廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

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ユセフ・ラティーフを見直す

2020年06月19日 | Jazz LP (Impuise!)

Yusef Lateef / The Golden Flute  ( 米 Impulse! A-9125 )


聴けば腰が抜ける大傑作である。どうして誰も褒めない? やっぱりスキンヘッドは怖いのか?

マルチ・リード、イスラム系中東文化、スキンヘッドとなると、大方のファンは引いてしまうのかもしれない。そう言えば、ロリンズもモヒカンに
したころから人気に陰りが出始めた。マイルスもダサいパンタロンを履きだしたころからファンが離れ始めた。エヴァンスも長髪に髭を生やすと
途端にレコードが安くなる。そんなに見た目に左右されるかなあ。

このアルバムはパッケージの仕方がおかしくて、それも敬遠される理由かもしれない。実際にフルートを吹いているのは2曲だけで、基本的には
テナーのワンホーン・アルバムだ。その音は太く、ずっしりと重く、なめらかでとにかく美しい。フレーズはわかりやすく、よく歌っている。
こんなにいいテナーはそう簡単には聴けないだろう。

フルートも他の奏者たちよりも音色が深く落ち着きがあり、まったく質感が違う。わざわざクラシックのプロの奏者に付いて学んだそうだが、
それがうなずけるプレイが聴ける。とにかくすべての楽器の演奏が正統的で、音色が美しい。

ゆったりと落ち着いたバラードがメインのプログラムで、圧倒される。スタンダードを交えた至極正統派の内容で、ここには中東の匂いも
ニュー・ジャズの匂いもない。どの楽曲も完全に自分の物として消化されていて、借り物ではない、本物だけが持つ説得力に満ちている。

ヴァン・ゲルダーの録音も最高の仕上がりで、空間を深くえぐったような拡がりを創出した凄みのある音場感で音楽を鳴らす。このあたりが
ヴァン・ゲルダー録音の最終到達点だろうと思う。

凄い、という言葉でしか表現できない稀有なアルバムだ。


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