本の迷宮

漫画感想ブログです。「漫画ゆめばなし」(YAHOO!ブログ)の中の本の感想部分だけを一部ピックアップしています。

ねずみ男の冒険 (水木しげる)

2007-01-15 09:22:58 | 漫画家(ま行)
(1964~5年 70年代 ガロ等に掲載・・・)


裏表紙の説明文より

現実的で、計算高くて、小ずるくて・・・・・・しかしその個性で人々に愛され続けてきた”ねずみ男”が、
江戸時代、戦国時代、そして現代へととびまわり、人間たちの虚栄とおろかさを照らし出す。
ねずみ男を狂言まわしに、人間世界の不条理を笑いとばす、水木しげるの風刺まんが傑作集。


”風刺まんが”というのは、風刺が効いてなければつまらない。
かといって、内容が面白くなくても勿論つまらない。
水木しげるの風刺まんがは面白い上に風刺が効いている。


風刺まんがにはねずみ男のキャラが非常にマッチしている。


ある時は”怪しげな仙人”、ある時は”こしまきデザイナー”、またまたある時は”新興宗教の教祖様”・・・。
そして彼は、善人を騙し、誑かす。



どの話もなかなか良いのだが、なかでも「勲章」が好きだ。


天女の羽衣を盗んで空を飛ぶねずみ男。
空を飛ぶねずみ男を見て簡単に勲章を与える太政大臣。
勲章を貰った途端ちやほやする女たち。


その様子をずっと冷静に見ている”芋を食ってる子”
彼は羽衣を天女に返してやる。
しかし、ねずみ男の薄汚れた<皮衣>でも<勲章>をつけた途端、
誰もが素晴らしいものだと信じて疑おうとはしない。

ねずみ男「バカタレ!勲章をもっている人間がウソをつくものか」
群集「そうだ」
「それに彼は名士だ」

真実を語った少年は群集に殴り倒される。

少年は呟く。
「勲章だとか名士だとかなんだか
肩書きさえついてれば世間のやつは
中味も調べないで信用しちゃうんだからたまんないよ
ホント」


水木しげるの”世間”を見つめる冷静な目がいい。


戦中、戦後を生きてきた作者の目に映ってきた”世間”というものを
ピリッと辛く風刺していく様は実に愉快だ。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。