すご腕の美男スパイ

　ハニートラップ（蜜の罠）という言葉から、男をたぶらかし骨抜きにして国家機密を盗もうとする女スパイの恐ろしさについて書きました。なんと日本の総理大臣までが、某国の「一家庭の主婦」を装ったプロのスパイの術中にはまっていたのです。諜報活動とか、他国の謀略といったことに頭が回らず、あまりにも無邪気に他国の善意や友情を信じている人々も、少しは身辺に迫る謀略・諜報戦の恐怖に目覚めてくれたでしょうか？　楽観はできません。

　これまでの記事を読んで、「それは男性のみなさん向けのお話でしょう？　私たちには関係ないですよね」と思っている女性がいるとすれば、「想像力の不足」としか言いようがありません。男を罠にかける強烈な国家意思は、当然女もターゲットにしているのです。冷戦の最中から世界最大の情報機関と言われたソ連のＫＧＢ（国家保安委員会）は、米・欧・日などの女性を狙って夢中にさせるすご腕の美男たちを徹底的に訓練していたと言われます。標的になった彼女たちは、自分の恥をさらすような告白を、メディアに語ったりはしませんでした。だから、こういうことに無防備で、自分は頭がよいと思い込んでいる女性たちの、「犠牲者（鴨）予備軍」は後を絶ちませんでした。これら美男子たちは、最後まで身分を明かすことなく、美しい恋の思い出（実は幻想）を彼女たちに与え続けたまま、ごく自然に彼女たちから去っていきました。
　これら美男スパイを養い、外国に送り込む費用は莫大なものだったでしょう。だが戦争によって領土を拡大したりする金額に比べれば、はるかに安上がりでした。

　「君の書くことは、固有名所をまったく挙げていない。数々の制限があるのは分かる。だが君自身も、ここに書いた数倍のエキサイティングな経験をしてきたのではないか？　そこのところを少しは語らないと現実感に乏しいよ。まるでプレーンソーダみたいな後味だ」とお感じかも知れません。少し時間がかかるかも知れませんが、もっと説得力のある体験談を書くように務めるつもりです。