令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

家待・青春編(一)(22)久邇(くに)の京(みやこ)に

2010年06月18日 | 家持・青春編(一)恋の遍歴
【掲載日:平成22年8月13日】

今造る 久邇くにみやこに 秋の夜の
             長きに独り るが苦しさ



佐保邸での 二人の生活くらし
むつまじやかな 家持・大嬢おおいらつめ
しかし  
時の流れは  平穏を許さない

天平九年〈737〉の大疫たいえき 藤原四兄弟の死
橘諸兄たちばなのもろえの台頭 藤原氏の不遇 
くすぶる火種ひだねの政局不穏ふおん
ついに  筑紫で火を吹く
藤原広嗣ふじわらひろつぐ 叛乱
時に  天平十二年〈740〉九月
藤原氏の抑圧からの解放で 
逸楽いつらくの日々を送っていた聖武帝
乱の平定を待たずして  伊賀から伊勢へ
さらに 行幸みゆきは続き 鈴鹿 不破ふわ 近江
そして 山背国やましろのくに 恭仁卿くにのこおりに至り 
そこを新都と定める 

二か月近い彷徨ほうこうの旅
一行に 内舎人うちとねり家持も 加えられていた

一度は  佐保邸帰宅の家持
すぐさまの  恭仁卿転居が 命じられた

春霞 たなびく山の へなれれば 妹に逢はずて 月そにける
《春霞 かってる山 邪魔してて お前逢わんと 一月った》
                         ―大伴家持―〈巻八・一四六四〉 
都路みやこぢを 遠みか妹が このころは うけひて宿れど いめに見え
久邇京みやこまで 遠いよってに この頃は 祈り寝るけど お前夢出ん》
                         ―大伴家持―〈巻四・七六七〉 
今しらす 久邇くにみやこに 妹に逢はず 久しくなりぬ 行きてはや見な
《新しい 久邇京みやこ居るんで なご逢わん 出かけ訪ねて 早よ逢いたいな》
                         ―大伴家持―〈巻四・七六八〉 
今造る 久邇くにみやこに 秋の夜の 長きに独り るが苦しさ
《造ってる 久邇の京で 秋の夜を 独りで寝るん る瀬ないがな》
                         ―大伴家持―〈巻八・一六三一〉 
〈安倍郎女―坂上郎女の従弟いとこ安倍蟲麻呂の娘?―へ〉
あしひきの 山辺やまへに居りて 秋風の 日にけに吹けば いもをしそ思ふ
久邇くに山で 日増し秋風 吹いてきて 寒さ思たら お前恋しい》
                         ―大伴家持―〈巻八・一六三二〉 

久しい  独り寝の家持に
たわむれ恋が 足忍ばせる


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