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View of the World

世界と日本をつなぎあなたと世界を近づける

ハゲタカの目から考える ゼウスの限界と魅力

2020-07-18 16:44:33 | 知的スケールが一段と広がる情報
 前回は「ハゲタカは夜 目が見えるのか」という超素朴な疑問を取り上げました。生き物に詳しい子供には一笑されそうだけど、あえて書いてみました。私と同じように感じている読者が5人や10人はおられるだろうと思ったからです。そういう方々は、友人に相談することもできず、ひそかに悩んで(?)いらっしゃるのではないか。ならばここで思い切って自分が疑問をぶつけてみようと思った次第です。「こんなことで悩む者なんていやしないよ。お前ひとりくらいだ」という声も聞こえる気がしましたが、昔から「子供の心を持ちつづけたい」と思ってきた者としての、行動でした。しかし賢明な読者の何人かから、「鳥目というのはニワトリなどの家禽(かきん)を指すもので、ワシやタカのような猛禽は夜間でも目が見える」というご教示をいただいたことを、感謝をこめてご報告いたします。やはり書いておいてよかったです。お騒がせしました。

 さてこういうことを書いた最大の狙いはべつにありました。それは「ハゲタカの目が仮に鳥目であったとしても、彼らに「プロメテウスを襲え」と命じたのは、全能の神ゼウスではないか。事前に彼らの鳥目を治しておくくらいわけもないだろう。こんなことであまり頭を使うな!」と思われた方の数はかなり多かったのではないか、この人たちは重大な誤解をしていらっしゃる。その誤解をぜひ修正していただきたい」との願いからです。

 「どこが重大な誤解なのだ?」とお思いでしょう。問題は「全能の神」という思い込みです。だがゼウスはけっして全能ではありません。しかし日本のメディアには、そう信じ込んでいる人が多く、テレビ番組のナレーションなどでは、何年たってもこの「全能の神」という表現が使われています。まさに「無知」ゆえの大ミスです。ゼウスは主神ですが全能ではありません。海を支配するのはポセイドンですし、黄泉(よみ)の国はハディスが支配しています。加えて彼の最大の悩みは嫉妬深い妻ヘラの存在です。彼は「きわめて限界付きの力しか持たない権力者」なのです。
 こうしたきわめて人間的な支配者をギリシャ人たちは愛してきました。これがギリシャ文明の特徴であり、魅力なのです。それを引き継いだローマも似たような思想の上に立っていました。ユダヤ教や、キリスト教、イスラム教などの「唯一絶対の神」を生まなかったギリシャ・ローマへの共感と支持は、今も世界中に満ちています。ゼウスを勝手に「全能者」に祭り上げているようでは、世界は見えてきませんし、世界の人々とのコミュニケーションもうまくいきません。早く思い込みを捨てて、世界をより正確に見ていきましょう。ギリシャ文明への根本的誤解を正すことも、平和の維持に大きく役立つと私は信じています。

心にじーんと効いてくるマンガの名セリフ これが原語です

2020-06-29 18:45:08 | 知的スケールが一段と広がる情報
 
 前回はチャーリー・ブラウンとライナスの、胸を打つ会話をご紹介しました。何かにあるいは誰かに幻滅したにちがいないライナスは聞きます。
 「幻滅を癒してくれるものってなんだろうね? チャーリー・ブラウン?」
  チャーリー・ブラウンは間を置かずに答えます。
 「チョコレートクリームと背中への友情のひと叩きだよ」
 そう言って彼は、手にしたお菓子の箱を差し出します。ライナスはその中から1本を抜き取り、おいしそうにほほばります。その背中を、チャーリー・ブラウンは勢いよく、「パン!」とひと叩きします。
 去ってゆく友の後ろ姿を見送りながら、ライナスはしみじみとした口調でつぶやきます。
 「チャーリー・ブラウンっていいやつだなあ! (昔とちっとも変っていない)」

 さあ、これを原語ではどう言っているでしょうか?

 L " What is the cure for disillusionment , Charlie Brown ?"
"
CB " A chocolate cream and a friendly pat on the back"

L " Good old Charlie Brown ! "

なんとまあ簡単ではありませんか? ちょっとむずかしそうなのは普段はあまりつかわない「幻滅」という言葉くらいです。でもここに出てくる「幻滅」を分解してみると、話はぐっとやさしくなります。キーワードは、 illusion  イリュージョンです。これが幻想とか、かなわぬ夢想だということは日本でもかなり知られています。その頭に dis- という「否定語」がついているのですから、幻想を打ち砕くということだなと類推できます。そして最後に -ment がきます。名詞の多くがこの接尾語をもっています。アポイントメント、アグリーメントなどです。こうして分解してみると、 disillusionment が「幻滅」を意味することは察しがつくと思います。
 次は cure です。幻滅を癒すクスリといってもそんなものは薬局で売っているわけではありません。だからおなじみのメディシンは使えません。ここはキュアだ最適なのです。

 ご参考になったでしょうか? お役にたてたら、うれしいです。

騎士に恋して焦がれ死にした姫に憧れる赤毛のアン

2020-06-13 09:28:35 | 知的スケールが一段と広がる情報
 自分の得意とする話題、詳しく知っている領域に会話の相手を巻き込んで、たがいに夢中になって話し込めば、英会話の能力は驚くほど向上するーーと申し上げ、一例としてアーサー王と円卓の騎士たちの物語を挙げました。「でもこれだけでは足りない。もう少し具体的に語ってほしい」と感じられた方も多いでしょう。皆さんがご自分の体験として、身に付けておられる可能性が高い話をさせていただきます。
 
 ある川の中州に建つ城がありました。城主の娘エレーヌはたぐいまれな美貌の持ち主で、非常に聡明な姫でした。城主は姫をこよなく愛していました。ある日、一人の騎士がこの城に立ち寄りました。男盛りで、りりしく、苦み走った美青年でした。遠く離れたアーサー王の城キャメロットから来た「ランスロット」と名乗りました。騎士を一目見たとき、エレーヌの胸は高鳴りました。「なんと素敵な殿方でしょう!」。彼女はたちまち恋のとりこになったのです。城に一泊した騎士は、翌日キャメロットに向けて旅だちました。さあそれからというもの、エレーヌの恋心は日に日に募るばかりでした。「なんとかしてもう一度お会いしたい!」と思えども、当時はそれはかなわぬ夢でした。日夜恋の炎に身を焦がした彼女は、病の床につきました。憔悴しきった幸(さち)薄き乙女は、やがてこの世を去ってゆきます。
 娘の恋心を哀れと思う父は、彼女を小舟に乗せ、はるか下流にあるはずの「キャメロットの城に
無事に届けよ」との祈りをこめて送り出します。みずから舟の艫(とも)を一押しし、涙をためて見送る父! 舟は静かに流れて行きます。

 この物語を読んだ多感で、想像力豊かな(ときには想像力過剰な)若い女性たちはどう思うでしょうか? よほどひねくれた人を除いて、大方の女性は感動するでしょう。ル-シー・モンゴメリー原作で、日
本では村岡花子の名訳で広く読まれ、TVアニメとしても長年高い視聴率を得てきた「赤毛のアン」のヒロイン、アンもまた感動の塊となりました。自分とエレーヌの運命を重ね合わせ、小舟に乗ったまではいいのですが、このあと大騒ぎになります。
 これだけの材料が揃えば、1時間や2時間の会話はできると思います。どうか楽しみつつ、英会話力を磨いて下さい。












英語力をいちだんと増す方法

2020-06-05 14:56:18 | 知的スケールが一段と広がる情報
 前回も前々回に続いて、ノルマン(フランス)軍によるイングランド征服について書き、それが1066年だったことを繰り返しました。なぜ2回も同じ年号を述べたかと言うと、こうした年号が頭に入っていることが、英仏の歴史についての理解をいちだんと深め、そのことがあなたの英語力増強に多大の貢献をしてくれるからです。

 英語力を増す方法で、最も効果があるのは、英語圏の大人も子供も知っている物語りや歴史に話題を絞ることです。自分の得意の領域で相手も興味がある話題に相手を引き込んで、何時間でもそれを語り合えるようになれば、自分でも驚くほどの会話力が身に付きます。ところが最近は高校も大学も文学を軽視し、ときには敵視しています。実用英語一点張りです。そんな内容が、面白いわけがありません。日本人の英語下手は、話題の乏しさ、頭の回転のマンネリ化によると言っても過言ではありません。

 たとえば伝説のアーサー王と円卓の騎士たちの冒険とロマンスを一度でもよいですから読んでみてください。大人向けのものより、むしろ少年少女向きの本がおすすめです。、騎士ランスロットと王妃グイネヴィアの不倫の恋、この騎士を慕って焦がれ死にする乙女エレ-ヌ姫、白鳥の騎士ローエングリン、キリスト処刑の際の血を受けた聖杯を探す旅に出るガラハッドなど、読者を飽きさせない物語がいっぱいです。
 アーサー王はなぜ騎士たちを「円卓」に座らせたのか? そこには現在の企業経営にもきわめて貴重なヒントも隠されています。

ノルマン征服後のサクソン騎士たちの苦難

2020-05-28 11:03:08 | 知的スケールが一段と広がる情報
1066年という年の重要さ

 1066年という年号は、イギリス生まれのイギリス人ならまず90パーセントが知っている年号です。あえて「イギリス生まれの」と書いたのは、近年急増している「移民は別として」という意味です。自分がこれから住みたいと思っている国の歴史も文化も知らず、英語も話せない移民がふえているのが昨今ですが、イギリスの学校で学んだ子供たちなら、この年号は頭にしっかり刻みこまれています。
 前回ご紹介したフランスはノルマンディーの公爵ギヨームが、自分にはイングランドの王位継承権があると主張し、フランス騎士団を引き連れて英仏海峡を越え、ヘイスティングスの野原でイングランド軍と戦って勝利し、勢いをかってロンドンにまで攻めのぼったのがこの年でした。ギヨームはイギリス風に「ウィリアム」と呼ばれるようになり、「ノルマン王朝」の始祖となりました。ノルマンによる征服は英国史の中でも最も重要な出来事であり、英国民なら当然知っておくべき常識です。
 
映画や小説・少年少女向き読で、ぐっと身近になる外国 英語学習にも絶大な効果

 こういうことを知って英語を学ぶのと、知らないで学ぶのとでは、決定的な差ができてきます。「そんなことを言われても、私にはもう遅すぎる」と諦めないでください。英語はともかくとして、この征服の前後のイングランドの様子を想像することは、実に面白く楽しいものです。まさに血沸き肉躍るような物語がいっぱいあります。
 中でもエンターテインメントとして秀逸なのは、征服された側の、アングロ・サクソンの騎士の苦労ばなしです。この征服からほぼ100年後に、「獅子の心を持った王」という尊称で呼ばれた、リチャード1世が即位しますが、彼の部下でかぎりなき忠臣のアイヴァンホーが活躍する物語りがお薦めです。映画ではリチャード王にショーン・コネリー、主役の騎士アイヴァンホーにロバート・テイラー、ユダヤ人の金貸しの娘で、馬上槍試合で傷ついたアイヴァンホーを恋い慕う絶世の美女レベッカにエリザベス・テイラーが扮しています。
 騎士と美女は原作小説の作者ウオルター・スコットの創作ですが、史実とフィクションが入り混じった傑作です。原作の冒頭に、二人の農民が登場しますが、二人の話す英語は訛りがひどくて、ちょっと読みこなせません。ビデオ・ショップにもし「アイヴァンホー」があれば、ぜひご覧ください。騎士たちの試合のマナーをはじめ、中世とイギリスがうんと身近になります。こういう作品を「なんだ、大衆文学じゃないか」と馬鹿にする「純文学好き」のインテリがいますが、これはかの大文豪ゲーテが絶賛している名作なのです。