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View of the World

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名せりふは発酵食品のごとく効いてくる 前回のマンがの原語

2020-07-08 11:29:02 | 人間の素顔が見える場所
 前回も名作マンガ中の名せりふを取り上げました。今回はまずその原語をご紹介します。できれば前回の分と併せてお読み下さい。

 3人の少女が歩いてきます。ヴァイオレットが言います。
 All the boys around here are so dumb! I would like to meet someone (whom) I could really admire ! (この辺の男の子はみんな頭が悪いわ! (ろくなのがいないわ!) 私は心からすてきだと思える誰かさんに会いたいわ!)
 これを受けてルーシーが言います。
 I would like to meet someone who is honest, has a good sense of humor, is cute and is
sensitive !  (私は正直で、いいユーモア感覚があって、かわいくて、そして繊細で傷つきやすい心のある誰かさんに会いたいわ!)

 このせりふに出会った時、私は正直言って「参った!」と思いました。小学生にこれだけのことを語らせる作者シュルツさんの人間観察の鋭さ、洞察力に感服しました。そしてこういう物をエンジョイしているアメリカの女性たちが形成する「世論」というのは、恐るべきものがある気がしました。他国からの侵略を防ぐのに民度というものがいかに大切かを思いました。成熟した人間観がよく出ている作品です。こういう名作を、気軽に手に取って楽しんでいれば、それらの作品はやがてあなたの心の中で熟成し、発酵して、自分でも気付かないうちに「英語脳」ができてゆきます。その効果は絶大です。ヨーグルトや味噌汁、納豆のような「心の中で発酵する」食べ物としての、名作マンガに親しんでください。

すてきな男の条件

2020-07-04 17:02:08 | 人間の素顔が見える場所
 最近のテレビコマーシャルで、「簡単に(苦労なしで)英語が話せるようになる」教材を売り込むものがふえています。利用者の若い女性たちは、「ほんと、簡単! 全部知っている言葉で、苦労しないで聴ける。だからヒアリングに自信が持てる」と話しています。はたしてこれで会話ができるようになるのでしょうか?
「知っている単語ばかり」というのは、そこに知らない単語が2つでも3つでも入ってくれば、まったく手も足も出ないーーということにならないでしょうか? 
 ま、そんな心配は人に任せて、こちらは前向きで楽しい話をしましょう。

 3人の女の子(いずれも小学生)が4コマ・マンガの画面の左から右へと歩いてきます。まずヴァイオレットが言います。「この辺の男の子はろくなのがいないわ!(みんな頭が悪いわ!)」。「私は心から「すてきだな」と思えるだれかさんに会いたいわ」
 これを受けてルーシーが言います。
 「私は正直で、いいユーモアのセンスがあって、かわいくて、そして繊細で傷つきやすい誰かさんに会いたいわ」。なんとまあ欲張った注文ではありませんか! とくに最後の一言が効いています。男は強いだけではいけない。繊細で傷つきやすい心を持っていなければ魅力がない、というのです。これはもう小学生の言葉とは思えません。成熟した大人の女性の言葉です。それも恋愛経験が豊かで、男に失望したり幻滅したりした人の苦い思いもこもっているせりふのような気がしますが、考えすぎでしょうか? この言葉の前にくる「正直で、いいユーモア感覚があって」という言葉も「いいことを言ってくれるなあ」という共感を呼びます。 
 私がこのマンガに初めて出あったのは、今から20年以上前のことでした。そのころ日本では若い女性が伴侶をえらぶ条件として、「三高」という言葉がはやっていました。「背が高くて、学歴が高くて、収入が高い男と結婚したい」というものでした。もちろん半分は冗談まじりでしたが、本音もかなり入っていました。これを聞いて私は、「なんだ、ここには精神的な要素はなにも入っていいないじゃないか。情けない!」と思ったものです。そこへゆくとルーシーの言葉は短いけれど、鋭く胸を打ちます。

 こういう作品の面白さというのは、時に過剰なくらいの解説が必要です。読者の想像力に頼り過ぎてはいけません。前回の記事は明らかに「解説不足」でした。
 今回の記事には実は体験談があります。そのころ私は複数の大学で「スヌーピーたちの英語」という講座を持っていました。その一つが女子短大でした。ある年の12月、クリスマス前の講義で、私はこのマンガを示し、クリスマスパーティでは外国人の先生もお見えになるだろう。その際の会話の中に、自分が会いたいと思う男の条件として、このルーシーのせりふを入れてみたらどうか? あなたに対する評価は間違いなく急上昇するだろう、と付け加えました。もちろんその前提として、せりふは英語で丸暗記していなければなりません。ためらいもあるでしょう。しかし勇気ある女子学生もいるものです。彼女はまったく悪びれず、堂々とこのせりふを語り、英会話の先生から絶賛されたそうです。


ポーターに頼まずみずから荷物を運んだ大社長(空港にて)

2019-06-24 17:15:39 | 人間の素顔が見える場所
 ヨーロッパ支局勤務中、ロンドンのヒースロー空港には何度か足を運びました。自分がフランスやドイツなどへ仕事で出かける場合もあれば、番組制作のために東京からやってきた取材班を迎える場合もありました。空港というのは、ふだんとは違う「人間の素顔」「人物の本質」が見える場所です。若い社員を同道している大会社の社長が何人もいました。社員はほとんど通訳兼荷物運びでした。駐英大使で間もなく外務省を去らねばならない人は、有力企業の社長会長訪英時にはかならずといってよいほど姿を見せていました。退官後のポスト確保のための運動であることは、誰の目にも明らかでした。あまり楽しくはない光景が多かった中に、ある有名人物の行動は感動をともなうものでした。その方は、大事な社員を荷物運びのために同道させるなどということは一切せず、多少のお金を払うだけで雇えるポーターも雇いませんでした。毎回ご自分
で回転式のベルトに乗って機内から吐き出される荷物を手押しのカートに乗せ、税関に向かうのが常でした。すべての手続きが終わって出てくると、出迎えたロンドン在住の社員に手を振って、出迎えてくれた労をねぎらっていました。

 この方はサラリーマンから取締役になり、常務、専務、副社長を経て社長になったいわゆるサラリーマン社長ではなく、みずから会社を興し、大株主・オーナーとして、副社長・社長になった根っからの経営者であり大富豪でした。我々にもいつもにこやかに語りかけ、ご自分の社の社員に「よくしてくれる」ことに礼を言う方でした。
 もうお分かりの方もおられるでしょう。
 ソニーの盛田昭夫社長です。同社の英国総支配人の並木さんは、何度か進言したそうです。「社長、もういい加減で荷物運びはやめてください。ここは階級社会です。かならず変な目で見られますから」。しかし盛田社長は言ったそうです。「ありがとう。でもね、私はソニーがまだ貧しくて、本当に苦しかったころを忘れないためにこうしているんだよ」。「分かってくれ」という心が滲み出るような言葉でした。「頑固で言うことを聞いてくれないんで、ほんとに弱っちゃいますよ」と並木さんはぼやきましたが、その表情はこれだけの成功者になっても、なお昔を忘れないという上司の下で働ける喜びと誇りにみちたものでした。