かぶとん 江戸・東京の歴史散歩&池上本門寺

池上本門寺をベースに江戸の歴史・文化の学びと都内散策をしています。

えどはくカルチャー・古文書講座 3

2012-06-08 | 古文書入門
實語教 その3 (テキストの本文 4~5頁)

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只如計隣財  君子愛智者
小人愛福人  雖入冨貴家
爲無財人者  猶如霜下花
雖出貧賤門  爲有智人者
宛如泥中蓮  父母如天地
師君如日月  親族譬如葦
多ゞ(ただ) と奈(な)りの多可(たか)らを 可(か)ぞふる可(が)□(ごと)し
くんしハ ちしやをあいし
しやう志(じ)んハ ふく志(じ)んを あい春(す)
ふ門(つ)きの いへ尓(に) いるといへども
ざ以(い) 奈起(なき) ひとの多め尓(ために)ハ
なを 志毛(しも)の志多(した)の 者(は)なの□(ごと)し
ひんせんのかどを いつるルといへども
ち あるひとの 多め尓(ために)ハ
あ多可(たか)も でいちうの者(は)ちすの□(ごと)し
ふ本(ぼ)ハ てんちの□(ごと)く
志(し)くんハ ぢつ个門(けつ)の□(ごと)し
志(し)んぞくハ 多(た)とハヾ あしの□(ごと)し
只(ただ) 隣りの財(たから)を かぞえるが如し  君子は 智者を愛し
小人は 福人を愛す  冨貴の家に入るといえども
財 無き人のためには  なお霜の下の花の如し
貧賤の門に出つるるといえども  智ある人のためには
あたかも泥中の蓮(はちす)の如し  父母は天地の如く
師君は日月の如し  親族は譬へば葦の如し

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夫妻猶如瓦  父母孝朝夕
師君仕昼夜  交友勿諍事
己兄盡礼敬  己弟致愛顧
人而無智者  不異於木石
人而無孝者  不異於畜生
不交三學友  何遊七覺林
ふさいハ 奈(な)を 可ハらの□(ごと)し
ふ本(ぼ)尓(に)ハ てうせ起(き)尓(に)こうし
しくん尓ハ ちうや尓 つかへよ
ともとまじハりて あらそふこと な可連
おの連可 あ尓ゝハ 連い个(け)いをつくし
おの連可 をとゝ尓(に)ハ あいこを い多(た)せ
ひとゝして ち 奈起(なき)ハ
本(ぼ)くせ起(き)に (こと)奈(な)ら春(ず)
ひとゝして こう 奈起(なき)ハ
ちくしやう尓(に) □(こと)奈(な)ら春(ず)
さん可(が)くの とも尓(に) まじハら春(ず)んバ
奈(な)んぞ しち可(が)くの 者(は)やし尓(に) あそバん
夫妻は なお 瓦の如し  父母は 朝夕に孝し
師君には 昼夜に仕えよ  友と交わりて 諍(あらそ)う事なかれ
己が兄には礼敬をつくし  己が弟には愛顧を致せ
人として智 なきは  木石(ぼくせき)に異ならず
人として孝 なきは  畜生に異ならず
三學の友に交わらずんば  なんぞ 七覺の林に遊ばん

師君・・・師匠と主君
三學・・・戒、定、慧の修行の綱格
七覺・・・擇法、精進、喜、除、捨、定、念の修行を覺了して道に入る

(続きます)



えどはくカルチャー・古文書講座 2

2012-06-08 | 古文書入門
實語教 その2 (テキストの本文 2~3頁・6~16行)

人不學無智  無智爲愚人
倉内財有朽  身内才無朽
雖積千両金  不如一日學
兄弟常不合  慈悲爲兄弟
財物永不存  才智爲財物
ひと まなバざれバ ち なし
ち なきハ ぐ尓(に)んと春(す)
くらのうちの ざいハ くつる□(こと)あり
ミ(み)のうちのさいハ くつる□(こと)なし
せん里(り)やうの こ可(が)ねを つむといへども
いち丹(に)ちの 可(が)く尓(に)ハ 志(し)か春(ず)
きやう多(だ)い つね尓(に)ハ あ者(は)春(ず)
じひを きやう多(だ)いと春(す)
ざいもつ な可(が)くぞんぜ春(ず)
さいちを ざいもつと春(す)
人 学ばざれば智なし  智なきは 愚人とす
倉の内の財は 朽つることあり  身の内の才は 朽つることなし
千両の金(こがね)を積むといえども  一日の学には如(し)かず
兄弟 常には合わず  慈悲を 兄弟とす
財物 永く存ぜず  才智を 財物とす


四大日々衰  心神夜々暗
幼時不勤學  老後雖恨悔
尚無有所益  故讀書勿倦
學文忽怠時  除眠通夜誦
忍飢終日習  雖會師不學
し多(だ)い ひゞ尓(に)おとろへ
志(し)んじん やゝ尓(に) くらし
いとけ奈(な)きとき つとめ ま奈(な)バざれバ
をいてのち うらミくゆるといへども
なを 志(し)よえ起(き)ある(こと)なし
志(し)よを 可(か)る可(が)るゆへ尓(に) よんで うむ(こと)奈可連(なかれ)
がくもん尓(に) おこ多(た))ると起(き)奈可連(なかれ)
ねふりをのぞいて よもす可(が)ら 志(し)ゆせよ
うへを志(し)のんで ひめ(ね)も春(す) ならへ
し尓(に)あふといへども ま奈(な)バざ連(れ)バ
四大 日々に衰へ  心神 夜々(やや)に 暗し
幼なきとき 勤め学ばざれば  老いてのち 恨み悔ゆるといえども
なお 所益 有ることなし  かるがるゆえに 書を読んで 倦むことなかれ
學文に 怠るときなかれ  眠りを除いて 夜もすがら誦せよ
飢えを忍んで 終日(ひねもす)習え  師に会うといえども 学ばざれば

四大・・・人の身は四大(地・水・火・風)よりなる、という仏説に基づく。
心神・・・精神、こころ
誦・・・読む、そらんじる


徒如向市人  雖習讀不復
い多(た)づら尓(に) いちびと尓(に) む可(か)ふ□(ごと)し
奈(な)らひ よむといへども ふくさせざれバ
いたづらに市人(いちびと)に向かうごとし  習い読むといえども 復させざれば

市人・・・町の人
福人・・・裕福な人、金持ち
如 □(ごと)し  (□)内は、「合字」の(こと)の字のため、ここに表記できず。
  
(続きます)



江戸東京博物館 えどはくカルチャー・古文書講座 1

2012-06-06 | 古文書入門

實語教
山髙故不貴 以有樹爲貴
人肥故不貴 以有智爲貴
富是一生財 身滅即共滅
智是万代財 命終即随行
玉不磨無光 無光爲石瓦

志川(じつ)ごきやう
やま 多可起可(たかきが)ゆへ尓(に) 多川と可ら(たつとから)寸(ず)
き あるをもつて たつとしと春(す)
ひと こへ多(た)るゆへ尓(に) 多川と可ら(たつとから)春(ず)
ち あるをもつて たつとしと春(す)
とミハ こ連(れ)いつしようのざい
ミ めつすれバ 春(す)なハち とも尓(に)めつ春(す)
ちハ こ連(れ) 者(ば)ん多(だ)いの多可(たか)ら
いのちおハ連(れ)ハ すなハち 志多可(したが)ヘてゆく
多満(たま) ミ可ゝ(みがか)ざれバ ひ可(か)りなし
ひ可(か)りなきをバ いしかハ(わ)らと寸(す)

實語教
山 高きがゆえに 貴っとからず   樹 有るをもって 貴しとす
人 肥えたるゆえに 貴っとからず  智 有るをもって 貴しとす
富は これ 一生の財   身 滅すれば すなわち 共に滅す
智は これ 万代の財   命終れば すなわち 随へて行く
玉 磨かざれば 光なし  光なきをば 石瓦とす

(古文書講座2へ、続く)
 


メモ
今回の古文書講座の教材 「実語教」のコピー
実語教は、寺子屋の(子どもの)教材だった(!?)
実語教および古文書、学びの基本は「写字」から。
(江戸検の参考書を思いかえせば、昔の人は「素読」から入った。)
暗唱できるということは、読めない「くずし字」も、読める(ということか)。
読み書き能力は、江戸・明治の人のほうが上だった(?)
実語教とは・・・
実語教が読まれなくなったのはなぜか。


内心、内心ですよ。非常にあせってます。表面はなんも変わっていないのですが、頭の中ではぐるぐると思いが駆けめぐって混乱しています。(いちど、リセットしないとダメだ。)
そういえば子どもの頃に、お前、それは「知恵熱」ってもんだ、と言われたことがあるが、同じなのかなあ。