ボルトン補佐官が出席した意味
世界中の耳目を集めた米朝ハノイ会談は、実にあっけなく終わってしまいました。どんなに言いつくろってみても、これは明らかな失敗です。では受けた打撃はどちらがより大きいか?
もともとアメリカが嫌いな日本のマスコミ人間は、「アメリカの受けた打撃の方が大きい」というでしょう。しかし物事を理性的・客観的に見る人々は、「北が受けた打撃の方が数倍大きい」と思っており、「これが世界の常識であり、コンセンサスだ」と考えています。今朝から世界の主要メディアの評価が紹介されていますが、大方はこうした見方です。
では外交の専門家たちはこうした結末を読んでいたでしょうか? 27日の段階で、テレビ局のゲストコメンテーターに招かれた人々は、思い切ったことは述べていませんでした。結果がどちらに転んでも自分の失点にならないように、用心深いコメントに終始していました。
独自の「視点」を備えた人は、会談初日(27日)に出席していなかったジョン・ボルトン補佐官が2日目に会談に出席したことを、きわめて重く受け止めたはずです。夜の間に「なにかが変わった」のです。トランプ政権きってのタカ派といわれ、キム委員長のことを信頼できない男と見るボルトン氏は、北朝鮮から最も煙たがられ、「彼を事前の交渉などに出席させないでほしい」という注文を受けていたと言われる人物です。そういう要請が北朝鮮側からあったのかどうか。真偽のほどはわかりません。しかしキム委員長が最も苦手とする人物であることは確かです。その「恐ろしくて」「大嫌いな」補佐官が、出席すると決まった時点で、「何かが変わった」と見るべきでしょう。
大状況が読めないキム委員長
キム氏はほかにも、大きな読み違いをしていました。トランプ氏を甘く見過ぎていたと思います。トランプが彼を甘やかすような発言をしすぎたために、「この親父はくみしやすい」と思ったことはたしかでしょう。さらに彼は、国連という公の場で、圧倒的多数の国が北朝鮮に「制裁を科す」ことに賛成していることの重みを理解していませんでした。彼は自分が思っているよりも、はるかに世界全体から嫌われ、危険人物視されていることに気付いていないのです。