工作台の休日

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ハートの問題 マッキMC.202の場合

2020年08月02日 | 飛行機・飛行機の模型
 前回はDB601エンジンの「本家」であるメッサーシュミットBf109のことを書きましたが、今回はアルプスを越えてイタリアです。イタリアではマッキMC.202(フォルゴーレ)という戦闘機がこのエンジンを搭載していました。

 この機体、もともとは空冷エンジンのMC.200という飛行機から発達したものでした(MC.200に関してはSWEETから1/144でキットが出ています)。こちらはエンジンの非力さと貧弱な武装に泣かされ、列強諸国の戦闘機と伍するには厳しい状況にありました。このため、MC.200のエンジンを水冷エンジンに換装して生産したものがMC.202となりました。このあたりは日本の飛燕→五式戦とは逆のルートをたどったことになりますね。なお、ダイムラー・ベンツDB601エンジンはアルファロメオがライセンス生産をしています。
こうしてスピードは列強の戦闘機に引けをとらないものとなったわけですが、武装は12.7ミリ機銃×2、7.7ミリ機銃×2と貧弱なままで(参考までに零式艦上戦闘機21型は20ミリ機銃×2、7.7ミリ機銃×2でした)、イギリス軍のハリケーンと戦うならともかく20ミリ機銃を主武装としたスピットファイアなどと戦うには心もとないままでした。
 さて、模型の話に移りましょう。1/72キットはハセガワとタミヤ・イタレリのものが日本ではよく出回っていましたが、最近は見かけません。タミヤ・イタレリの方が本場イタリア製ということで興味があったのですが入手できず、ハセガワ製品を中古で買いました。
 ハセガワのキットは同社が1990年代に欧州各国の戦闘機を発売していたころのものです。過度にディティールを追い求めているわけではなく、コクピットなども簡単な造りです。1/72なのだから気軽に作ってください、ということなのでしょうか。エンジンカウルと機首下面の接合部に段差が出るので気を付けてください。さすがにコクピットは寂しい感もあり、エアフィックス1/72のスピットファイアのパイロットを連れてきました。イタリア機に乗ることになり、きっと不本意でしょう。

 塗装とマーキングですが、キットのものは使用せず、前回のBf109Fでも出てまいりました、マルタ島攻防戦のものとしました。だいぶ前に現地を訪れたことがあり、大変な激戦をイギリスとマルタの人たちが耐え抜いた、という話に興味を持ったことや、第一次大戦では日本海軍も日英同盟としての役目を果たすため、地中海に艦隊を派遣し、その基地がマルタにあったことなどから、マルタ島とその戦いの歴史は、私の模型でもテーマの一つとなっています。
 塗装ですが、デカールの塗装指示ではだいぶ茶色に近い感じがあり、ミラノで展示されている後継機のMC.205などを見るともっと「黄土色」という感じがしました。機体上面はMr.カラー39番・ダークイエローとしました。輪切りにしたピーマンのような独特の「スモークリング」はMr.カラー17番・RLMダークグリーンに124番・暗緑色(三菱系)を少量混ぜたものです。白い帯や垂直尾翼の十字はMr.カラー69番・グランプリホワイトを塗りました。純白だと迷彩塗装に浮いてしまうと思い、この色です。下面のライトグレーはMr.カラー325番です。
 スモークリング迷彩ですが、主翼は翼の付け根あたりから始めて、外側に向かっていくように筆塗りして再現しました。完全にフリーハンドではありますが、リングの大きさがまちまちになることはあまり気にせず、むしろ各々のリングの太さがまちまちにならないように気をつけました。

左右の主翼は長さが非対称でした。プロペラの回転方向に発生する力を打ち消すため、あえてそのような設計となっていました。

キャノピーと胴体に隙間が空いていますが、これが正しい姿です。MC.200に至っては解放風防でした。そのあたりがイタリア機が「我が道を行っていた」と思わせるところです。

下面のラジエーターは胴体中央に一基配置しており、これは飛燕と同様ですが「本家」のBf109が左右の主翼下に一つずつ配置としていたのと異なるところです。
 ハセガワのキット、作り始めて形にしているときにも「果たしてうまくできるかなあ」と不安だったのですが、塗装とマーキングまで済ませるとまさにMC.202そのものであり、このあたりは「飛行機のハセガワ」と言われるだけのことはあるキットでした。
 さて、実機の話になりますが、その後のMC.202はメッサーシュミットBf109が進化する中でエンジンを改良していったのと同様に改良を受け、Bf109Gと同じDB605エンジンを積んだMC.205に進化しています。これによりさらなる高出力、重武装も可能となり、連合国の戦闘機ともようやく互角になったのですが、程なくしてイタリアは降伏しました。MC.202は降伏後にドイツ側、連合国側にそれぞれ合流して戦ったと言われています。
 MC.205についてはミラノにあるレオナルド・ダ・ヴィンチ国立科学博物館で展示されています。本稿と直接関係はありませんが、珍しい機体ですので掲載する次第です(写真は2013年3月に筆者撮影)。




「スモークリング」やカラーリングの参考にしていただければ幸いです。
手持ちのコンパクトデジカメで撮ったので不鮮明なところがあるのはご寛恕ください。MC.205はイタレリからキットが出ているので、Bf109Gと一緒に作ってみよう・・・かな。


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