アジアの手仕事~生活と祈り~

アジア手工藝品店を営む店主が諸国で出逢った、愛すべき”ヒト・モノ・コト”を写真を中心に綴らせていただきます

17-18c 銀製”双鳩&パルメット”アムレット

2016-07-05 00:57:00 | 技巧・意匠・素材







製作地 インド ジャンムー・カシュミール州 シュリーナガル
製作年代(推定) 17-18世紀  ※紐は20c初め頃のもの
素材 シルバー、木綿&銀モール巻き紐

本品は打ち出し・彫金により”鳩”と”パルメット”の文様が表されたペンダント型アムレットで、方形のアムレット本体は厚み4mmほどの箱状に成型されており、製作時にロウ付けにより蓋が閉じられますが、内部にクルアーン(コーラン)の一節等の信仰のもの或いは守護のものが収められる慣習があったものとなります。

インドでは”鸚鵡(オウム)”或いは”孔雀”と”生命樹”の組み合わせが鳥と樹木の吉祥文様として一般的であり、この”鳩”と”パルメット”の組み合わせは異質(特殊)であり、所謂インド的なものではなく、ギリシャ-ペルシャ美術様式の系譜上の吉祥文様と考察されます。

製作年代は17-18c、2百数十~3百余年を遡る時代のものと推定され、古代~中世のシルクロード交易を通じてカシュミールの地に伝わり・様式化したローカルな(地域性のある)意匠のものと指摘することができます。東西陸路交易の時代の浪漫が薫るアンティーク装身具の逸品です。

この種の銀製装身具は比較的早い年月(百年前後)のうちに再生されることが通常であり、17-18cに遡る時代のもので、本品のように原型を保ったまま現在に伝わったものは極めて稀なものと言うことができます。銀モール巻き木綿紐をあわせ資料的に貴重な残存作例です。














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