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【伊上勝】『隠密剣士』第一部~時代劇と西部劇の交差

2011年06月06日 | ドラマ


仲間内の上映会の準備で『隠密剣士』(1962年放映)を観ています。とりあえず第一部はコンプリート。…まあ、(↓)の伊上勝脚本のについてのコレクションの上映会なんですけど……第一部はまだ加藤泰先生の志向が強い感じですね。伊上先生に関する言及は第二部以降になりそうです。

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この『隠密剣士』、なかなか設定が深いというか色々、この放送時期(1962年)の時代の語りとして興味深かったりします。『隠密剣士』は寛政年間の老中首座の松平定信の治世の時代。幕府の財政の建て直し策として蝦夷地(北海道)に目をつけた定信は、松前藩に国替えさせ蝦夷地を幕府の直轄領とする理由はないか隠密剣士・秋草新太郎を松前藩を遣わす。…まあ、この秋草新太郎、11代将軍・家斉の腹違いの兄なんですが、それは置いておいて…。

この『隠密剣士』、第一部、かなり西部劇の影響を見てとれます。影響というか…江戸時代は蝦夷地を舞台に西部劇をやろうとしていますね。どうも、もともと邦画の時代劇って、西部劇の影響を受けている“空気”のようなものがあって、これは国内で娯楽映画を撮るにあたって、洋画の西部劇を参考にした面と、国定忠治あたりの天保年間の侠客(アウトロー)ものの、雰囲気が西部劇の時代に似ていた面(これは、日本史で西部劇っぽくなる時代を探した面もあると思いますが…)がありますが、そうではなく、もっとモロに西部劇に似せようとしていますね。

具体的に言うと主人公の秋草新太郎は六連発式の短銃を持っているwまた、松前藩の領民や武士は、なんかみんな当たり前のように種子島銃を持っていて、何かというとそれを持ち出しますwアイヌの猟師も持っていますw東北のマタギなんかを考えても、領民が全く銃を持ち得なかったとも思わないんですが、それにしても装備しすぎw(やっぱりこの頃の時代劇は自由だなあ…)
またアイヌは完全にネイティブ・アメリカンのように描かれている。時々、馬車を襲ったりします。アイヌは松前の領民や、商人たちから差別されていて、アイヌも松前藩を追い出したいと思っている。…いや、もうホント、西部開拓そのままの感じで描いています。幕府隠密の秋草新太郎は、アイヌに肩入れして、時に逃亡を助けたりするんですが、たとえばアイヌ独立みたいに決定的にアイヌを救う事はしません。

それは直接描かれませんが言葉として時々出てくる「ロシアが蝦夷を狙っている」という事も関係します。ここが西部開拓と大きく違う要素と言えそうです。ちょっと、語り損なっていましたが、隠密の秋草が、松平定信の密命で蝦夷に来たのは「理由を見つけて松前藩から蝦夷地を取り上げるため」なんですよね。およそ正義らしからぬ任務です(汗)これがさらに、隠密抹殺指令を受けている松前藩士の木場陣十郎が、アイヌも領民も無下に扱わないいい奴で(汗)増々、任務の正当性が分からなくなる。
最終的に蝦夷を松前藩から取り上げる話は無しになるのですが、木場陣十郎とは悪人ではないと知りつつ、けじめとして対決して彼を斬り殺してしまいます。……一応、子供向き番組のはずなんですが、なかなか深いです。

……まあ、第二部に入って伊上先生のフィールドに入るとかなり雰囲気も変わるっぽいんですけどね。これはまた次の機会としたいです。あと、以前にも、時代劇~『木枯し紋次郎』なんか~の西部劇の影響を書いていますが(↓)、こっちはマカロニウェスタンの話ですね。今回の『隠密剣士』は、クラッシックな西部劇のイメージです。(ちなみにレオーネの『荒野の用心棒』は1964年)ここらへんの、西部劇と、邦画の時代劇の交差も、ぼちぼちと掴んで行きたいと思っています。

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