前回より
稟議について
決裁が交際費や交通費、備品の購入ではなく、もっと大きい案件の場合「稟議」とい
う方法を使います。以前、決裁は「文章/項目」+「ハンコを押す欄」というのがそ
の基本的な体裁の文書だ、と書きましたが、稟議も同じような体裁で見た目の違いは
稟議の場合は「ハンコを押す欄」が沢山あるということです。
以前書いた決裁のこれらの項目の
1.件名:
2.起案日:
3.起案者:
4.管理番号:
5.内容:
6.相手先:
7.金額:
8.サイン欄:
最後の8.サイン欄:が、沢山あると思っていただければ良いです。一辺が2.5cmく
らいの正方形のサイン欄(捺印欄)が並んでいるイメージです。
色々な部署の決裁権者が目を通して、この案件が自分の立場から問題ない案件なのか、
その案件を実施するにあたって合理的な判断が出来ているか、そしてその合理的な判
断の説明がこの稟議文書(決裁文書)の中に論理的に表現出来ているのか、を見るわ
けです。そして問題がなければ「OK」とハンコ(日付も入れて)を押すわけです。
サインの場合も稀にありますが、日本企業は昔からハンコ文化ですのでハンコが多い
です。これはカルチャーとしか言いようがないのと、詳細は別に譲りますが、そもそ
もハンコでなくサインを認めるような「先進的な」(苦笑)企業では、稟議という意
思決定システム自体が存在していないことが多いです。事業部のトップや取締役のトッ
プダウンで、組織の意思決定上もサイン一発で決まってしまうことも多いです。
勿論、先述した通り、オンライン化されている稟議システムも世の中には多数ありま
すし、普通はオンライン稟議が大部分かと思います。この場合のハンコとサインとい
うのは象徴だと思っていただければと思います。
そもそも稟議という行為を何故やるのかというと、先述した内容とかぶるところはあ
りますが、公務員・会社員に関わらず、組織としての大きな意思決定のプロセスを明
確に、過不足なく動かない紙などに証拠として残す、ということをするためです。
それをやっておくことで、組織の中でこの案件を担当者が勝手に実行したのでなく、
組織としてその時点での合理的な判断のもと意思決定し、実行した、ということの証
拠書類となります。
この証拠書類があれば、その時点の意思決定が論理的に正しいことを証明出来るので
す。例えばその時点では、会社のマネジメント全員が「行ける」と判断したことでも、
大失敗するプロジェクトもあるわけです。しかしながら、その時点では全員で考えて
色々と検討した結果論理的に考えて「行ける」と判断した記録が残っているというこ
とは、大事な証拠となるのです。
そしてその論理的な正しさを官公庁の場合は国民に、会社の場合は株主に説明する
根拠(証拠)資料となるという訳です。稟議で意思決定したことが、後に大成功をし
たとしても、大失敗したとしても、結果はどうあれ「やる」と決めた時にロジカルに
考え、合理的に判断をした、ということを、組織のステークホルダー(国民や株主)
に、後から検証可能なカタチで意思決定の記録を残す行為が稟議というものなのです。
そう考えると、この稟議を後から書き換える、改ざんすることの罪深さがわかると
思います。後からそのプロジェクトの結果を見た(例えば失敗した)後に、当時の
稟議を書き換えて「私はイマイチって思っていましたが、しょうがなく賛成しました」
とかにしてしまったら、株主からの付託を受けて行っている経営の根本が崩壊します。
それをやってしまうと、何を信じて良いのか、組織としてよって立つ足場が完全になくなり
検証可能な積み上げが無くなってしまうのです。経営は因果関係を作り出すことです。
因果関係を示す証拠の1が稟議なのですから、決裁文書を後から書き換えるということ
は絶対にやってはいけません。それは組織(以下、官公庁・民間企業の両者を指す)を
裏切り、欺く行為です。
ちょうど、先日ロシアワールドカップの直前になって、ハリルホジッチ監督をクビにすると
いう事がありました。これは改ざんとは関係ありませんが、果たしてロジカルに考えて合理的
に判断したという記録が残っているのでしょうか。協会の会長がエイヤーで感覚的に決めて
しまったのではないかと推測します。何故なら会長は記者会見で「選手との信頼関係が多少
薄れてきた」という信じられないくらい曖昧な理由しか語らなかったからです。
この曖昧な稟議や決裁文書に残らない、ユルい決断が監督更迭という重大な場面で行われて
しまった為、ハリルホジッチ監督下の日本代表のこの3年間は検証不可能となりました。
積み上げてきたものに、何が意味があり、何が意味がなかったのか、全くわからないまま、
何も記録がないまま判断が下されました。因果関係をたどる1つの手がかりが失われて
しまったのです。
つづく
その1へ
稟議について
決裁が交際費や交通費、備品の購入ではなく、もっと大きい案件の場合「稟議」とい
う方法を使います。以前、決裁は「文章/項目」+「ハンコを押す欄」というのがそ
の基本的な体裁の文書だ、と書きましたが、稟議も同じような体裁で見た目の違いは
稟議の場合は「ハンコを押す欄」が沢山あるということです。
以前書いた決裁のこれらの項目の
1.件名:
2.起案日:
3.起案者:
4.管理番号:
5.内容:
6.相手先:
7.金額:
8.サイン欄:
最後の8.サイン欄:が、沢山あると思っていただければ良いです。一辺が2.5cmく
らいの正方形のサイン欄(捺印欄)が並んでいるイメージです。
色々な部署の決裁権者が目を通して、この案件が自分の立場から問題ない案件なのか、
その案件を実施するにあたって合理的な判断が出来ているか、そしてその合理的な判
断の説明がこの稟議文書(決裁文書)の中に論理的に表現出来ているのか、を見るわ
けです。そして問題がなければ「OK」とハンコ(日付も入れて)を押すわけです。
サインの場合も稀にありますが、日本企業は昔からハンコ文化ですのでハンコが多い
です。これはカルチャーとしか言いようがないのと、詳細は別に譲りますが、そもそ
もハンコでなくサインを認めるような「先進的な」(苦笑)企業では、稟議という意
思決定システム自体が存在していないことが多いです。事業部のトップや取締役のトッ
プダウンで、組織の意思決定上もサイン一発で決まってしまうことも多いです。
勿論、先述した通り、オンライン化されている稟議システムも世の中には多数ありま
すし、普通はオンライン稟議が大部分かと思います。この場合のハンコとサインとい
うのは象徴だと思っていただければと思います。
そもそも稟議という行為を何故やるのかというと、先述した内容とかぶるところはあ
りますが、公務員・会社員に関わらず、組織としての大きな意思決定のプロセスを明
確に、過不足なく動かない紙などに証拠として残す、ということをするためです。
それをやっておくことで、組織の中でこの案件を担当者が勝手に実行したのでなく、
組織としてその時点での合理的な判断のもと意思決定し、実行した、ということの証
拠書類となります。
この証拠書類があれば、その時点の意思決定が論理的に正しいことを証明出来るので
す。例えばその時点では、会社のマネジメント全員が「行ける」と判断したことでも、
大失敗するプロジェクトもあるわけです。しかしながら、その時点では全員で考えて
色々と検討した結果論理的に考えて「行ける」と判断した記録が残っているというこ
とは、大事な証拠となるのです。
そしてその論理的な正しさを官公庁の場合は国民に、会社の場合は株主に説明する
根拠(証拠)資料となるという訳です。稟議で意思決定したことが、後に大成功をし
たとしても、大失敗したとしても、結果はどうあれ「やる」と決めた時にロジカルに
考え、合理的に判断をした、ということを、組織のステークホルダー(国民や株主)
に、後から検証可能なカタチで意思決定の記録を残す行為が稟議というものなのです。
そう考えると、この稟議を後から書き換える、改ざんすることの罪深さがわかると
思います。後からそのプロジェクトの結果を見た(例えば失敗した)後に、当時の
稟議を書き換えて「私はイマイチって思っていましたが、しょうがなく賛成しました」
とかにしてしまったら、株主からの付託を受けて行っている経営の根本が崩壊します。
それをやってしまうと、何を信じて良いのか、組織としてよって立つ足場が完全になくなり
検証可能な積み上げが無くなってしまうのです。経営は因果関係を作り出すことです。
因果関係を示す証拠の1が稟議なのですから、決裁文書を後から書き換えるということ
は絶対にやってはいけません。それは組織(以下、官公庁・民間企業の両者を指す)を
裏切り、欺く行為です。
ちょうど、先日ロシアワールドカップの直前になって、ハリルホジッチ監督をクビにすると
いう事がありました。これは改ざんとは関係ありませんが、果たしてロジカルに考えて合理的
に判断したという記録が残っているのでしょうか。協会の会長がエイヤーで感覚的に決めて
しまったのではないかと推測します。何故なら会長は記者会見で「選手との信頼関係が多少
薄れてきた」という信じられないくらい曖昧な理由しか語らなかったからです。
この曖昧な稟議や決裁文書に残らない、ユルい決断が監督更迭という重大な場面で行われて
しまった為、ハリルホジッチ監督下の日本代表のこの3年間は検証不可能となりました。
積み上げてきたものに、何が意味があり、何が意味がなかったのか、全くわからないまま、
何も記録がないまま判断が下されました。因果関係をたどる1つの手がかりが失われて
しまったのです。
つづく
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