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「因果」を考える (15)
初等物理の気まぐれ考究,物理教育放談
/
2008-11-30 23:59:53
本稿は以下の続きである。
・
07-12-05「因果」を考える
・
07-12-31「因果」を考える (2)
・
08-01-19「因果」を考える (3)
・
08-03-11「因果」を考える (4)
・
08-04-10「因果」を考える (5)
・
08-04-30「因果」を考える (6)
・
08-05-09「因果」を考える (7)
・
08-05-27「因果」を考える (8)
・
08-06-29「因果」を考える (9)
・
08-08-28「因果」を考える (10)
・
08-09-07「因果」を考える (11)
・
08-09-30「因果」を考える (12)
・
08-10-06「因果」を考える (12-b)
・
08-10-19「因果」を考える (13)
・
08-11-10「因果」を考える (14)
-----
さて、ここまでのドミノ倒し系の考察から、新たな疑問や着想が生じてくる。
まず、本シリーズ
稿(12)
の中で、「結果から見た原因の結びつき」という表現を使ったことを思い起こそう。"どちらから見る"かを指定したということは、原因側から見た結果へのつながりと、結果側から見た原因へのつながりが、異なる意味をもつと認識されたからだ。確かに、ドミノ倒し系においては、最初の駒を倒したことが、どの程度の確実性をもって最後の駒の倒れにつながるかは、ドミノの列がいかに正しくセッティングされているかで決まることであるし、一方、最後の駒が倒れた事実を見た上で、その原因が特定の1個の駒が倒れはじめたことにあると推定することの確からしさは、多数の各駒を倒し得る外的擾乱の状況・程度で決まることであって、これら両者の意味と程度は別物であると受け取れる。このような例で考えるなら、因果関係のつながりは、因⇔果 の向きに対して非対称的であることになる。
ただし、この非対称性を、軽々に、因果の概念の一般的性格のように思うのは早計である。そもそも、我々は何のために「因果」という言葉を使うのか、どういうときに「因果」という一くくりの概念が意識されるのか。そして、因⇒果 と 果⇒因 を分けてしまうことが、その期待される意味・目的に適合するのだろうか。これらについて注意深く考えてみることが必要だ。(手ごわい相手としての)因果概念の意味を探るときに、指す相手自身が揺らいでしまうと、迷路から抜け出せなくなる恐れがあるということだ。
そこで、因果のある無しや、因果の程度ということに対して、どういう意味づけや機能が期待されるのかを、ここまでのドミノ倒しの例に沿って考えてみよう。
まず、「ある一つの結果が起こったとして、その原因を推定する.」という場合があるだろう。一例として、ドミノ倒し系の最終のアクションとしての花火が上がった原因は何か、、という推定である。こうした推定が意義をもつ代表的なケースは、結果の事象が起こるのを防ぐ手立てを探す場合だ。この立場では、結果に対して一対多に対応している多数の原因は、どれも全て防がなければならない。そして、そのような場合、一つ一つの駒(の倒れ)がそれぞれ別の原因に対応すると見なす限りは、この結果から遡る各一つ一つの原因へのつながりの程度は、(駒の数が多いほど)弱いものとなる。
しかし、発想を変えることもできる。倒れやすい各駒が受ける転倒の外因を一括するのだ。それが以下のような表現だ。
「最終の花火が上がった原因は、多数の駒のいずれかに与えられた外的擾乱である.」
こうすれば、原因と結果は一対一対応になる。そして、それから直ちに、花火の点火を防ぐ手立てとしては、「"いずれかの駒に与えられる転倒の外的擾乱"が生じないようにする.」、あるいはその論理的変形としての以下の事を為せばよいと分かる。
「並べられた全ての駒に対して、転倒の外因を遮断(または抑制)する.」
これは目的のための正しい処方となっている。
(なお、上は正しい処方の一つではあるが、最良の、すなわち最も効果的で効率的な処方とは限らない.このことは、重要な別の視点につながり、後に稿を改め論じることになる.)
---
一方、ある原因が生じたとして、それがある特定の結果に結びつくかどうかを推定する見方もあるだろう。例は、最初のドミノを倒した後、最後の1個が倒れる確率を考えるという場合だ。ただし、この推定の仕方は、ドミノ倒し大会においてはあまり有意義でない。何故なら、最後の特定の1個がどうなるかというよりは、倒れた個数の総数が世界レコードになるかどうかが関心事であると思われるからだ。また、ある重要なアクションが成功する可能性を問題にすることもあるだろうが、そのような大きなアクションにつながる経路は複数敷いてあるのが普通であり、必ずしも特定の1個が重要な意味を持つわけではい。
そこで、立場を変えた次のような因果関係の認識が、より意義深いものとなる。
「最初のドミノを倒すことで、世界記録の個数を超えるドミノを倒す結果を導く.(その可能性はそれほどか.)」
こうすれば、途中に枝別れや合流があったとしても、原因と結果の対応は一対一対である。
<ing>
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