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「マライの虎」

2008年09月17日 | ドラマ

以前、僕が「ハリマオ」に興味を示している記事を読んだロヒキアさんが僕に打診「『マライの虎』のDVD見つけたんだけど買っとく?」と言われ「…よろしく。お願いします」と購入してもらった「マライの虎」ですが……すみません、ロヒキアさん。ようやく観ました。ちょっと解説文を引用してみます。

テレビ創世記に連続テレビ映画として放送され、一世風靡した「怪傑ハリマオ」のルーツとも言える作品だが、テレビ版のカッコイイヒーローと違っい、マレーシアに住んでいた日本人の床屋の息子が、太平洋戦争の開始により、迫害された家族の復讐に燃え、盗賊となって、暴れ回るが、やがて、日本軍の手先となり、その命令に従って活躍するようになる。マレー人と日本人が協力して、マレー半島の平和を維持するために、連合軍を相手として戦おうと呼びかける戦意高揚映画である。ハリマオとはマレー語で虎を意味する。後に個性的な悪役として活躍する上田吉二も出演している。

…まあ、1943年制作で、いかにも太平洋戦争のまっただ中(既にミッドウェー海戦は終わっていますね)の作品という面はあります。マレーシアに住む日本人・谷豊は、共産華僑に妹の静子を殺され、当時マレー半島を治めていた英国警察に法の裁きを求めるのですが、逆にその共産華僑を操っていたのが日本人を排斥したい英国警察だったと知り、絶望し、警察署長を殺して逃走します。そして「復讐」を誓うという物語なんですが…。
この物語では“小さな復讐“と“大きな復讐”とも言うべき、二つの“復讐”が描かれています。“小さな復讐”は、逃走した谷豊は現地のマレー人と徒党を組んで盗賊となり、支配層の資産を強奪して、貧しい人々にその分け前を配って歩きます。つまり義賊ですね。…そして彼は現地の人々から「ハリマオ(虎)」と崇められるようになるんですが、その行き方は谷豊の母親によって否定されてしまいます。英国の政策(ABCD包囲網)に従い、現地の日本人がマレー半島から引き上げる時、犯罪者である谷豊は影から妹のミチエにお金を渡すんですね。しかし、母親はそのお金を返してこい、豊はもう子供だとは思っていないと言う。



ミチエ「おかあさんは悪い子だと言うかもしれないけど、お兄さんは盗ったもの一つも自分のものにはしないというじゃないの」

母「盗ったものを一つも自分のものにしない豊がなんで三度のご飯を頂いているというの?このお金だってまともなお金じゃないでしょう。豊のしている事は悪い事なんだよ」


そう言って母は日本へ帰って行く。じゃあ、どうすればいいんだ!と悩む谷豊は、旧知の男・安田さんが特務機関の人間である事を知る事によって、もう一つの“大きな復讐”へと導かれて行くわけです。(…という流れだと思うんですけど…編集の具合なのか微妙にシナリオが繋がっていない所があるように思います)
まあ、タネを明かすと盗賊に身を落して稼ぎを配って歩いていても結局は自己満足で世の中は変わりはしない。それならば妹を死に追いやったこの地の成り立ちそのものへの復讐…英国列強の支配を打ち払い、マレーの人々に独立自尊の道を歩ませる事こそが、本当の“復讐”なのではないかと思い至り、日本軍への協力を決意するんですね。



…と、ここまでの文章を読んだところで「いかにも戦中の映画だなあ~w」と苦笑いしてしまう人も多いんじゃないかと思います。実は僕もそう思いました。でも、事件を手引きした警察署長を殺しその時点で復讐を果たしながらも、犯罪者として追われる事になった谷豊が、もう二度と家族と平和に暮らす日常に戻れない自分に悩みながらも、それがマレーの解放の礎となる自分の道であったという決意に変わって行くドラマツルギーは決して悪くはないものだと思うんですね。

前の項で僕は「人を殺したら駄目だ教」とか書いたりして、かなり人格疑われるんだろうなあ…などと思いつつも、また似たような事を書いてしまうんですが(汗)意味のある復讐はある!と僕は思うんですね。だから最初の“小さな復讐”では満たされる事がなかった谷豊の物語に感じ入ってしまったんですが…人格破綻者と思わば思えw(私刑は法律で取り締まるべきですけどね。そういう法治主義とは別の話なんです)その是非は観る人によって違うでしょうけど「マライ」の虎は確かにその答えの一つを見せている。谷豊ことハリマオは最後、英軍のダム爆破による日本軍のシンガポール侵攻の遅延作戦を阻止して死んで行きます。でも彼は確かにマレー半島を解放に寄与し、“大きな復讐”果たしたと言えると思います。

「それは日本軍の侵略という別の一面がある!」と指摘する人もいるでしょうけどね。でも、それは別の映画でやればいい事だと思います。同時に「マライの虎」は実話がモデルという事もあり、当時の日本の政治外交経緯と連動し過ぎで、単純に「フィクションですから!」という言い方をするのはちょっと難しい作品ですね。外国人や華僑の扱いなどにプロパガンダが含まれる事は鑑賞にあたって配慮する必要はありそうです。
あとヒトラーの映像とか(当時、観客はどんな感じで観ていたんだろう?)多分、現地ロケもあるはずで当時の東南アジアの町並みや風俗なんかが観れるのもなかなか「楽しかった」です。


…で、そんな「マライの虎」をベースにして戦後に制作されてた痛快スパイアクション「快傑ハリマオ」のDVDを見つけたので買ってきましたw…1枚500円なんですねえ…安い!!とりあえず「ソロ河の逆襲編」全4巻をそろえましたが、他のシリーズも見つけ次第順次揃えて行きたいと思います。


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4 コメント

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ゴールデンエイジ (ロヒキア)
2008-09-18 18:08:58
復讐者が自警団となり、ヒーローとなっていくのは、例えば映画でいうと「デスウィッシュ」シリーズがあるし、アメコミでいえば「バットマン」があるでしょう(最近の『ダークナイト』では両方やって、かなりギリギリまで追い詰めてますけど)。

「マライの虎」が「怪傑ハリマオ」に進化するメソッドを解析すると、いつか話したスカルマン→こうなるべきだったライダー→こうなってしまったライダーが見えてくるのかもしれません。
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Re:ロヒキアさん (LD)
2008-09-18 19:57:00
こんばんは。

>「デスウィッシュ」、「バットマン」

う~ん。「デスウィッシュ」は復讐者→バイオレンス・ヒーローの流れ、バットマンもそれに近いわけですが、マライの虎自身は最終的に「世の中の仕組みそのものを変えよう(白人支配の打破)」という行動に変わっているのが大きな違いと言えるかもしれません。

今回の「ダークナイト」で言えばバットマンがハービーに託した思いに近いのかな?しかし、一度ダーク・ヒーロー(義賊)となった者は永遠に闇の中で生きるだけで光の道に戻る事はないのか?とでもいう問いかけ(?)に対して、一つの道を指し示しているのが「マライの虎」の面白い所かと思います。(戦時教育ではありますがw)

ちなみに「ハリマオ」はもう最初から徹頭徹尾、特務工作員ですねwしかし「マライの虎」の背景をしれば、彼の光と闇というか大義と策略のギリギリの立ち位置は大変興味深いですね。

「ハリマオ」は、もっといろいろ分析して行こうと思っています。

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チョコレート (MODSTOON)
2008-09-21 13:12:07
『マレーの虎 ハリマオ伝説 (中野不二男・著/文春文庫)』はだいぶ面白かった憶えがあります
快傑 ← 伝説 ← 実像の変遷を見る場合には楽しく読めるテキストとしてお勧めです
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Re:MODSTOONさん (LD)
2008-09-23 02:12:21
>『マレーの虎 ハリマオ伝説 (中野不二男・著/文春文庫)』

情報ありがとうございます。そこらへん含めて色々読んでみようとは思っています。
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