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イギリス人とメキシコ人の移住実験ーその費用の捻出法

2018-07-29 17:26:35 | 一度は「思い込み」を修正しよう
今回の記事(7月28日と29日掲載分)についての読者のご意見へのお答え

 標記の拙文について、「悠々様」からコメントがとどきました。趣旨は「この移住実験は大変な費用がかかったはず。とても一大学教授の給料で賄えるものではあるまい」というものです。ブログの読み方に習熟しておられる方は、当該記事をスクロールしてゆくと、読者からのコメントに行き当たることをご存知で、すでにこのコメントをお読みになった方もいらっしゃると思いますが、悠々様のコメントは非常に貴重なもので、私が「書き足りないな」と思っていたこととぴたりと一致しますので、ここに改めてご紹介し、私の意見を加えさせていただくことにします。

 1.単数または複数の大富豪(あるいは大会社)がこの計画を「実行する価値がある」と認め、費用の全額を負担してくれる場合。これは一見あまりにも虫のよい提案に見えますが、ピラミッドの発掘調査などに、何年にもわたり、億単位の援助をしている会社があることを思えば、実現の可能性はあると思います。

 2.学術的価値のある調査である旨を強調した「計画提案書」を、大学当局および教育省に提出し、相当額の「援助」を受ける。これも金額によりますが、可能性は高いと思います。

 3.マスコミ・航空会社などを「協賛社」「後援社」として巻き込む。航空会社などは、空席の座席がある場合は、無償で航空券を出してくれる。

 4.調査責任者である教授は、「サバティカル」(何年かに一度ある完全有給休暇)を利用して調査に当る。

 その他、一見すると初めはとうてい不可能と思われたことが、どんどん可能になって行くことが多いものです。この教授はいま挙げたようなすべてをミックスして、この計画を実行したのだと思います。スケールは違いますが、私も「到底無理」と思われた計画を、企業内で実現させた経験があります。ここにご紹介したプロジェクトも、「可能」と信じることから始まった計画だと思います。

カッカするイギリス人 冷静なメキシコ人

2018-07-28 10:26:22 | 一度は「思い込み」を修正しよう
 「我らイギリス人はほんとにそれほど冷静沈着なのか? どうも買いかぶられている気がする」と疑い出した大学教授が、30人ほどのイギリス人を、メキシコに連れて行き、約半年間そこに住まわせるという大実験をおこなったことを、昨日お伝えしました。
 結果は教授の懸念が当っていたことを証明しました。暑い国の太陽に頭を焼かれ、テキーラなどの強い酒をぐい飲みするようになった「元紳士」たちは、ちょっとしたことに腹を立てて掴み合いの喧嘩はするわ、あわや拳銃でかたをつけようとするわで、とても世界に浸透した「沈着冷静な民(たみ)」なんかではないことが明らかになりました。

 この結果を論文にして発表してもよかったのですが、教授は慎重でした。「これだけの実験では不十分だ」と思ったのです。
 そこで彼は、今度は30人のメキシコ人をイングランドに連れて行き、そこに半年間住まわせることにしました。なにしろ気の荒いことで有名なメキシコ人たちです。気に入らないことがあると、すぐにゲンコツにものを言わせたり、場合によっては発砲騒ぎになってしまいかねない危険な分子たちも混じっていました。

 さてイングランドに住み始めた彼らはどうしたでしょうか? それが拍子抜けするほどおとなしかったのです。イギリスの冬は暗くて憂鬱です。朝は9時ごろまで日が昇らず、午後は3時ごろになると薄暗くなります。気晴らしにパブで一杯やろうと思っても、客はみなおだやかに微笑み、のんびりと天候の話なんかしています。派手に喧嘩をするような、威勢のいいお兄さんたちはあまりいません。カルメンのような情熱的なお姉さんは、おそらく会員制のクラブあたりにはいるのでしょうが、自分たちにはちょっと手の届かない花です。
 雨が降ることが多く、そのせいか世界的に有名なレインコートの店が2軒もあるのが首都ロンドンです。周囲は薄暗く、こうした環境の中にいると人はだれでも、超目先のことよりももっと先の未来を考えるようになります。いかにも思慮深そうな表情をしたイギリス人を見ていると、我らがメキシカンもそういう顔になって行くのかも知れません。

 とにかくメキシコ人たちの急変は、教授を驚かせました。これに昨日書いたイギリス人たちの変化を書き加えると、イギリスおよび多くの他国で思い込んでいる「イギリス人というのはこうだ」「メキシコ人というのはこういう連中だ」という固定観念がいかに頼りなく、当てにならないものかを伝えるに、十分な説得力がありました。教授はこの発見を学術論文の形を取らず、まずは新聞向けのルポルタージュとして発表しました。1973年の夏、発表紙は「ザ・タイムズ」だったと思います。読者の反響は大きく、文化人類学者の間でもかなり話題になったようです。しかし日本のメディアのロンドン特派員各位は、あまりにもまじめすぎて、こういう一見笑いを取ろうとしているような記事は、特派員電として本社に送るに値しないと思ったのでしょうか、どうも日本ではこの記事はあまりよく知られていないようです。

 日本人は一度「こうだ」と信じ込んだら、その「信仰」にも似た思いを修正するのが不得手です。しかし世界は激変しています。柔軟な頭で、新しい真実を見る勇気を持ちたいものです。この一言が言いたいために、二日間長文にお付き合いいただきました。お読みいただき、心より御礼申し上げます。

 廣淵升彦  Many thanks for your patience of reading the whole articles for the last two days. I sincerely hope you have enjoyed reading them. Masuhiko Hirobuchi