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「因果」を考える (22-b)
初等物理の気まぐれ考究,物理教育放談
/
2009-11-06 00:00:00
本稿は以下の続きである。
・
07-12-05「因果」を考える
・
07-12-31「因果」を考える (2)
・
08-01-19「因果」を考える (3)
・
08-03-11「因果」を考える (4)
・
08-04-10「因果」を考える (5)
・
08-04-30「因果」を考える (6)
・
08-05-09「因果」を考える (7)
・
08-05-27「因果」を考える (8)
・
08-06-29「因果」を考える (9)
・
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・
08-09-07「因果」を考える (11)
・
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・
08-10-06「因果」を考える (12-b)
・
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・
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・
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・
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・
09-02-12「因果」を考える (18)
・
09-04-05「因果」を考える (18-b)
・
09-04-20「因果」を考える (19)
・
09-05-12「因果」を考える (19-b)
・
09-06-20「因果」を考える (20)
・
09-07-31「因果」を考える (21)
・
09-09-25「因果」を考える (22-a)
-----
物理現象的な因果関係が成り立つ場合の、具体的で分かりやすい典型例として、右図のような状況を想定する。紐で吊るされた重りの下方に、両端で支えられたガラス板が置かれている。紐を火で焼き切ると、重りが落下し、ガラスが割れる。このときの因果認識の構造は、通常、次のようになるだろう。
[原因系]: マッチの火を紐に近づけて、紐を焼き切ること.
[因果をつなぐ系]: 切り離された重りが、地上の重力を受け、ガラス板に向かって落下すること(またはそのための装置系).
[結果系]: 重りの衝突により、ガラス板が割れること.
はじめに、これらそれぞれの系について、仮に時間の進行を逆転したとして、そのとき起きる事柄が、自然現象として成立し得るかどうかを調べてみよう。まず、[原因系]と[結果系]については、マッチの発火、紐の燃焼、ガラスの破壊、のいずれについても、砕けたガラスがつながったり、焼け切れた紐がもとに戻ったり、マッチから出た白煙が集って、マッチの火薬部分を復元するというような事態は、どのような工夫や設定をしても起こせそうもない。つまり、これらの現象を律するマクロな法則については、明らかに時間反転の対称性が破れているのである。一方、[因果をつなぐ系]における重りの落下現象は、ビデオに撮って、逆回ししたとしても、不自然なところは無い。つまり、時間反転の対称性が成立する。
さて、実は、 [原因系]→[因果をつなぐ系]→[結果系] の因果関係において、「→」で示される部分の跳ね返りの効果が阻止されていることが、因果的に物事が認識されるための基本用件であることには既に触れていた。特に「[原因系]→」の部分の非可逆性については、本シリーズの
(4)
や
(7)
の稿のところで、具体例をあげて論じていた。
そして、ある事象と次の事象がつながっている部分に、時間反転の禁止された現象が介在することは、事象の伝播の跳ね返り効果を、純粋に自然法則的に阻止している状況そのものなのである。このような状況の事象の連鎖が実現しているときに、我々は、現象が(相互依存的でなく)因果的につながっていると認識すると言ってよい。
時間反転現象が禁止されていることの一般的な意味や起源は、「一対多」型の因果の連鎖構造との関係から理解することができる。上の具体例で見てみよう。上述の紐が焼き切れる現象や、ガラスが割れる現象においては、その内部過程で、非常に多くの複雑な結果事象が引き起こされる。紐の繊維の高分子に化学変化が起き、多数の煙の粒子が生まれ、膨大な分子の熱運動が生じ、さらに繊維の集合形態も大きく変化し、、というようなことである。そして、ここが重要なポイントなのだが、そのミクロ的に莫大な結果事象は、個々の結果としては認識されず、代わりに、「煙が上がる」とか「黒くなって崩れる」とか「切れてしまう」とかのように、いわゆる「粗視化」された現象、すなわち、膨大多数のミクロ事象は、より大きなスケールで大雑把に一括化されたマクロ現象として認識される。このような場合には、ミクロスケールの現象まで時間反転させた初期条件を設定することが非現実的(確率的に無理なこと)であり、そのため、結局、時間的に反転した現象は実現し得ないこととなる。これこそが、時間反転が禁止された状況の意味である。
ところが一方、今の例の[因果をつなぐ系]となっている重りの落下現象においては、このような粗視化のプロセスは入り込まない。時間反転の保証された運動方程式に純粋に従った運動が起きるだけであり、壊れたガラス面のあたりで、もしも、時間を反転した初期条件、すなわち、重りが上方に向かって発射されるような初期条件が実現したならば、重りは初め紐にぶら下がっていた所まで確実に戻っていく。
<ing>
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