はぎわら_m の部屋
社会・時事批評、オピニオン、初等物理の気まぐれ考究、物理教育放談

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先日来少しづつ加筆していた「浮力の説明の謎 (8)」の末尾に、 実際の水中のゼリーにはたらく浮力の効果を撮影・確認した写真を掲載した。(実はこの写真は、4月11日の稿で宿題となっていた懸案の課題であった.)
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以下、物理量を表す文字・記号のフォントに関する道草的情報。

欧文フォントを使って、座標変数のx、重力加速度のg、速度のv、加速度a、ディラック定数エイチバー、セ氏温度の単位℃、オングストローム記号Å、などを表す際には、物理的に通例となっている文字の形が出てこなくて困ることが多い。特に、学習者向けのテキスト的な文章や、試験問題を書くときには、誤解や取り違えを起こさないように字体を選ばなければならないので、適切なフォントを探すのに、毎度結構な時間をとられる。

そこで、この際、初等物理によく登場する物理量の文字等が、各フォントによってどのように表されるかを調べて、画像にまとめてみた。(物理量を文字で表すときの約束にしたがい、文字はイタリックで比較している.)



青色の文字は、しばしば問題となる字体。オレンジ色の文字は、その解決策になるなど、知っていると何かと便利なフォント字体。

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ディラック定数エイチバー、摂氏単位記号℃、オングストローム記号Åについては、IMEパッドなどを使いUnicodeを指定することで、いろいろと表示できる。これを表にしたのが以下の図だ。



(Office2007に付属してインストールされた(らしい))Arial Unicode MS フォント関連情報)には、プランク定数とディラック定数が並んで準備されており(最初からイタリックなので、多分そのつもりの文字なのだろう)、その他の特殊文字類も非常に数多く含まれている。℃の記号の表示は最難関の一つで、私の知るところでは、Arial Unicode MS 以外の欧文フォントでは表示できない。非ゴシック系の欧文フォントに合う℃が見つからないのだ。「゜」「C」の組み合わせは、あまり奇麗に見えない。 日本語全角文字のフォントは、欧文フォントと調和しないし、英文文書には含めたくないということもある。何かよい解決策はないものか、、―うまい方法をご存じの方はどうか教えて下さい.―


---07-08-06 参考サイト追加---
パソコン便利ツール集 ―フォント・外国語処理―/makoto_watanabe氏

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本稿は、以下の続きにあたる。
07-03-27 浮力の説明の謎
07-04-03 浮力の説明の謎 (2)
07-04-11 浮力の説明の謎 (3)
07-04-23 浮力の説明の謎 (4)
07-05-05 浮力の説明の謎 (5)
07-05-17 浮力の説明の謎 (6)
07-05-17 浮力の説明の謎 (7)
07-06-05 浮力の説明の謎 (7-b)
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先に掲げた浮力を受ける系(II)を分類したモデルのうち、残るは、〔その3〕"ゆで卵、蒟蒻など" としたものだけとなった。(さりげなく予告したように)これは実は〔その1〕と〔その2〕の中間のケースとして理解され、述べるべきことはそれほど多く残っていない。そこで、このケースに入る前に、ここまでに得られた知見を簡単にまとめておこう。

まず、浮力を受ける系(II)が、流体的性格をもつか否かで、扱い方・考え方が変わる。系(II)の外表面が水圧を受けて押し込まれることを想起させる3/27記載の図を使った説明は、系(II)が中空の剛体壁でできた容器である場合には相応しく、また、圧縮歪が中まで届かないような固い系の場合にも概ね当てはまるのだが、流体的性格を伴う十分‘やわらかい’系を考える場合には全く相応しくない。そのような‘やわらかい’系においては、「系の表面が押し込まれる力を受ける」と考えること自体に無理があり(系を界面で形式的に区分し、それらの間の相互作用の一方からの分力だけを考えるという抽象的思考を強いている)、それが種々の混乱や誤解を誘発する元となる。

流体的な系は、自身が圧力媒体となって、水圧を内部まで伝える。このとき、圧力勾配をもつ水圧が系(II)にもたらす影響は、水圧を考えないときに比べて、系(II)の各部を変位させようとする(主に上方に押し上げる)効果となって現れる。この効果は、系(II)に対する束縛条件等に応じて、ときには、上方への全体の平行移動の効果として現れ、場合によっては、伸び上がったり(底部固定の場合)、広がったり(上部突き当りの場合)、など変形の効果として現れる。これらが、‘やわらかい’系に働く浮力の効果なのである。
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さてそこで、最後のモデルケースを考える。
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―3:ゆで卵、蒟蒻、ゼリーなど―
これらは、「流体的な性格を多少伴うやわらかい弾性体」の典型的実例である。水圧をかなり奥まで伝える圧力媒体としての振る舞いを示すが、圧縮に対抗する弾性応力も示すので、圧力は中心部に近づくほど緩和していると考えられる。この場合、周囲の水圧によって、表面からある程度の領域までを押し込む力が(弱い力が分布する形とはいえ)確かに生じている。この点では純粋流体と異なっている。

ただし、この領域においては、勾配をもつ水圧の効果と重力による自身が歪む効果の両方を受けながら(目に見える程度の)変形が起こっており、内部では応力歪みの向きが複雑に転換する。浮力の効果の一側面は、この部分の変形状況に現れる。
それは、系(II)の自重による変形が(水がない時に比べて)軽減されるような効果であり、このことは、「系(II)各部に働く重力が減ったように見える(場合によっては浮上力に転ずる)効果」と表現することもできる。これが、水中に置いたゼリーや豆腐に現れる一つの重要な浮力効果になっている。

一方、こうした変形の問題を全く考慮外とするならば、(系の変形が落ち着いた適当な段階で)系(II)の形を固定して考えることで、3/27記載の図のベクトルの足し算の処方によって、系(II)全体を上方に移動させようとするタイプの浮力の効果を算出することもできる。

このような事情にあることが、これまでの考慮の過程を経て、ようやくすっきり理解できるようになった。

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さてそれでは、実際の写真によって、上のケースの実例としての水中のゼリーに現れる浮力の効果を確認してみよう(懸案の写真撮影の課題に昨日チャレンジしました.)


びんの底に置いたゼリーが、水を満たすことで、高さ方向に伸び上がる様子が観察できる。ただ、この写真の場合、円筒形のびんを使っているために、水を満たすと横方向に拡大するレンズ効果が現れており、右側の写真における見かけの形状は、実際よりかなり横長に見えていることに注意してほしい(物差しの見かけの幅に注目!)。そこで物差しの高さ方向の目盛を観れば、ゼリーの高さが約2割弱伸びていることが客観的に判断できる(物差しの端に3mmの目盛りブランクがあるので、高さは約27mmから32mmまで変わっている)。

もし仮に、この周囲の液体の比重を次第に大きくしていくならば、このゼリーの伸び上がりはだんだん著しくなり、ある段階で、底面から離れて浮かび上がるだろう。このような現象を理解しようとするときに、3/27記載の図の矢印ベクトルを足し合わせて考えることが、いかに的外れであるか、あらためて認識させられる。考え方を基本から転換する必要があるのだ。
<続く>

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浮力の説明の謎 (7-b) の中、以下の記述を追加・改訂しました。

1:ビニル袋で包まれた液体について
2:硬い球状カプセルについてのところの後半(ほぼ完成)

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タイトル名をあまり細分化するのもどうかと思うので、しばらく、このような形で、既存エントリーへ補う形で記述を進める予定。

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