はぎわら_m の部屋
社会・時事批評、オピニオン、初等物理の気まぐれ考究、物理教育放談

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本稿は以下の続きである。
07-12-05「因果」を考える
07-12-31「因果」を考える (2)
08-01-19「因果」を考える (3)
08-03-11「因果」を考える (4)
08-04-10「因果」を考える (5)
08-04-30「因果」を考える (6)
08-05-09「因果」を考える (7)
08-05-27「因果」を考える (8)
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さて次に、息抜き的な応用問題にトライしてみよう。右下の図のように、レーザー光線をミラーで反射させ、感光紙に向けて照射することで、感光紙に焦げ穴が生じた(もっと激しい結果がお好みなら、火薬を爆発させてもよい.)、、という因果的事象を考えよう。さて、何が原因で何が結果であると認識すべきだろうか。

悩みこむ前に、すかさず、「これだけの文章表現では状況の説明が不十分だな、、」と思った人は、既に因果の認識の仕方をほぼ得とくしていると言える。そう、原因となる事象は、外から強制的に設定される要素が何であるかによって変わる。レーザーの電源をONにする操作を考えるなら、これこそが立派な原因の事象だろう。あるいは、レーザーが過去からずっと発光していたとするならば、ミラーの方位としての法線角を、光源と感光紙の二等分上に至らしめたことが原因に違いない。ミラーがねじり振り子的に運動するのならば、その運動の初期条件の設定こそが、原因と見なされるのに相応しいだろう。

このような具体例で考えると、既に本シリーズ第(6)回あたりで述べた「[原因]→[結果]の間には時間差があって然るべきだが、時間差があることは本質的な要件にならない.」ということの意味もはっきりしてくることと思う。感光紙の真ん中に光が当たるようになるまで鏡の回転運動が時間とともに進行しなければならないとか、まして、光の速度は有限だから光路の変更が波及するのにノンゼロの時間を要する、などという議論は、間違いでなくとも、因果関係の本質からは離れた要素である。因果の見方に関する限り、ミラーの向きの変更や光の伝播が完全に瞬時に(時間ゼロで)起こるとしても、何らの問題も変更も生じない。あくまで、焦げ目をつくる状況を成り立たせるように何が外部から設定されたのか、、これを考えればよいわけだ。

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さて以上は”おさらい”のような例題だった。しかし、そこから、考慮しておくべきもう一つの問題が見えてきた。上の例に即して言えば、ミラーの向きの変更すなわち運動が、焦げ目をつくることの原因になっているとして、その運動を決める外因と運動法則そのものの関係が問われることとなる。力学の言葉でいえば、運動方程式と初期条件を、因果関係の立場からどのように理解し取り扱えばいいかという問題である。<ing>

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自由書き込み型の百科辞(事)典として、瞬く間に周知の存在となったWikipedia。情報が正しいことの保証がないだけでなく、一般に認められていない個人的見解・思い入れの書き込みに使われるなどの問題もしばしば指摘される。
しかし、普通の本には載っていない事柄があっさり出ていることも多い。その種の掘り出し物的な情報の場合、しばしば「『独自研究』に基づいた記述が含まれているおそれがあります。」旨の警告が付いていたりするが、疑い深く見ることを忘れなければ、貴重なヒントが得られる。

さて、(そのような例として)見ていただきたい項目"手配師":
手配師 - Wikipedia

「置屋」や「沖仲士の顔役」と同類とも言えるこの用語、裏社会に近い特殊業界のことだと思った人もいるだろう。そのとおり、1986年に労働者派遣法が施行される以前はまさにそのような特殊業界を指す言葉だった。その労働者派遣法は、1996年ぐらいから規制が緩和される方向で段階的に改定され、特に1999-2004の間に大幅自由化されるという経緯を受けて(主な改正の経緯)、いわゆる資本系派遣会社が堂々・続々と参入する状況に一変していった。

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今日ではほとんどの業界の大企業が、子会社としての派遣会社をもっている。検索すればいくらでも出てくるように、トヨタキヤノン松下竹中工務店大丸・松坂屋東京電力NTTも 、、。

どうしてこんなことが常態化してしまったかといえば、派遣労働という制度を利用して、会社を分ける方が、企業グループ全体では儲かる(余分の管理職ポストができることまで含め)からだ。しかし、そこで儲かるというのは、商品の価値が増して売り上げが増えることとは全然違う。賞与・保険費用・福利厚生などという、従来の労働者に与えられていたコストが削減されて、その分が2つの会社の金庫と新子会社役員の懐に移されたに過ぎないのだ(親会社が100%株主なので投資家への配当も無い)。そして、綺麗なホームページのイメージとは裏腹に、単純作業の派遣を仕切るというのは、上に見た「手配師」の仕事そのものだ。人の弱みに付け込んでサヤを稼ぐ影の仕事の側面が拭えない。

平たく言えば、要するに日本の大手企業は、こぞって「手配師(ピンはね業)」の手法と形態を採り入れることで、支払賃金の削減と管理職のポストの確保に成功した、、ということだ。日本の優良企業は特にこの十数年ほどの間に、変容してしまった。社会的な格を下げたと言ってもいい。ショッキングだが、認めざるを得ない現実だ。

ただし、最大の利益を目指すことが営利企業の第一義的な目標であるから、企業が道徳的でなくなったなどと文句を言うつもりも無い。派遣事業の規制緩和の政策が誤っていたし、さらにその根本として、市場原理を絶対・万能視するのみならず、バブルのつけをひたすら弱者に押しつけることで問題解決しようとした[過去記事]、日本型「新自由主義」の悲惨な末路として直視し、政策の転換を求める以外にない。

もはや一刻も早く、非正規雇用を増やすことで総賃金を抑え、さらに法人税を下げることで企業業績を守るという、日本経済の敗北宣言とも言えるような、愚かな方策から離れるべきだ。2002年から最近までの"戦後最長の好景気"のお陰で、今や大手企業には十二分の資金がある(例えばSAFETY JAPAN(日経BP)の記事/森永卓郎)。これを、一般国民の所得の上昇と国内雇用の改善にストレートに反映させることこそが経済政策の焦眉の課題であるはずだ。

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〔参考リンク〕(今回の投稿のきっかけとなった情報源)

ニュース
日雇い派遣原則禁止 厚労相表明 秋に法改正 /ジョブサーチ : YOMIURI ONLINE(読売新聞)


関連して、”ハローワーク(公共職業安定所)の民営化を進めるべし”なる旨の諮問結果が出され、市場化テストが動き出している件。
厚生労働省:生涯職業能力開発促進センターにおける職業訓練事業の市場化テスト(モデル事業)の継続実施について
内閣府 規制改革・民間開放推進会議 - 市場化テスト関連公表資料

〔関連付記〕
基本的人権や労働運動の概念を取り入れた近代民主国家の形態は、「手配師」などの裏の社会構造を歴史的に脈々と継承してきた人間社会が、様々な失敗・思慮・反省の末にようやく獲得したものだ。決然と、自信をもって、この公共の役目を守り機能させていく意志を発揮しつづけないと、人間社会は、近代民主社会から脆くも後退してしまう危険性を何時だって抱えている。
このことを、お経のように「民営化」と唱える新自由主義の信奉者達は、どのように理解しているのだろうか?(「前近代的な階層隔離社会をつくろうとしているんだ.」と開き直るのだろうか、、)

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〔補〕
(ちょっと不自然にも見える)Wikipediaのことから書き始めた理由は、その"手配師"の項目の中ほどに書かれている、小泉元総理の曾祖父時代の家業に関する記述を見つけたため。以前に書いた 「ねたむ風潮を慎め」という言葉の怪 へのヒントを感じたことによる。

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寄り道的な雑考です。科学・技術的に十分吟味した内容ではないことをお断りしておきます。

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地表にへばりついて生きている人間が、自身にとって快適な温度より数Kほど高い(低い)からという理由で、化石物質を燃やすことで、自分たちの巣の空調をしている。どう考えたって、どこかに無理がくる。

しかし、地表から離れれば、熱エネルギーはほとんど無尽蔵にある。地中の自然核反応による熱だ。

日本では、それほど深部に行かなくても、上昇してきたマグマだまりのおかげで、この地熱が取り出しやすい。これを使わぬ手はない。ただし、ボイラー-タービンでの発電にこだわっていると、地熱の利用はうまく行かないと思う。取り出す蒸気の条件がタイトで、手の届かない地下設備まで含めた、長期運転のデザインとリスク管理は、非常に厳しいと思われる。

地下の熱エネルギーを直接化学エネルギーに変えて、エネルギー密度の高い物質として取り出すのが最善だろう。

例えば、高温岩体の熱を使って、水を熱化学分解し、水素と酸素が取り出せれば、、と思う。ただし、現状の水の熱化学分解の条件温度はまだ高すぎるし、反応も複雑だ(化学反応としてはシンプルだが、地中で粗っぽく起こさせるのには向かない.)。固体触媒などを使ったうまい熱分解反応が見つかり、3、400℃でも水素を発生させられるようになれば、飛躍的に現実味が増すと思うのだが、、。

高温岩体発電技術の解説/AIST-NIRE(産業技術総合研究所-資源環境技術総合研究所)

水の熱化学分解-補足説明/日本原子力研究所

高温岩体発電研究」のあゆみ(PDF)/電力中央研究所

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