今何処(今の話の何処が面白いのかというと…)

マンガ、アニメ、特撮の感想ブログです。

『必殺渡し人』~共にゆく者、残される者

2011年12月22日 | ドラマ
【必殺シリーズ】



『必殺渡し人』(1983年放映)コンプリート。渡し人は「三途の川の渡し人」という意味ですね。かつて、凄腕の殺し屋として名を馳せながらも、足を洗っていた“鏡の惣太”(中村雅俊)とけっして器量良しではないが情の厚い“お直”(藤山直美)の夫婦。第一話で、武家の一人息子の慰み者になった果てに記憶を失った…つまり、放送第一回の被害者・女性の“お沢”(西崎みどり)と夫婦になる駆け出しの殺し屋“大吉”(渡辺篤史)の、二組の夫婦の物語が印象に残るシリーズです。

惣太は表の稼業では、鏡磨き屋をやっていて……え~っと、鏡って基本女性が化粧に使うもので、そのお客の女衆に、美形というか二枚目というか、ともかく女好きのする男っぷりで、ご贔屓にしてもらって商売している男なんですが、そんなモテモテ男が、けっして美人とは言えないお直をなんで女房に選んだのか……って描写は特になかったですが、でも、そういう不自然さ…という程ではないんですがデコボコ夫婦な空気は描写の中で自然、醸し出されていますね。
しかし、それ故、互いのつながりの深さというか、愛情の深さ……いや、惣太は浮気は絶対しないのですが、妙にお直を邪険に扱っているような描写とかあるんですけどね(汗)逆に、そのそっけなさがいいというか、まあ「墓まで一緒感」があります。

しかし、惣太は彼女には自分の裏稼業を秘密にしていた。それが最終回で、突然の別れにつながります。大奥、ひいては将軍家を敵に回した渡し人たちは、江戸に居られなくなり逃亡を謀る。この時に、惣太はお直を置いて行ってしまう。
逆に大吉とお沢の夫婦は…途中でお沢が記憶を取り戻し、同時に、大吉たちが裏稼業・渡し人である事を知り、その手伝いをして行く事になるのですが、この時の逃避行も、連れ立って行く事になる。…何が違ったかと言うと、夫の秘密を知っているか否かの差なんですよね。惣太はお直に裏稼業の事は絶対に知られたくなかったらしく、その心象が結果として単独行の決意を促したようです。

…このラスト、『必殺必中仕事屋稼業』(1975年放映)を思い出します。半兵衛さん(緒形拳)も女房(というか内縁の妻?)に裏稼業を黙っていて、最終回で知られた上で、一人で逃亡して行く。しかし、お春(中尾ミエ)は最後に半兵衛の裏稼業を知るワケで、それは、なんで半兵衛が突然消え去ったのか知ってはいます。

お直は、本当に突然旦那が蒸発しただけなんですよね。



これはかなり切ない。旦那が消えた理由が分からないというのは……え~…いや、もう、只々、わけが分からないわけで…。惣太を探し、泣き明かして、お直が最後に漏らす「うちの人が、ウチを置いてゆく事なんてあるはずないわ。ぜったい、ないわ~」というセリフは、希望か、夢想か、哀れを誘います。

あと、ちょっと印象に残っているエピソードとして花火の“玉屋”の話がありますね。多くの町人たちを魅了する技術を持ちながら失火騒ぎで江戸追放となり一代限りで潰えた、しかし、今もその掛け声が伝わる玉屋ですが、ここでは玉屋の技術を妬んだ、鍵屋の番頭の手引きで失火し、玉屋は親子共々殺されるという……。
浮世絵なんかでも当時から玉屋の花火ばかりが題材にされる程、人気が高かったらしい玉屋の一代限りという悲劇は、まあ、いろいろ考えられるっちゃあ、考えてしまったり(笑)妙に感慨深かったです。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿