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決裁とは何か(シリーズもの1)

2018年05月17日 01時38分25秒 | 決裁・稟議
決裁文書を、後から書き換えるというのは「犯罪」です。それは、公務員でも
会社員でも同じことです。この「犯罪」というのは、公文書偽造や私文書偽造
のような罪もあるかも知れませんが、それよりも何よりも、自分が所属している
組織に対する裏切りです。株式会社でいうなら、株主に対しての裏切りであり、
一緒に働いている同僚への裏切りという「犯罪」です。

ここ最近のニュースを見ていて、決裁文書の書き換え問題が多く出てきていますが
それに対してのリアクションをなんとなくみていると、あまり世の中の人が
決裁を知らない感じがしたので「決裁」について少し書きたいと思います。


そもそも決裁とは何かというと、組織として何かを決定することを「決裁する」と言います。
ここのポイントは「組織として」「決定する」ということです。
組織に所属する個人が、個人的に、個人的な目的の為に決めることは決裁とは言いません。

事業部長や部長が個人で決裁する(=何かを決める)こともあるかも知れませんが、
その決定は、その人個人が判断して個人的に決めたものではありません。事業部長という
職位の人間が、その職位・職責から組織の利益になると判断して、決定するのが決裁です。

例えば、事業部長の部下である部長が、得意先と忘年会を開催したいので、交際費として
5万円の申請を事業部長にしてきたとします。その際、事業部長はこの得意先の年間売上高
利益率、今後の取引の継続性や発展性などを考え、今回忘年会で5万円を使う事に
意味があるのかどうか、5万円を使うことが合理的な説明がつくかを考え、判断するのです。
もし、その得意先との年間の取引が10万円しかなかった場合、その売上の半分の5万円を
忘年会に使うというのは、組織として全く持って合理的な説明がつきません。
この1回の忘年会で費用が取引の50%を占めるわけですから(勿論、それで申請する
部長も部長ですが…)。

でも、実は得意先の取引見直しが年明けにあることがわかっていて、上手くすると逆に
来年度から年間1,000万円の取引高になる可能性がある、というのであれば5万円を
使うのは合理的であると判断しても良いと思います。上手く行けば今回の費用は売上の
0.5%ですから。

事業部長として自分が所属している組織の売上向上という明確な目標があり、
その目標に向かって貢献する一つの方法として、その得意先と忘年会を開催することで、
年明けの取引見直しについて何かしらの情報を得てくる。また、得意先の担当と人間同士、
個人的な信頼関係をつくっておく。取引見直しで競合他社とコンペになり最後の2社に残り、
経済条件もほぼ同じで、どっちにする、となった場合、得意先担当者の最後のひと押しで
一言だけ「こちらの会社の方が仕事し易い」と言ってもらう。

そんなことを考えて、事業部長は決裁をするわけです。
部長が個人的に良い奴だから、この間、誕生日にプレゼント貰ったから、たまには
得意先と飲みに行かせてもいいか、と考えて判断するのではありません。
そんなものは決裁でも何でもありません。組織としての決定ではなく、事業部長の
個人的な感情での決定でしかなく、自分の組織や職位・職責に対して背任行為と
会社のお金を私的な目的に使ったという横領を行っただけです。

ある程度の職位・職責につく人間は、それに見合った権限が与えられます。
そのような地位にいる人間はは自らを律し、
「李下に冠を正さず」ということわざの通り、怪しく曖昧な判断をしてはいけないのです。

つづく

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