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View of the World

世界と日本をつなぎあなたと世界を近づける

国の興亡も個人の運命もコメント力で決まる

2020-01-25 11:25:21 | 国際情勢
 あまり大きなテーマは「自分には関係がない。そんなことを言われたって、自分にはどうすることもできない。天下国家の大事は、昔は知らず、今の庶民は預かり知らぬことだ」と思っている人が多いでしょう。しかし、「無関心派」の貴方および似たような方の多数が、世界の運命に関心を抱き、身近な国会議員選挙やメディアの報道に対して意見を述べるようになれば、日本および世界の運命は大幅に変わります。それもよい方向に変わります。それを信じていただきたいと願ってこのブログを続けている次第です。

 まずは、第二次世界大戦において、フランスの運命を劇的に変えたシャルル・ドゴール准将の演説について。
 ドゴールはフランス陸軍の超エリートでしたが、組織の大勢に従い、自分の立身出世のみを考えるような、並みのエリートとは全く違う哲学の持ち主でした。彼はヒットラーの率いるドイツ軍の、怒涛の進撃に屈し、戦わずして首都パリを明け渡した自国の首脳部(将軍たち)の行為を「国民に対する重大な裏切り」と見て、これを許さず、ロンドンに亡命政権を樹立することを決意、直ちに軍用機で英国に脱出します。1940年6月のことです。
 英国政府(首相はチャーチル)との交渉の結果、公共放送BBCの電波を借りることにしたドゴールは、6月18日、BBCのラジオ波を使ってフランス国民に呼びかけます。ドイツの技術的・軍事的優勢を認めつつ、世界を広く見渡す視野から、この戦争の意義を強調、これは全世界を巻き込んだ「大戦」なのだと言います。
 そして「だがフランスは独りではない。彼女(フランスは女性名詞)は独りではない。彼女は独り」ではない」と繰り返します。その根拠として、フランスの背後には今もドイツと戦い続け、制海権を握る大英帝国と、巨大な工業国アメリカがついていることを挙げ、我らはなならず敵にまさる技術力でドイツを打ち破るだろう。自由フランス万歳!」と締めくくります。
 このコメント原稿は、彼自身が書いたものです。私は若き日にドゴールを接遇したBBCの幹部から、朱入りの原稿をもらい、この演説のほぼ全文を自著「メディアの驕り(おごり)」(新潮新書)で紹介しています。感動を誘う名文です。ぜひご一読ください。

 フランスにもしドゴールがいなっかたら、彼女はまちがいなく「敗戦国」になっていたでしょう。もしドゴールにこれだけのコメント力がなかったら、彼の演説に奮い立つフランス国民はおらず、対独レジスタンス(抵抗)運動は失敗したでしょう。まさにコメント力は一国を敗戦から救い、フランスの自由と独立を守ったのです。
 次回はコメント力と個人の運命について書きます。
   

ダナン開催はアメリカにとって吉か凶か

2019-02-06 16:27:58 | 国際情勢
 アメリカと北朝鮮の第二回首脳会談は、ベトナムのダナンで開催されるそうです。これについて、ポンペイオ国務長官は、「かつてアメリカと戦った(北)ベトナムは、今や立派な国になった。北朝鮮もその気になれば、すばらしい国になれる。こういう状況の中で、かつての戦場だったダナンで首脳会談が開かれるというのは意義深いことだ。北朝鮮もすばらしい国になれる」(大意)といったことを記者団に向けて話しました。

 アメリカ特有の「一方的思い込み」の典型的一例です。「北」が国を富ませ、人民を幸福にするといった意志も、ヴィジョンも持っていないことは、建国以来の実績を見れば明らかです。圧倒的多数の国による経済制裁を受けても、ほとほと困り果てた場合は中国というビッグブラザーのふところに飛び込めば、なんとかしてくれると信じ、それを昨年来実行してきた国です。人間とか、自由、人権、平和といったものに寄せる思いが、アメリカ、ヨーロッパ諸国、日本などとは根本的に違う国です。ポンペイオ氏の楽観的見方は、あまりにも現実ばなれしています。
 
 ベトナムを褒めるのはまあいいとして、ここでアメリカは北ベトナムに敗れたのです。東洋の軍事専門家だったら[縁起でもない」と思う場所です。「そんな迷信みたいなことは、我々は信じない」と、トランプ氏もポンペイオ氏も思っているかもしれません。しかし東洋の思想では、占いもまた「教養の一部」であり、帝王たるものは「占いを軽んじてはいけない」のです。アメリカや日本を筆頭とする同盟国の国民の幸せのために、この会談が成功とまではいかなくとも、「失敗」に終わらないように、切に願っています。

古すぎる安倍首相および外務省の外交センス

2018-10-25 10:31:07 | 国際情勢
 安倍首相の訪中は成功したのか? 習近平主席に対して「言うべきこと」をきちんと言えたのか? 私の友人たちの間では「今の世界の対中批判の見方が反映されていず、中国に誤った安心感を与えた。日本の外務省と首相の外交センスは古すぎる」という声が高いです。その根拠は、この訪中が人々の自由・人権を尊重する国々の、対中認識とは大きく「ずれている」と見られかねないとの危惧です。今年の初めごろと今では、いわゆる「まっとうな国々」の中国を見る目は様変わりしています。対中友好よりも「中国を最も危険な国と見る」方向に進んでいるのです。とくにアメリカの対中認識は非常に厳しいものです。それは最近のペンス副大統領の演説をはじめ、有識者らの発言に明らかです。「米中新冷戦」といった言葉も、貿易摩擦などの枠を飛び越えて、もっと緊張をはらんだ現実味を持って語られています。

 そのことが日本のメディア関係者にはよく分かっていません。日本のメディアにしか接しない政治家や官僚たちにもよくわかっていないようです。人間の自由や人権を尊重する国々の目に、今回の安倍訪中団はどう映っているのか? 「やっぱり日本は外交音痴」とか「日本人のセンスは我々とはずれている」とか、もっと悪く言えば「日本は本当に我らの盟友なのか?」といった疑念を生みはしないか。これが心配です。首相の訪中をセットした外務省の「外交音痴ぶり」については、かねてから指摘されていますが、今回もまたそうした批判が的中した怖れがあります。安倍首相には「日中友好」とか、おそらく官僚たちの作文による「競争よりも協調」とかいう美辞麗句に酔わない、首相独自の世界観に基づく対中認識を示してほしかった。中国は中国なりに、日本から得るものは得ています。では日本は何を得たのか? 総じて言えば、この訪中は「失敗」の色合いの方が強かったのではないかと思います。

変化する「インテリジェンス」の意味

2018-09-28 16:23:54 | 国際情勢
 日本人は昔から「インテリジェンス」という英語を好んで使ってきました。「彼は本当にインテリジェンス豊かな男だ」とか、「彼女はインテリジェンスの塊(かたまり)だわ」といった言葉が、高校や大学の構内でよく交されていたものです。もちろん最上の誉め言葉としてです。この場合、日本語でどう訳すべきかとなると「知性」がいちばんふさわしいというのが、まあ大方の常識でした。
 
 ところが最近のマスコミにこの言葉が登場する場合、「知性」という意味で使われることは本当に少なくなりました。では「何」を指して使われるのでしょうか? すでにお気づきの方が多いと思いますが、「情報」です。情報なら、すでに「インフォーメーション」という言葉が普及してるじゃないか。それじゃ駄目なのかい? というお疑いはごもっともですが、それじゃ駄目なのです。インフォーメーションという言葉は「一般情報」を指します。「インテリジェンス」は、それよりもずっと精選された情報、手に入りにくいがそれだけ価値の高い、機密情報を指して使います。それも軍事がからんだ秘密情報を指すのが常です。こうした「インテリジェンス」をどうやって手に入れるのか? 情報を手に入れる能力の有無(うむ)と、これらをどう分析するかの能力が、一国の運命を分けるというのが、現代人の常識です。
 
 インテリジェンスの重要性を理解していない政治家、官僚、マスコミ人間、教職員などが、日本には多すぎます。中にはインテリジェンスを扱う他国の有名な情報機関が果たしている役割とその組織、活動する人員の頭の中身などについて、ほぼなにも知らないで、一国のトップに立ちたいと思っている「勘違い人間」もいます。本当に恐ろしいことです。そのことを、私はこのブログの中で繰り返し語ってきました。「何度も同じことを聞かされる」とお感じの方もおられるでしょうが、「日本が争いを起こさず、他国に侵略もされずに生き延びてゆくためには、どういうリーダーが必要なのか、という観点から最高指導者を選ぶべきだ」という考えをお持ちの方が一人でも二人でも増えてほしいとの願いをこめて書いています。

 他国の情報機関の名前、その実績、失敗と成功の実績等については、またあらためてご紹介いたします。

「インテリジェンス(情報活動)について知らぬ者は、インテリジェンス(知性)もないのだ」という言葉をもって、この記事の締めくくりとさせていただきます。

 

いつかイングランド対グルジア戦を観たかったが

2018-07-08 10:43:53 | 国際情勢
 今もイングランドは聖ジョージの旗を掲げて戦っています。数年前まで、これとそっくりそのままの旗を使って国際試合に出場していた国がありました。気が付かれましたか? グルジアです。今は正式に国名をジョージアと改め、国旗のデザインも少し変えましたが、元の旗の時代にこの国がイングランドと戦う日が来ないかなと、私はひそかに楽しみにしていました。もしこの夢が実現していたら、どういうことになったでしょうか? 日本の皆さんは大いに驚き、「なんだこれは! 両チームともまったく同じ旗じゃないか。一体これはどういうことなんだ?」という疑問を抱かれたことでしょう。すると技術解説ばかりしていて、放送中の両国の文化や歴史、国民性などにまったく触れない日本のテレビ局も、視聴者に納得してもらうために同じ旗が生まれたいきさつを解説せざるを得なくなります。それを聞いた日本人は、「そうか。聖ジョージの旗はもともとグルジアの方が本家なんだ。それにしても、旧ソ連から独立したあとも、強大な武力を持つ隣国ロシアに脅かされ続けてきたとは! この一戦は我ら平和に慣れきって、弱小国の悲哀や涙にまったくうとい日本人の目をさましてくれた」ーーということになり、他国の歴史や抱える問題点に、少しは興味を持つ方々がふえたのではないでしょうか? 

栃ノ心の化粧まわしが放つメッセージ

 グルジアの人々は、なぜ古い名前を捨てて、英語風の「ジョージア」に変えたのでしょうか? グルジアというスラブ風の呼び名が放つどん鈍重(どんちょう)さ、野暮ったさを嫌ったからだといわれています。グルジアが持つ、ソ連・ロシアに抑え込まれた、自由なき日々への恨み、嫌悪といったものも根底にありました。反対に「ジョージア」には自由を連想させる響きがあり、西側先進文化の香りがあったのです。政府を批判しても、投獄されたり暗殺されたりすることのない解放感も大きな要素でした。


 私の夢のサッカー戦は実現しませんでしたが、聖ジョージの旗は今もあなたのそばにあります。ジョージアから来た新大関栃ノ心の化粧まわしを、見てください。本場所中のいつも午後4時ごろ、横綱の土俵入りの前に勢ぞろいする関取衆と共に土俵に上がる彼の化粧まわしには、新しいジョージアの旗が燦然(さんぜん)と輝いています。そこには彼と祖国の人々の誇り、苦しかった過去と未来への希望、日本で相撲が取れることへの感謝、この平穏な日々がいつまでも続きますようにとの、切ないまでの願いがこもっている気がします。

  廣淵升彦

Will newly born Georgia prove to be free and prosperous country? What does the Keshomawashi that Tochinoshin wears symboize?

Masuhiko Hirobuchi