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今週の一番『ムシブギョー』物語の出発点“動機”と変化する“機巧”

2011年01月29日 | マンガ
【1月第2週:ムシブギョー 第2陣◆月島仁兵衛、参る!! 】
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【漫研】
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少年サンデーで『ムシブギョー』(作・福田宏)がはじまりました。この作品、少年サンデー超増刊で連載されていて、相当な人気を得たようで本誌に昇格して、新たに一から物語を組み上げて行くようです。僕もこの作品はクラブサンデーで読んですごく好きになりまして、マメにチェックしたり、単行本買ったりしていたので、とても嬉しいです。増刊から、本誌に昇格というのは『戦え!梁山泊 史上最強の弟子』(現『史上最強の弟子ケンイチ』)以来ですから……実に9ぶりの快挙という事になりますか。

『ムシブギョー』は享保年間(…かな?)に江戸に跋扈しはじめた“巨大な虫”たちを退治する公儀組織“蟲奉行”に入った月島仁兵衛くんの『物語』です。すごく、気持ちの良い物語です。それこそ『赤胴鈴之助』なんかを思い出す……これだけ真っ直ぐな少年マンガも最近は珍しいですね。

本誌で一からはじめるって…『史上最強の弟子ケンイチ』の時も「大丈夫かなあ?」と思ったんですが、そこらへん、まったくの杞憂でした。現在、3話まで連載されていますが、ほとんど完璧じゃないかという程の組み上げを見せていると思います。考えて見れば当たり前の話で、増刊連載という“実地検証”を得てそれをブラッシュアップして再エントリーするんですから、作品の精度が上がらないわけがないw
……いや、正直に言うと同じ話を繰り返し読む事になる、僕の方のテンションが大丈夫かなあ?という感覚もあったんですが、繰り返しますがそれも杞憂でした…って、なんなの!僕は!?何を気にしているんだ!(`・ω・´)


■仁兵衛の“悔しさ”という動機

新規に組み直された『ムシブギョー』は、その初動(スタートダッシュ)において、動機はビルドされ、構造はくっきりと見渡しやすく、その上で痛快に!描いてくれました。ほとんど無駄にやる気だけは満ち満ちている主人公・月島仁兵衛に対して、連載第一話でその動機を語る所は良かった。また、すごくいい話なんだこれがw



今、ワシは武士の道を説いている!!

「自分は勇敢に戦える」そう信じていた子供の頃の仁兵衛は、“巨大虫”をはじめて見たとき、怯えて動くべき時に動けなかった。憧れだった強い父は、自分のその失態の責任をかぶって左足の筋を自ら切ってしまう。自分が、父の武士としての未来を奪ってしまった事を、深く悔やみ、泣いた仁兵衛は、いつか父を越えて父が誇れる強い武士になる事で「自分の為」にそうしてくれた恩に報いようと決意します。
そして、また、あのような巨大な虫が現れた時、今度こそ戦い、今度こそ勝てるように、おそらく(間違いなく)それを想定して苛烈過酷な修行を積み上げてきたと。

これ元々の『ムシブギョー』の時は、父ちゃんは普通に健在で、与力の松ノ原小鳥も仁兵衛を直接スカウトにやってきているのですが、新たな『ムシブギョー』では父の源十郎をスカウトに来ています。父は歩行困難な事を理由にお役目は断るのですが、そこで強引に仁兵衛が父の代わりのお役目を買って出るという形になっています。
これによって仁兵衛くんは、動機の塊みたいなキャラクターになっていて、おそらくその後、日がな暇さえあれば無茶な特訓を繰り返している事が描かれるであろう事に強い意味を持たせている。仁兵衛くんにとって「立派な武士」になるというのは単なる憧れだけではなく、「あの時ダメだった自分」から、そうで無い者に変わろうとする決意なんですよね。

またヒロインの一人である町娘のお春ちゃんも、かつて両親を“虫”に殺されたという設定が加えられて、襲ってきた虫から自分を救ってくれた仁兵衛に気持ちが向かうという動作に動機付けを与えています。


■火鉢というヒロインの機巧



また1~3話の間で、仁兵衛を取り巻く『構造』をキレイに見せたと考えているのですが、その中に、火薬のスペシャリストにして本作の一位ヒロイン・火鉢さんがいなかった事は『面白い』なと思いました。……え?お春ちゃん?いや…もう、なんか普通に火鉢さんの方が一位やん?拮抗してないやん?表紙、仁兵衛と火鉢が多いし?(´・ω・`)

しかし、そのお春ちゃんは、今言った3話の中に収まって仁兵衛と“会う”のですよね。元の『ムシブギョー』でも先に合っているのはお春です。それは仁兵衛というキャラクターを巡る構造のコアとしてはお春ちゃんの方が必要だから…とでも言うか。もう一人、仁兵衛が真に憧れる、無涯というキャラクターがいるのですが、こちらは当然、3話で登場している。
つまり、仁兵衛というキャラクターの、構成要素として必要不可欠なものを取捨して行くと、まず、活躍する江戸~蟲奉行というフィールド、倒すべき敵としての“虫”、憧れるべき目標としての“無涯”、そして守るべき女の子としての“お春”。これで仁兵衛という物語には必要十分で、火鉢さんは、その後に登場/紹介されて行くであろう仲間たち、同僚の三人の内の一人に過ぎない……とも言えるんです。
同じヒロインでも、お春ちゃんが“お姫様”なら、火鉢は“女戦士”。でも、仁兵衛は戦えるから、女戦士は必ずしも必要ではない…というか。

しかし、見ていれば分かると思うんですが、火鉢は、もの凄い速度で仁兵衛の近くに立つようになるはずですwこの子も、無涯に憧れているのですが、も~うww口では「無涯さん、無涯さん」言っているのに、次第に仁兵衛の事が気になりはじめるという典型的な『女の子ストーリー』のキャラクターなんですよねw
そういう変化して行く機巧こそが、火鉢というキャラクターの『物語』なのでしょうね。その変化して行く事でさえも、他の同僚の恋川春菊、一乃谷天間も持っている機巧なんですけどね、そこはヒロインとしてのピックアップが頭一つ出るだろうなと。(`・ω・´)
ここらへん、月刊ペースで『速度』よく話が進んでいる時は、気を回せなかったのだけど、週刊ペースと“動機”などのビルドで分解されて展開した時に、はじめて、ああ、そういう事かと観えてきた所がありました。

ま、結論としては火鉢さん超カワイイ!!(゜∀゜)大江戸に翔ぶミニスカ最高!!……という事で『ムシブギョー』には期待なワケです。(`・ω・´)


ムシブギョー 蟲奉行 1 (少年サンデーコミックス)
福田 宏
小学館


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