はぎわら_m の部屋
社会・時事批評、オピニオン、初等物理の気まぐれ考究、物理教育放談

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本稿は以下の続きである。
07-12-5 「因果」を考える

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仕事の事情に加えて、風邪(?)を長引かせたこともあり、間を開けてしまったところが、、大晦日を迎えるに至ってしまった。夜が明ければ親戚がらみの小旅行なのだが、前回の記述で止めたまま年越しでは気分が良くないので、少しだけでも記述することにした。
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先ず、「BがAに依存する(依る)」とは何かと言えば、これは、二つの物理量AとBを結びつける(物理法則としての)関数式が存在することとほとんど同義である。例えば天秤やテコやシーソー等の左右の動きが連動している状況を考慮の対象にするとき、「右側の動きは左側の動きに依って決まる」という関係が認識されると同時に「左側の動きは右側の動きに依って決まる」という認識も成り立つ。

具体的な物理法則の中で、最も基本的な典型例となるのはオームの法則だろうか。


V は 抵抗の両端電圧、RV が生じる部分の抵抗値、IR を流れる電流値)

抵抗と電流に依って電圧降下が決まるし、また、抵抗と電圧に依って流れる電流が決まる。非線型抵抗素子の場合には、電圧と電流の動作点条件に依って実効抵抗が決まるというケースも起こる。いずれにしても、オームの法則自体は、何らの因果的な方向性を示していないことに注意しよう。

物理量の関係としての物理法則は、それ自体のみでは、因果の意味をもたらさないのだ。
<ing>

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『'相関関係'と'因果関係'の違いに気をつけよ』とか『'疑似相関'に騙されるな』のような指摘を(特にネット上で)よく目にするようになった。

相関関係と因果関係 - Google 検索
相関関係と因果関係 - 教えて!goo
擬似相関 - Google 検索

疫学・保健、経済・金融、環境問題などに関する一般向けの説明や宣伝で、相関関係を因果関係と錯覚させる怪しい論法が使われ易いので、それに対する警鐘を鳴らす人が多いということなのだろう。もちろんこの認識は大事であり、注意する意識が広まるのはいいことだ。

しかし、さて、「因果関係」とは何かとあらためて自問してみたところ、これが意外に難問であることをあらためて思い知った。これに関する私流の考察を、少し述べてみたいと思う。ただし、ここでは、統計解析やら社会分析やら大規模複雑系の扱いには立ち入らない。純粋要素を扱う基本科学(要するに物理のことです、、^^;)に限ったとしても、「因果」の意味づけは微妙な問題を抱えている、、このことを考察する。
(とは言っても、書き進められる自信はあまりなく、途中でポシャる可能性も無いとは言えないが、、)

上のリンクにあげた「教えて!goo」の解答に、次の引用がある。これを最初の手掛かりとしてみよう。

『因果関係を示すには、時間性、普遍性、特異性、合理性をすべて満たす必要がある。』(重松逸造「疫学とは何か」,ブルーバックス)。

このうち、普遍性は、再現性のある事象だけを扱う基本科学においては前提になっていることなので、改めて検討すべき内容ではないだろう。特異性は、確かにある特定の要素の変化が結果に反映しているることを示せという要請と思われるが、これも、単純に分離されたな事象を扱う物理では、通常クリヤーされると思っていいだろう。

考察を要するのは、「時間的因果」と「合理性」だ。この両者は同じ土俵に乗る概念ではないが、互いに絡みあう部分をもつ。そう手短には説明できない、正に因果の意味づけの鍵を握る語である。


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さて本論に入る前に、「因果関係」が意識されるときの要件を、言語表現の視点で整理しておくことにしよう。もちろん、最初に正しい定義が与えられるわけではないのだが、当面の「こう表現できるときに因果関係と見なされる.」という判断の指針をつくっておく。必要が出てくれば、後で修正することにする。

ある原因に因(よ)ってある結果が生じるときに、その原因と結果の関係は因果的であると認識される。これが、誰もが認める因果関係の意味だろう。ここで、「原因となる」とか「起因する」とか「因って生じる」とかは、同じことの別表現であるが、その意味はこの文言を見ても皆目分からない。辞書をあたっても、明快な説明はなく、一種の未定義語扱いになっていることに気づく。「原因となる」,「起因する」,「因る」など意味をはっきりさせることが、実は、物理的な因果関係の意味を考察することの本論に他ならない。ただし、言語論理を振り回すだけでは出口に至らないのは明らかで、物理的な思考モデルを適宜当てはめながら、どこまで考え進められるか、、という挑戦となる。

とは言え、言語的に整理しておくならば、類似表現との比較・区別は一つの手がかりになる。
「Aに因(よ)る」が、Aが因果関係の原因側になっていることを表す基本表現であるとすれば、その類義語には次のいくつかがある。

Aに依存する (依る)
Aを理由とする(由る)
Aを発端とする

そして、これらはどれも、因果関係とは少しずれた意味内容に対応している。
<ing>

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