かぶとん 江戸・東京の歴史散歩&池上本門寺

池上本門寺をベースに江戸の歴史・文化の学びと都内散策をしています。

えどはくカルチャー・古文書講座 テキスト 瓦版「焼失場所附」

2012-07-04 | 古文書入門
自習・古文書入門。
7月4日は、旧暦で5月15日。戊辰役、上野のお山の戦いで彰義隊が敗走した日です。
当時の瓦版で、古文書学習を続けます。
瓦版 『焼失場所附』 [場]も[所]も、テキストの写しでは異体字で書かれています。
絵は、右側から左へ、官軍(東征軍)が三橋越えに彰義隊を砲撃しています。左手には上野・寛永寺の炎上している様子が大きく描かれています。
なお、原文は、ふり仮名なしです。

  「焼失場所附」 釈文
頃ハ慶應四辰どし五月      頃ハ慶應四辰どし(年)五月
十五日 薩州樣 長州樣      十五日、薩州樣 長州樣
細川さ滿 奈べし滿樣 因州樣   細川さ滿(ま)(樣) 奈べし滿(鍋島)樣 因州樣
その外 官ぐん御人数 上野へ   その外(ほか) 官ぐん(官軍)御人数 上野へ
御出張 朝六つ半時より      御出張、朝六つ半時より
彰義隊と合戦尓 相成       彰義隊と合戦尓(に) 相成(あいなり)
官軍可多尓て 午のと起    官軍可多(かた)(官軍方)尓(に)て 午(うま)のと起(刻)
黒門やぶる 多ゝ可ひハ 七つ時ニ 黒門やぶる(破る)、多ゝ可ひ(戦い)ハ 七つ時ニ
志づまる やけばしよハ      志(し)づまる(鎮まる)、やけばしよ(焼け場所)ハ
山下どふり やける くるま    山下どふり(通り) やける(焼ける)、くるま(車)
ざ可より 廣とくじまへ      ざ可(坂)より 廣とくじ(廣徳寺)まへ(前)
さくら可と申 阿ぶらやの     さくら可(か)と申す 阿ぶらや(油屋)の
さ起 木戸ニてとまる ま多    さ起(先)、木戸ニてと(止)まる、ま多(又)
少々者なれて 柳のい奈りの   少々者(は)なれて(離れて)、柳のい奈り(稲荷)の
ところ 少々也ける ま多一ト口ハ ところ(所) 少々也ける(焼ける)、ま多(又)一ト口ハ
廣小路東可ハ 木ぐや      廣小路東可゛ハ(東側) 木ぐや(木具屋)
尓て留る 上の丁御可ち     尓(に)て留る、上の丁(上野町)御可ち(御徒)
内 兩可ハやける ま多      内 兩可ハ(両側)やける(焼ける)、ま多(又)
西可゛ハのこら須やけ     西可゛ハ(西側)のこら須゛(ず)(残らず)やけ(焼け)、
天神下同朋丁 木戸       天神下同朋丁 木戸
ぎハニて           ぎハ(際)ニて
やけ止る           やけ(焼け)止る
それより           それより
お春起やまち         お春(す)起(き)やまち(御数寄屋町)
やける 仲丁通り        やける(焼ける)、仲丁通り
片可ハ丁 錦袋         片可ハ丁(片側丁) 錦袋
えん となりニて        えん(円)(錦袋円) となり(隣)ニて
止る 又一ト口ハ 谷中      止る、又一ト口ハ 谷中
善光寺坂より根づ       善光寺坂より根づ(根津)
総門までやける 御切     総門までやける(焼ける)、御切
手丁 山崎丁 少々やける   手丁 山崎丁 少々やける(焼ける)

また一ト口ハ坂本      また一ト口ハ坂本
壱丁め貳丁め        壱丁め(目)貳丁め(目)
木戸ぎハニて留る      木戸ぎハ(際)ニて留る
三丁め志゛しん者゛ん    三丁め(目)志゛しん者゛ん(自身番)
の そ者゛ 少々        の そ者゛ (側)少々
やける 谷中         やける(焼ける)、谷中
天王寺前          天王寺前
のこら須゛         のこら須゛(ず)(残らず)
やける           やける(焼ける)、
後づめ 御可多めハ      後づめ(後詰) 御可多め(固め)ハ
谷中口へ 因州さ滿      谷中口へ 因州さ滿(様)
藤堂さ滿 御てあハせ     藤堂さ滿(様) 御てあハせ(御手合わせ)
これ阿る 上野御山内     これ阿(あ)る、上野御山内
山門より奥の可多       山門より、奥の可多(方)
多い者んやける 尤      多い者ん(大半)やける(焼ける) 尤
ねづへんも 所々       ねづ(根津)へん(邊)も 所々
やけ者゛ これある      やけ者゛(焼け場)これある(有之)
この多びの          この多び(此度)の
やけ者゛ これ        やけ者゛(焼け場) これ
までと □(こと)ニ      まで(是迄)と □(こと)(異)ニ
して ぜん           して ぜん
多゛んミもんの        多゛んミもんの(前代未聞の)
ちんじゆへ          ちんじ(椿事)ゆへ(故)
ゑんごくへの         ゑんごく(遠国)への
書状の中へ          書状の中へ
ふうじ賜へバ         ふう(封)じ賜へバ
阿りしさ滿          阿(あ)りしさ滿(さま)
其者゛ニ而ミる        其者゛(其の場)ニ而ミる(見る)
尓 おなじ           尓(に) おなじ(同じ)


頃は 慶應四辰年五月十五日
薩州様、長州様、細川様、鍋島様 因州様、その外 官軍 御人数 上野へ御出張
朝六つ半時より、彰義隊と合戦に相い成り、
官軍方にて午(うま)の刻、黒門破る、戦いは七つ時に鎮まる。
焼け場所は、山下通り焼ける 車坂より廣徳寺前、さくらかと申す油屋の先、
木戸にて止まる、
又、少々離れて、柳の稲荷の所、 少々焼ける、また一ト口は、廣小路東側、木具屋
にて留る
上野町、御徒内 、両側焼ける、又、西側、残らず焼け、天神下同朋丁 木戸際にて
焼け止る
それより、御数寄屋町、焼ける 仲丁通り、片側丁、錦袋円隣にて止る
又一ト口は、谷中 善光寺坂より根津総門まで焼ける。
御切手丁、 山崎丁、少々焼ける。

また一ト口は、坂本壱丁目、貳丁目、木戸際にて留る。三丁目、自身番の側、少々
焼ける。
谷中 天王寺前、残らず焼ける。
後詰め、お固めは、谷中口へ 因州様、藤堂様、御手合わせ、これある。
上野御山内 山門より、奥の方、大半焼ける。
尤 根津邊も、所々焼け場これある(有之)。
此の度の焼け場、これまでと異にして、ぜん多゛んミもん(前代未聞)の椿事ゆへ(故)、
ゑんごく(遠国)への書状の中へ封じ賜へば、有りしさま、其の場に見るに同じ。



〇因州様 鳥取藩(因幡国・伯耆国) 鳥取池田家(松平)
〇廣徳寺 禅寺(臨済宗大徳寺派) (練馬へ移転。旧地は現・台東区役所)
       びっくり下谷の広徳寺 おそれ入谷の鬼子母神




えどはくカルチャー・古文書講座 テキスト「實語経」-隅から隅まで

2012-07-01 | 古文書入門
 銘
實語者(は) 是
君子之實
語□(亙・互)隨(随)教
 銘
童子者固
性善之童
子何背教


参議佐理郷(卿) 鎮西よ里     さんぎさりきやう ちんぜいよ里(り)
皈亰之と起 伊豫國の沖尓て  ききやう之(の)と起(き) いよのくにのおき尓(に)て
雨風うちつゞきぬ連ハ 舩中   うふううちつゞきぬ連ハ(れば) せんちう
驚懼のおもひを那しつ類丹    きやうくのおもひを那(な)しつ類(る)丹(に)
白衣能老人 額越持し天   者(は)くえ能(の)らうしん 可(が)く越(を)じし天(て)
舟丹うつ里 汝尓名(命)じ亭   ふね丹(に)うつ里(り) なんぢ尓(に)めいじ亭(て)
此額を書さしめん堂め丹    このがくを 可ゝさしめん堂(た)め丹(に)
雨風をもつ亭 とゞめぬと    うふうをもつ亭(て) とゞめぬと
志免し个連バ 日本惣鎮  志免(しめ)し个連(けれ)バ 丹つ本ん(にっぽん)さうちん
守 三島大明神と書个る尓   しゆ ミしま多(だ)いみやうじんと かき个(け)る尓(に)
老翁もさら春 風も屋ま     らうおうもさら春(ず) かぜも やま
ざ里し可ハ 此文字耳 福   ざ里し可バ このもんじ耳(に) ふく
壽乃點越打と 飛とし具    じゆ乃(の)てん鉞(を)うつと ひとし具(く)
可勢もを多ミ 老翁もさりぬ   可勢(かぜ)もを多ミ らうおうもさりぬ
佐理卿ハ 日本三跡乃     さりきやうハ 丹つ本ん(にっぽん)さんせ起(き)乃(の)
      壱人な里                      壱人な里(り)

参議佐理卿 鎮西より
帰京のとき 伊予国の沖にて
雨風うちつづきぬれば 船中
驚懼のおもひを なしつるに
白衣の老人 額を持して
舟にうつり 汝に命じて
此の額を 書かさしめんために
雨風をもつて とどめんと
しめしければ 日本惣鎮
守 三島大明神と書きけるに
老翁もさらず 風も やま
ざりしかば 此の文字に 福
壽の點を打つと ひとしく
かぜも おだみ 老翁もさりぬ
佐理卿は 日本三蹟の
        一人なり


〇佐理卿
藤原佐理(ふじわらのさり ふじわらの・すけまさ) 平安時代中期の公卿・能書家。
〇三蹟 小野道風・藤原行成・藤原佐理


(記)
いまの段階(レベル)では、変体仮名を一番に意識しています。



えどはくカルチャー・古文書講座 くずし字入門 

2012-06-12 | 古文書入門
テキスト『實語教』の「くずし字」、ふり仮名(変体がな)の復習・自習です。

テキストに首っ引き、「釈文」を脇に、ゆっくりと読みすすめてみました。
本来なら、講師の先生、お話のとうり「写字」が基本のようですが(それにプラス「音読」)、ここではブログ用に、一字一句を確かめながら追ってみました。
1
實語教     実語教
志川(じつ)ごきやう
 ・志=し、じ
 ・川=つ (川)を草書で書くと(つ)になる。(つ)は大文字・小文字の区別なし。
 ・(ご) 単独だと(で)に見えるので要注意。
 ・きやう=きょう (や=ょ)

山髙故不貴  山 高きがゆえに 貴っとからず
やま 多可起可(たかきが)ゆへ尓(に) 多川と可ら(たつとから)寸(ず)
 ・◎(・た)のくずし字は頻出。
    (た)には見えないが(逆つ)(変形、と)として覚える。
 ・◎(・か)も大頻出。小さな(る)(ろ)に見えたら、ともかく(か)も思い出す。
 ・(起・き) (記)の草書に見える。
 ・(へ) くずしだと(人)にも見える。
 ・◎(・に)も、よく出てくる。(不・ふ)に見えたら(尓・に)。やや少し小さいか。
 ・(ら) (たて棒+つ)のよう。
 ・(寸・す) もともと同じにみえる。 不(寸・ず) 不(春・ず)もある。

以有樹爲貴  樹 有るをもって 貴しとす
き あるをもつて たつとしと春(す)
 ・(あ) (の・ね)の変形のようにも見える。一字だけだと難解、文の前後関係で。
 ・(を) (と)のごちゃった字として。
 ・(も) 釣竿のハリのイメージ。(り)にも見える。
 ・◎(春・す) (と)(を)のさらなる上部変形(士・さ+と・て)として覚える。爲・す

人肥故不貴  人 肥えたるゆえに 貴っとからず
ひと こへ多(た)るゆへ尓(に) 多川と可ら(たつとから)春(ず)

以有智爲貴  智 有るをもって 貴しとす
ち あるをもつて たつとしと春(す)

富是一生財  富は これ 一生の財
とミハ こ連(れ) いつしようのざい
 ・(み) ほとんど(ミ)で表記されてる。
 ・(は) (ハ)で表記。(ハ)と(ワ)も共用か。
 ・(連・れ) 上-たて棒にまわりグニュ、下-(と)の合成に見える。 是(こ連・これ)

身滅即共滅  身 滅すれば すなわち 共に滅す
ミ めつすれバ 春(す)なハち とも尓(に)めつ春(す)
 ・(な) (る)に似てる。あとで(奈・な)が出てくるが、草書だとほぼ同じ字。

智是万代財  智は これ 万代の財
ちハ こ連(れ) 者(ば)ん多(だ)いの多可(たか)ら
 ・(者・は・ば) くずし字、単独だと読めない。

命終即随行  命終れば すなわち 随へて行く
いのちおハ連(れ)ハ すなハち 志多可(したが)ヘてゆく

2
玉不磨無光  玉 磨かざれば 光なし
多満(たま) ミ可ゝ(みがか)ざれバ ひ可(か)りなし
 ・(満・ま) くずし、読めず。あえていえば(匁)に似てる。

無光爲石瓦  光なきをば 石瓦とす
ひ可(か)りなきをバ いしかハ(わ)らと寸(す)


實語教
山 高きがゆえに 貴っとからず。 樹 有るをもって 貴しとす。
人 肥えたるゆえに 貴っとからず。 智 有るをもって 貴しとす。
富は これ 一生の財。 身 滅すれば すなわち 共に滅す。
智は これ 万代の財。 命終れば すなわち 随へて行く。
玉 磨かざれば 光なし。 光なきをば 石瓦とす。


有朽 無朽
朽つること有り 朽つること無し  くつる□(こと)あり くつる□(こと)なし
 ・□(こと) 合字。タテに長い(を)の変形にも見える。
千両金  千両の金(こがね) せん里(り)やうの こ可(が)ね
 ・(里・り)
不如  志(し)か春(ず)
不合  あ者(は)春(ず) ここの、者(は)は読めない。
不存  ぞんぜ春(ず)
 ・春(ず) (さ+と)の合わせた字にみえる。
3
勿倦  うむ□(こと)奈可連(なかれ) 倦むこと勿れ
勿怠時  おこ多(た)る と起(き) 奈可連(なかれ) 怠るとき勿れ
4
爲無財人者  ざ以(い) 奈起(なき) ひとの多め尓(ために)ハ 財 無き人のためには
 ・爲 多め尓(ために) 3文字、ひとくくりで。
如霜下花  志毛(しも)の志多(した)の者奈(はな)の□ごとし 霜の下の花の如し
 ・本文(漢字)を見て、ふりがなを読む。ふり仮名のほうが難しい。(何か変)
 ・者(は)は、くずし過ぎ。 (慣れて、覚えるのみ)
父母如天地 師君如日月
 ・父母 ふ本(ぼ) (本)のくずし
 ・日月 ぢ川(つ)个(げ)門(川)(つ)
5
 ・朝夕 てうせ起(き) ちょうせき
 ・昼夜 ちうや ちゅうや


くり返しになりますが、一連の絵として覚える、実際に書いてみる、声に出して読む、をセットにして地道にやっていくしかない、というのが上達への道 (古文書・くずし字入門を脱して次なるステップにいく道) かなという感じです。



えどはくカルチャー・古文書講座 5

2012-06-10 | 古文書入門
實語教 その5 (テキストの本文 8~9頁)

8
雖冨勿忘貧  或始冨終貧
雖貴勿忘賤  或先貴後賤
夫難習易忘  音聲之浮才
又易學難忘  書筆之博藝
但有食有法  亦有身有命
猶不忘農業  必莫廃學文

とミ多(た)つと いへども ひんを ワするゝ□(こと)なかれ
あるいハ 者(は)じめ とミ お者(は)りニ まづし
たつとしと いへども いゆきを ワする□(こと)奈可(なか)れ
あるいハ さき尓(に) 多(た)つとく のち尓(に) いやし
そ連(れ) 奈(な)らひ可多(かた)く ワす連(れ)やすき(□)
をんせいの ふさいハ
ま多(た) ま奈(な)びや春(す)く ワ春(す)れ可多起(がたき)ハ
志(し)よひつの 者(は)く个(げ)い(ハ)
多(た)ゞし 志(し)よく(ニ)あれバ 本(ほ)う(ニ) あり
ま多(た) ミ(ニ)あ連(れ)バ いのち(ニ) あり
なお のうぎやうを ワ春連(わすれ)ざれ
可奈ら寸(かならず) 可(が)くもんを すつる□(こと)奈可(なか)れ

冨たつと雖も 貧を忘るることなかれ  或いは 始め冨み 終りに貧し
貴しと雖も 賤(いゆき)を忘ることなかれ  或いは先に貴く 後に賤(いや)し
それ習い難く 忘れやすき(し)  音聲の浮才は
また 学びやすく忘れがたきは  書筆の博藝(ハ)
但し 食(ニ)有れば 法(ニ)有り  また身(ニ)有れば 命(ニ)有り
猶(なお) 農業を忘れざれ  必ず學文を 廃つることなかれ

9
故末代學者  先可案此書
是學問之始  身終勿忘失
實語教終

可る可ゆへ尓(かるがゆえ)に まつ多(だ)いの 可(が)くしや
まづ この 志(し)よを あん寸(ず)べし
これ 可(が)くもんの 者(は)じめ
ミ(み) をハるまで 本(ぼ)う志(し)つする□(こと)奈可連(なかれ)
じつごきやう おハり

故(かるがゆえ)に 末代の 学者  まづ この書を 案ずべし
これ 学問の 始め  身を終わるまで 忘失することなかれ
実語教 終り



えどはくカルチャー・古文書講座 4

2012-06-09 | 古文書入門
實語教 その4 (テキストの本文 6~7頁)

6
不乘四等舩  誰渡八苦海
八正道雖廣  十惡人不往
無爲都雖樂  放逸輩不遊
敬老如父母  愛幼如子弟
我敬他人者  他人亦敬我
己敬人親者  人亦敬己親

しとうの ふね尓(に) のら春(ず)んバ
多れ可(たれか) 者(は)つくの うミを ワ多(た)らん
者(は)つしやうのミちハ ひろしといへども
じうあくのひとハ ゆ可(か)春(ず)
むゐの ミやこハ 多(た)のしといへとも
本(ほ)ういつの ともがらハ あそバ春(ず)
をひを うやまふ□(こと)ハ ふぼの□(ごと)し
いとけ奈起(なき)を あいするハ していの□(ごと)し
ワ連(れ) 多(た)尓(に)んを うやまへバ
多(た)尓(に)ん また ワれを うやまふ
ワ連(れ) ひとの おやを うやまへハ(ママ)
ひと また ワ可(が) おやを うやまふ

四等の舩(船)に乗らずんば  誰か八苦の海を渡らん
八正の道は広しといえども  十惡(悪)の人は往かず
無爲の都は 楽しといえども  放逸の輩は 遊ばず
老いを敬うことは 父母の如し  幼けなきを愛するは 子弟の如し
我れ 他人を敬えば  他人 また 我れを敬う
己(わ)れ 人の親を敬えば  人 また 己(わ)が親を敬う

四等の舩・・・身法をいい、佛の道を指す
八苦・・・生老病死の四苦と愛別離苦、怨懀會苦、求不得苦、五陰盛苦
八正・・・
無爲の都・・・悟りの理想郷

7
欲達己身者  先令達他人
見他人之愁  即自共可患
聞他人之喜  則自共可悦
見善者速行  見惡者忽避
好惡者招禍  譬如響應音
宛如隨身影  修善者蒙福

おのれ可(が)ミをバ 多(た)つせんと 本(ほ)つせバ
まず 多(た)尓(に)んを 多(た)つせせしめよ
多(た)尓(に)んの う連(れ)いを ミてハ
すなハち ミず可(か)ら とも尓(に) う連(れ)ふべし
多(た)尓(に)んの よろこびを きいてハ
す奈(な)ハち ミず可(か)ら とも尓(に) よろこぶべし
ぜんを ミてハ 春(す)ミや可(か)尓(に) おこ奈(な)へ
あくを ミてハ 多(た)ちまち さけよ
あくを このむものハ ワざハひを まねく
多(た)とへハ ひゞきの おと尓(に) おふ春(す)る□(ごと)し
あ多可(たか)も ミのかげ尓(に) 志多可ふ可(したがふが)□(ごと)し
ぜんを しゆする ものハ さいハいを かふむり

己が身をば達せんと欲せば  まず他人を達せしめよ
他人の愁いを見ては  即ち自ら共に患うべし
他人の喜ぶびを聞いては  すなわち自ら共に悦ぶべし
善を見ては 速やかに行なへ  悪を見ては たちまち避けよ
悪を好む者は 禍いを招く  譬えば 響きの音に応ずるが如し
宛も 身の影に随うが如し  善を修する者は 福(さいわい)を蒙り

(続きます。次が最終回)