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「因果」を考える (17)
初等物理の気まぐれ考究,物理教育放談
/
2009-01-24 02:35:16
本稿は以下の続きである。
・
07-12-05「因果」を考える
・
07-12-31「因果」を考える (2)
・
08-01-19「因果」を考える (3)
・
08-03-11「因果」を考える (4)
・
08-04-10「因果」を考える (5)
・
08-04-30「因果」を考える (6)
・
08-05-09「因果」を考える (7)
・
08-05-27「因果」を考える (8)
・
08-06-29「因果」を考える (9)
・
08-08-28「因果」を考える (10)
・
08-09-07「因果」を考える (11)
・
08-09-30「因果」を考える (12)
・
08-10-06「因果」を考える (12-b)
・
08-10-19「因果」を考える (13)
・
08-11-10「因果」を考える (14)
・
08-11-30「因果」を考える (15)
・
08-12-24「因果」を考える (16)
-----
因果の意味・役割を巡って、(多少右往左往もしたが)考え方の見通しはかなり良くなってきた。この段階で、ドミノ倒しモデルや、さらにまた、以前に扱った'水漏れ水路モデル'の記述を振り返ると、原因や結果の事象の(言語的)表現がまだまだ明確でなかったことが分かる。
ドミノ倒しを例にしたこれまでの記述において、ある一個のドミノと、別の一個のドミノの、運動の連鎖的つながりを考えるという方向は、力学モデルにのせることに捉われており、事象全体としての「因果」がどのように認識されるかの思慮が不十分であった。そのために、厳密に論じようとすればするほど、本来考えたい因果の意味から逸れていくような違和感があった。しかし、我々が、ドミノ倒しの事象を見て感じ取る本来的な因果関係をストレートに表現することは、実は可能であったのだ。先に紹介したドミノデイ2008の例を使えば、次のような表現が、それを実現する方法だ。
『
「Leeuwardenのドミノデイ2008の会場において、11月14日の*時*分に、(元ミス・フィンランドの)Salima Peippoさんが、1個のドミノを倒したこと」
が原因となり、
「同日*時*分頃に、ドミノ倒しの個数の世界記録である4,345,027個以上を倒すことを達成する」
という結果が生じる。
』
このように表現した因果の事象関係は、1対1に限りなく近く、結びつきも十分強いことは、誰しも納得できるだろう。時刻までが指定されるとなれば、予想外の擾乱の影響は考慮から除外してよいだろうし、また、予め、この因果的つながりが実現することの確率を考えることにも十分な意味がある。
(余談ながら、この確率として多分7~8割の成功が見込まれないと、資金を投入するエンタテイメントとして成り立たないだろう.)
=====
〔追記〕
上の記述で、最初の1個を倒す人の名まで特定したのは、詳細に過ぎる指定だったという面はある。因果を科学的に扱うということは、事象がある程度一般化できる、すなわち再現性をもつということだろう。再現性というのは、原則的には、何時何処で誰がやっても同じになることを意味する。ところが、上の、表現では、何時-何処-誰 の全てが指定されてしまっている。したがって、この因果表現は再現性を度外視したもので、科学法則とは遠いところにある。
ここに、大規模ドミノ倒しのような複雑な事象の因果を問題にする場合の難しさがある。上の例で、人の指定を外すことはできる。ただし、この場合のスターターは誰にもできるとは思えない。運動機能に優れ訓練した人でなければ、重大な失敗(例えば、戻る途中にロープから落下して途中の駒を倒してしまうど)をする可能性が無視できなくなるだろう。また、外的擾乱の程度は、会場や時間帯などによって、まさにまちまちだろう。有意義な因果関係が成立するか否かは、物理的モデルとそれに直接関与する科学法則を考える範囲内では、必ずしも決定できない、、このような事情にあるようだ。
<ing>
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