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View of the World

世界と日本をつなぎあなたと世界を近づける

ビーフカレーのない街(2)

2018-09-14 14:32:38 | 想像力を楽しむ
 ロンドンはソーホーのカレー料理店で、出されたメニューをしげしげと見ていて、私が気付いた「あること」というのは、勘のよい方なら「そんなの簡単だよ。君がみずからこの記事のタイトルにしているくらいだから」ととっくに気付いておられることです。そうです、この店のメニューの中には「ビーフカレー」という項目は1行も入っていませんでした。実はカレー料理の中で、私がいちばん好きなのが、ビーフカレーなのです。
 よく自分のグルメぶりを自慢する人がいます。「メニューになくたって、とにかく頼んでみることだ。顔なじみになれば、特別に調理してくれるもんだよ」といった話を、私も何度か聞かされて、物は試しということで料理人に頼んでみたところ、注文どおりの料理が出てきたことが何度かありました。
 「今度もこの手で行ってみるか」と思いましたが、「待てよ。ここはもっと考えたほうがいいんじゃないか?」と、立ち止まるだけの慎重さを備えていたのは、若さゆえだったのかも知れません。

 「そうだ、ここはロンドンなのだ。イギリスは300年以上にもわたってインドを支配下に置いてきた。そうしたインド人が、長い歳月の間に、少しずつイギリスに移住してきて、こういうカレーの店を出すことになったのだろう。彼らはほとんどヒンズー教徒だ。ヒンズー教徒は牛肉を食べないことで有名だ。その信仰を客に対しても守っているのに違いない」。なんともはやあまりにも平凡な着眼ですが、傍にやってきたウェイターに聞いてみました。
 「インドからやって来たのかい?」。そうだと彼は言います。「あなたのような人はイギリスには多いの?」「はい、とくに戦後になってインドはイギリスから独立しました。その時イギリス政府は、インド人に新生インドの国民になるか、それとも従来のイギリス国籍を取るかを、自由に選ばせました。私の両親は「ブリティッシュ・パスポートを取る」(イギリス国民になる)方を選びました。だから私は、両国の間を自由に往き来できます。当時英国籍を取ったインド人は65万人いたと聞いています。

 話は聞いてみるものだとつくずく思いました。それにしても英国籍を取った人の数が65万人とは「少なすぎる」と思いませんか? もっとよく調べてみる必要があると思います。このテーマは実に大きく、考えさせることが多いです。今日はここまでで失礼いたします。


ビーフカレーのない街

2018-09-12 16:56:24 | 想像力を楽しむ
 いきなり「ビーフカレーのない街」などと言われたって、「そんなもんどこにでもあるんじゃない?」とお思いでしょう。仮に場所が分かったからといって、「この小忙しい暮らしの中でそれがどうしたというのだ?」と感じられても無理はありません。しかし物は考えようです。
 「実生活にはそれほど役には立たなく見える情報の中にこそ、意外と人生を豊かにする情報やヒントが隠されている」ものです。「ま、君がそこまで言うなら乗りかかった船だ。とにかく付き合ってみるか」と思っていただけると幸いです。
 
 実は舞台はロンドンです。おしゃれなブティークが並ぶ繁華街リージェント・ストリートの近くに、ソーホーと呼ばれる大衆的な中国料理やインド料理の店が並ぶ一角があります。私が初めてここを訪れたのは、もう40年以上も前のことでした。ニューヨークから帰って3年半が経ち、今度は「ロンドンにヨーロッパ支局を開設せよ」との命を帯びて出発することになりました。テレビ局というのは、親切で面白いことを考える先輩や友人がたくさんいるところです。そうした敬愛する先輩たちが、交々コーチをしてくれました。仕事や観光でロンドンを訪れたことのある先輩が多くその内の一人が言いました。「何はともあれまず土地勘を養うことだ。それには、食い物から入るのが手っ取り早い。ロンドンのカレーは、世界一うまいと言われてる。君もそれを味わってみることだ。ロンドンの素顔が見えてくると思うよ」

 先輩はここまでしか言いませんでした。私はこのアドバイスを忠実に守り、何はともあれカレー料理店が密集していそうなソーホーへ勇んで出かけました。渡されたメニューを丹念に読んでいくうちに、「あること」に気付きました。

 (実はドクターから、「1日に30分以上パソコンに向かってはいけない。病状はもっと悪化するよ」と重々諭されているのです。いくらなんでも2回に分けるのは申し訳なさすぎますが、どうかお許しください。明日は余裕をもってまとめるつもりです。よろしくお願い申し上げます。)