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View of the World

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ボルトン補佐官の存在感とキム氏の大いなる読み違え

2019-03-01 17:26:08 | あまりにも常識はずれのドラマ
 
ボルトン補佐官が出席した意味

 世界中の耳目を集めた米朝ハノイ会談は、実にあっけなく終わってしまいました。どんなに言いつくろってみても、これは明らかな失敗です。では受けた打撃はどちらがより大きいか?
もともとアメリカが嫌いな日本のマスコミ人間は、「アメリカの受けた打撃の方が大きい」というでしょう。しかし物事を理性的・客観的に見る人々は、「北が受けた打撃の方が数倍大きい」と思っており、「これが世界の常識であり、コンセンサスだ」と考えています。今朝から世界の主要メディアの評価が紹介されていますが、大方はこうした見方です。
 
 では外交の専門家たちはこうした結末を読んでいたでしょうか? 27日の段階で、テレビ局のゲストコメンテーターに招かれた人々は、思い切ったことは述べていませんでした。結果がどちらに転んでも自分の失点にならないように、用心深いコメントに終始していました。

 独自の「視点」を備えた人は、会談初日(27日)に出席していなかったジョン・ボルトン補佐官が2日目に会談に出席したことを、きわめて重く受け止めたはずです。夜の間に「なにかが変わった」のです。トランプ政権きってのタカ派といわれ、キム委員長のことを信頼できない男と見るボルトン氏は、北朝鮮から最も煙たがられ、「彼を事前の交渉などに出席させないでほしい」という注文を受けていたと言われる人物です。そういう要請が北朝鮮側からあったのかどうか。真偽のほどはわかりません。しかしキム委員長が最も苦手とする人物であることは確かです。その「恐ろしくて」「大嫌いな」補佐官が、出席すると決まった時点で、「何かが変わった」と見るべきでしょう。

大状況が読めないキム委員長

 キム氏はほかにも、大きな読み違いをしていました。トランプ氏を甘く見過ぎていたと思います。トランプが彼を甘やかすような発言をしすぎたために、「この親父はくみしやすい」と思ったことはたしかでしょう。さらに彼は、国連という公の場で、圧倒的多数の国が北朝鮮に「制裁を科す」ことに賛成していることの重みを理解していませんでした。彼は自分が思っているよりも、はるかに世界全体から嫌われ、危険人物視されていることに気付いていないのです。

謀略の都ハノイー

2019-02-27 11:48:44 | あまりにも常識はずれのドラマ
 トランプ大統領は、北朝鮮との首脳会談を前に、北への要求をどんどん「値下げ」しています。「非核化を急がない」と言ったり、「北が長距離を飛ぶミサイルの実験を行わないかぎり、アメリカは北がいま持っている核の保有を認める」と受け取られかねない発言をしています。このトーンダウンは、目の前にぶら下がって来た「ノーベル平和賞の受賞」と関係があるのかも知れません。もしそうだとすると、彼は日本をはじめとする同盟国の安全よりも、自分の名誉と栄光を優先させたことになります。とんでもないことです。北のミサイルは、今は米本土には届かないとしても、日本や韓国、グアムなどには届くのです。

 そのくらいのことは、いくらなんでもトランプ氏には分かっているだろうと思いたいですが、油断はできません。それに加えて、ハノイという土地柄が、なんとも縁起が悪すぎます。ベトナム戦争中に、この町でくリ広げられたソ連、中国を相手の対米謀略の数々を、アメリカはどこまで把握しているのでしょうか。根が陽気で人を信じるアメリカ人の性格は、アメリカの繁栄を築くのに大いに役立ってきたことは確かです。しかしこの広い世界には、他国および他国人を全く信頼せず、嘘と裏切りで完全武装している国もあるのです。北朝鮮を甘く見るのは、はなはだ危険です。お人よしのアメリカ人は、こういう手合いにかかると、いとも簡単にだまされます。「北」が一目置くのは、世界最強の軍事大国アメリカを向こうに回して、一歩も譲らずに、ついに自らの独立を勝ち取ったボー・グェン・ザップ将軍のような大戦略家たちです。ハノイには、こうした英雄の事績を偲ばせる建造物がたくさんあります。若いキム・ジョンウンは、そうした英雄たちの霊に守られていると信じている可能性が高いと見るべきでしょう。

 トランプはそうしたキムの思いが幻想にすぎないことを、まず知らせるべきです。会談の行く手を楽観視しすぎているように見えるトランプが、実に危うく見えるのは私だけではないでしょう。予定どおりに行けばペンタゴンの主ジェームズ・マチス国防長官は明日にも辞任します。このことがアメリカにとってどれほどの痛手であるかを、論じているメディアが少ないようなのが、大いなる気がかりです。

 
(おことわりとお願い:前回の記事で予告した「大岡越前」の妻の大錯覚については、「ハノイ会談」が終ってからにさせて下さい〉。

「お奉行さまがリンゴを食べた」「ありえない!」

2019-02-23 15:50:36 | あまりにも常識はずれのドラマ
 もう何十年前になるか分かりませんが、TBSテレビ全盛時代の看板番組「大岡越前」の中で主演の加藤剛が、リンゴ(林檎)を食べたそうです。これを観た歴史に詳しい友人から、「リンゴというのは外国の果物で、鎖国時代の江戸でリンゴを食べるということはまずありえない。TBSに抗議したが、全くの無反応だった。許せない」と憤慨していました。私はこのシーンを観ていません。たぶん外国に住んでいたころの放送だったのだと思います。TBSおよび脚本作家にうんと甘い点をつければ、「長崎のオランダ人が手に入れて、江戸幕府に献上した物の「おすそ分け」として、将軍吉宗から越前守忠相に下賜(かし)された物だったという、相当無理をした「こじつけ」も可能でしょう。しかし前後の話の展開をみれば、脚本作家の「知識不足」と見るのが正しいと思います。
 歴史物(時代劇)の場合も、現代の戦争物などの場合も、あまり考えすぎて作者の顔をつぶさないようにしようとしても、作者は感謝などしません。こういう作品については、単純明快に「この作者は常識を欠いている」旨を、放送局に知らせるべきです。

 今ごろこんなことをなぜ取り上げるのかと言いますと、ドラマの中の「考証」があまりにも杜撰(ずさん)だと、視聴者の「常識」はどんどん衰えてゆくからです。この町奉行とリンゴの場合のような例は、「そう目くじら立たてなくてもいいじゃないか。どうせフィクションだし、教育番組じゃないんだから」というような、いやに物分かりのいいことを言う人がいますが、こういうミスの積み重ねというのは、まことに危険なものです。「いや、私も軽率でした。ほかに許しがたいミスや錯覚の事例をお持ちだからこそ、この記事を書かれたのでしょう。お手元にある具体例をもう少し披露してください」とお思いの方もおられるでしょう。次回はそれをお知らせしようと思います。
 取り上げるのは「越前守」の妻です。この妻女の「大勘違い」について、語らせていただきます。とは言っても、悪いのは奥方の方ではなくて、脚本作家であることはもちろんですがーー。