹絣は、宗教儀礼用に纏う長寸の腰衣”チョンクバン”として手掛けられたものとなります。
インドのパトラやインドネシア・スマトラのリマル等の絹絣においても、本品と同じような中央が黄・橙・緑等に染め分けがなされた作例があり、色彩それぞれに使用者の身分や使用の用途等の意味づけを見出すことができます。
20世紀後半の戦乱により伝統染織の記録・記憶の大半が失われてしまったカンボジアにおいて、この”緑色”の意味は不詳(未解明)ですが、高貴な身分の者が特別な儀礼用のものとして使用したものであろうことは、織物の放つ空気と精神性から自ずと伝わってまいります。
●参考画像1 中央が緑色に染め分けられたインドネシアの絹緯絣リマル
スマトラ島パレンバンにおいて中央が緑色の絹絣肩掛けは寡婦が用いたものとされる
※上画像はSerindia Publications刊「Art of Southeast Asian Textiles」より転載いたしております
●参考画像2 中央が山吹色に染め分けられたインドの絹経緯絣パトラ
ジャイナ教徒が用いたデザイン様式の絹絣サリー ※ただし中央の色は身分・信仰と関係無し
※上画像はV & A MUSEUM刊「INDIAN IKAT TEXTILES」より転載いたしております
●本記事内容に関する参考(推奨)文献