歴史から多くを学び、その知識を血とし肉として未來を的確に予測したチャーチルも、ロシア人の行動は「予測できない」と嘆いています。彼のつぶやきには「私にはロシア人の行動は予測できない。それは謎につつまれたミステリーであり、巨大な謎に入った判じ物である」。リドル、パズル、ミステリー、エニグマなど、いずれも似たような意味ですが、ウクライナでのロシア軍の行動を見ていると、かれらも自軍の行動の意味が読めていなかったのではないか、と思えてきます。
日本人が楽しんだお正月の遊びの一つに「百人一首」のかるた取りがありました。老若男女がつどって、1000年も昔の名歌の上の句の5文字を聞くか聞かないか、のうちに「はい、ありました!」という声がかかる。記憶力と瞬発力が勝負の世界です。近所を歩いていると、どこからか上の句を読み上げる声が聞こえてきました。思春期を迎えた男女は、「あるいは彼女(彼氏)に会えるかも知れない」という淡い期待を抱いて集会に参加したものです。明治や大正時代の小説にはカルタ取りをあつかった名場面もいくつか出てきます。遊びが多様化したせいでしょうか、それに加えてコロナの影響もあり、ちかごろはこの優雅な遊びも少し影が薄くなってきたようです。
しかし和歌になじむメリットは、若い方々の想像をはるかに越えるほど大きいものがあります。第一、上の句と下の句を一対にして覚えることで、記憶力が格段によくなります。これは強制を伴わず自分流のやり方で楽しみながら歌を憶えられるので、いつの間にか数十首の歌を憶えてしまいます。この記憶力の向上は、外国語の習得にはかり知れぬほど役立つものです。わたしの友人で、英語で一目おかれている人は、おおむね和歌や流行歌を「努力しないで覚えるのが得意な」ひとです。
苦心惨憺して語学学校に通うのもいいですが、ときにはおもいきって発想をかえてみることをおすすめします。
しかし和歌になじむメリットは、若い方々の想像をはるかに越えるほど大きいものがあります。第一、上の句と下の句を一対にして覚えることで、記憶力が格段によくなります。これは強制を伴わず自分流のやり方で楽しみながら歌を憶えられるので、いつの間にか数十首の歌を憶えてしまいます。この記憶力の向上は、外国語の習得にはかり知れぬほど役立つものです。わたしの友人で、英語で一目おかれている人は、おおむね和歌や流行歌を「努力しないで覚えるのが得意な」ひとです。
苦心惨憺して語学学校に通うのもいいですが、ときにはおもいきって発想をかえてみることをおすすめします。
前々回は他国民をもはらから(兄弟・同胞)と思い、世界の平和を心から願われているにもかかわらず、何ゆえに戦争と紛争の足音が聞こえてくるのかというお気持ちを歌に託された明治天皇のご憂慮について書きました。近代国家として歩み始めたばかりの日本は、こういう君主をいただいていたのです。そして前回は、日本人の多くと世界の有識者・知的階層が、「これぞ日本精神の神髄」と共感できるものはなにかといえば「美しきものを愛でる心だ」と言いました。その具体例をただ一つだけ挙げさせていただきます。昔から多くの人々の支持を得てきた和歌です。
「敷島の 大和心を 人問わば
朝日に匂ふ 山櫻花」
作者は 本居宣長 です。
「敷島の 大和心を 人問わば
朝日に匂ふ 山櫻花」
作者は 本居宣長 です。
日本人の心の特質を一言で言えば、「美を愛でる心」でしょう。世界にはいろいろな民族がおり、さまざまな価値観があります。長い伝統によって育くまれてきたもので、それぞれかけがえのない大切なものであり、民族や国民の心の拠り所となっています。そうした今の世界で、自分の生まれ育った文化が他民族のそれよりもすぐれているとおもいこむのは、非常に危険なことであり、平和に共存してゆこうと願う人々にとって許しがたいことです。
では独善に陥らず、自惚れを廃し、大方の外国人も「それは妥当だ」と同感する「日本的なるもの」「それこそ日本文化の神髄だ」と
納得するものを一つ挙げるとすれば、それは何だろうか? とお思いでしょう。けっして偏狭な愛国心からでなく、それは「美しきものを愛でる心」だと思います。英国人が誇りを込めて使う「フェア」「フェアプレイ」も立派な価値観ですが、日本の「美を愛し、戦う相手の名誉や悲しみにまで思いを馳せる精神」は、世界に誇るに足るものです。「そんな精神的価値よりも、核やミサイルの方がはるかに効果がある。戦争の勝敗を決めるのは武力だ」と思い込んでいる国がいくつかあります。彼らが「美しさ」の価値をいくらかでも認めるようになってほしい。彼らが戦場に残したゴミの山が、いかに世界の軽蔑を買っているかをもっと真剣に考えてもらいたい。
では独善に陥らず、自惚れを廃し、大方の外国人も「それは妥当だ」と同感する「日本的なるもの」「それこそ日本文化の神髄だ」と
納得するものを一つ挙げるとすれば、それは何だろうか? とお思いでしょう。けっして偏狭な愛国心からでなく、それは「美しきものを愛でる心」だと思います。英国人が誇りを込めて使う「フェア」「フェアプレイ」も立派な価値観ですが、日本の「美を愛し、戦う相手の名誉や悲しみにまで思いを馳せる精神」は、世界に誇るに足るものです。「そんな精神的価値よりも、核やミサイルの方がはるかに効果がある。戦争の勝敗を決めるのは武力だ」と思い込んでいる国がいくつかあります。彼らが「美しさ」の価値をいくらかでも認めるようになってほしい。彼らが戦場に残したゴミの山が、いかに世界の軽蔑を買っているかをもっと真剣に考えてもらいたい。
各国のトップリーダーの中で、周辺の国民をはらから(同胞)と呼んだ人はそう多くはありません。しかし口には出さなくとも、他国民の幸福と安泰、平和な生活を願い、政治・外交を行った政治家はかなりの数に上ったと思われます。前回ご紹介したJFケネディもその一人です。では、この立派な哲学を歌に託して発表した日本人とはどなたでしょうか?
なんと明治天皇です。
御歌(御製)は、次のとおりです。
四方(よも)の海 皆はらからと思ふ身に
などか嵐の 立ち騒ぐらむ
わが日本の周辺の国々も、世界の数多くの国も、みんな同胞だと私は思っている 心から平和を願っている
だが、そういう祈りや願いにもかかわらず 足元には紛争や戦争の足音が絶えない どうしてなのだろうか
日本人としてこういう君主をいただいたことを、どうお考えですか?
書きたいことはもっとあります。日本文化や武士道に対する無知ゆえに日本を貶めている人がまだまだ多いいま、世界の平和という視点からこの御歌を味わって下さい。
なんと明治天皇です。
御歌(御製)は、次のとおりです。
四方(よも)の海 皆はらからと思ふ身に
などか嵐の 立ち騒ぐらむ
わが日本の周辺の国々も、世界の数多くの国も、みんな同胞だと私は思っている 心から平和を願っている
だが、そういう祈りや願いにもかかわらず 足元には紛争や戦争の足音が絶えない どうしてなのだろうか
日本人としてこういう君主をいただいたことを、どうお考えですか?
書きたいことはもっとあります。日本文化や武士道に対する無知ゆえに日本を貶めている人がまだまだ多いいま、世界の平和という視点からこの御歌を味わって下さい。