●色絵磁器「ベンジャロン」 19c
●シャム(タイ)渡りインド更紗 18c
中国に製作の発注がなされた「ベンジャロン色絵磁器(※)」(上)。同じくインドに製作の発注がなされた「インド更紗」(下)。
いずれもアユタヤ王朝期(1351~1767年)のシャム(タイ)王国で意匠化された「天人テパノン(Thepanom)」が妖艶な文様と色彩により表現されております。
当時、中国・景徳鎮の色絵磁器、インドの多色木綿染め物は他国では真似の出来ない世界最高峰の技術レベルにあり、国際都市(国家)であったアユタヤが、自身でデザイン化した意匠を、他国に製作発注することで宮廷美術工芸をつくり上げていった過程を伺うことができます。
江戸時代の日本において、このベンジャロンやシャム渡りインド更紗(シャム更紗)は茶人・大名・貴族等の富裕層を中心にもてはやされましたが、取り分けこの”天人テパノン”が描かれた作例が”仏手(ほとけで)”として珍重されたことが伝わります。
当時”仏手”と銘々されましたが、描かれているのは仏さまではなく仏法を守護する天人(天子・天女)であり、蓮華に乗り舞う姿は”飛天”と呼ぶに相応しい存在と思われます。
●京都・平等院 国宝「雲中供養菩薩像(飛天)」 11c
●本記事内容に関する参考(推奨)文献