はぎわら_m の部屋
社会・時事批評、オピニオン、初等物理の気まぐれ考究、物理教育放談

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この10月9日、ユネスコは、中国の申請による「Nanjing Massacre records」の資料を、記憶遺産に登録した。対する、政治家やらネット論者やらの動きが騒がしい。

私は、特段の情報や見識を持つ者ではない。今後とりたてて首を突っ込む予定もない。しかし、ネットに溢れる意見があまりにも情けないので、一言述べたくなった、、が、言おうと思っていた概ねのことは、以下の江川氏のサイトに書いてあったので、最初に紹介させてもらう。

「南京事件」資料の記憶遺産登録、大騒ぎするほど中国の思うつぼ?

思想性抜きで、論理的に言えることを補足しよう。
戦争状態のさ中では、中立的で公正な取材や報道が為されることはない。新聞記事や、映画ニュースフィルムは、正しい事実を伝えず、証拠となるような情報をもたない(特に太平洋戦争終結時に我々日本人が思い知ったことである)。また、軍部内の記録・資料は、終戦直前にことごとく焼却されたらしい。そうなると、正しい情報は、現場にいた人の記憶の中にあるだけだ。しかし、個々の人は、ごく狭い範囲のことしか分からない。記憶に(意図せずして)妄想が加わってしまうこともあり得るし、伝聞に尾ひれがつくことも当然のように起こる。だから、調査すべきは、上官として南京攻略に関わり、直接には蛮行等に加わらなかったが、一定の理性と良心を保持しつつ任務を全うした職業軍人(士官)ということになる。その人達は、(正式な報告を受けるはずもないから)見て見ぬふりをするような形で、状況を掴んでいたはずだ。そして、東京裁判では、当然こうした職業軍人からの聴取が行われただろう。裁きの結果は、戦勝国が決めるのだから、公正でない側面をもつと考えるのは妥当だ。しかし、全くの事実無根の事を指摘されたのならば、否定的内容を証言することはできる。拷問にかけてでも裁判長の意の通りに答えさせたのならともかく、公開裁判の形をとっている以上、証言は自由意志で行われたはずだし、その証言内容は(判決に影響しなかったとしても)記録に残る。
東京裁判の後も、こうした(元)職業軍人の者からの情報は少しずつ出てきて、蓄積されただろう。それが、日本の中央省庁に引き継がれているはずである。これが、日本の側で見い出し得るトップレベルの証拠材料になる。外国が、事実に反する事を言って、クレームをつけてきたならば、当然、この証拠を使って反論しなければならない。東京裁判では採用されなかった証拠であっても、日本側の当事者の立場からの反証として堂々と出せばいい。それが、日本側役人の仕事である。
はっきり言おう。そのような生き証人の職業軍人の多くが亡くなってしまってから、報道的な写真の分析やら、少々の文書再読などをして、事実の根底に関する見解を出すなど、お笑い草もいいところである。また、同様に、結論ありきで、そこらの一兵卒やら被害の目撃者やらからの証言をとって、ストーリーにまとめるなどというのも意味が無い。それに対するアラを探して、してやったりというように述べるのもますます意味が無い。
中央省庁のどこかに密かに眠る公式記録、これを精査できる者だけが、何らかの見解を述べることができる。

ユネスコが採用した記録には、素人談義のような書物は含まれない。大衆受けするあやしい写真も入っていないはずである。だから、日本がユネスコ(や中国)にクレームをつけるとすれば、「不満だ」などと言うのではなく、日本側がもつ可能な限りの情報を出して、これを用いてより正確にせよと言うことなのだ。
なお、中国に対しては、大衆受けする尾ひれがついた話しを流布させないように、要請・交渉することが必要だ。('まぼろし論’などが出回ってしまう現状では、とても交渉力・説得力は発揮できないと思うが、、)


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