廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

大衆性と芸術性の狭間で

2020年08月23日 | Jazz LP (Verve)

Kenny Burrell / Guitar Forms  ( 米 Verve V-8612 )


ギターの音色がカッコいい。ピアノはダメだったヴァン・ゲルダーだが、ギターは上手く録った。私が聴いた範囲では、ヴァン・ゲルダーが
録ったバレルの音の良さは、ギター本来の音が再現されているという点において、これが群を抜いている。

時代の空気を読むクリード・テイラーの大衆化路線が始まった頃の録音で、ウェス・モンゴメリーが一番上手くこの波に乗ったのに対して、
バレルの方は作品の質がシブめだった。これはギル・エヴァンスがアレンジし、リー・コニッツ、リッチー・カミューカ、スティーヴ・レイシー、
ジョニー・コールズなども参加したゴージャスなアルバム。ドン・セベスキーのアレンジでは出せない独特の浮遊感が用意される中、
バレルはコントロールされた音数で音楽を紡いでいく。

ギル・エヴァンスが得意のスパニッシュな風味をつけており、これがとてもいい。大衆性と芸術性がギリギリのところでせめぎ合う中、
ケニー・バレルのギターはよく歌っている。楽曲もメロデイアスな佳作が揃っていて、難しいことを考える必要もなく、鳴っている音楽に
身を委ねることができる。このアルバムはそこがいい。

ギル・エヴァンスの名前があるせいか、名盤100選に選ばれることもあるようだが、そういうタイプのアルバムではないように思う。
本質的にはかなりシブく、どちらかと言えば地味なアルバム群の中に入るような作品ではないか。だからと言って、作品への評価が
変わるわけではなく、素晴らしい音楽として輝き続ける。

このレコードは音質も良好。ステレオ盤も聴いてみたい。


コメント
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