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『HUNTER×HUNTER』~最期の軍儀

2011年09月27日 | マンガ
今週(少年ジャンプ2011年42号)の『HUNTER×HUNTER』(作・冨樫義博)、王メルエムと棋士コムギの最期の軍儀、その描きが至高でした。※以下、ネタバレ全開です。



メルエム「コムギ…余を愚弄するか…?心して答えよ。戯言にはつきあわぬぞ」

コムギ「はい。ワダす、軍儀でふざけた事ないです」

メルエム「わかった。貴様負けたらやはり死ね…!!」


この「王の問い」に、どれほどの者たちが“必死”の答えを返して来たか?ある者は狼狽え、戦慄し、萎縮し、己の生を拾うために頭を垂れ、あるいは己の不屈を示すために敵意を向ける、その「王の問い」を…相手がコムギだからと言って一切その在り様を変える事なく、「貴様負けたら、やはり死ね…!!」と言い放つ、その「王の問い」に……ただ、真っ正直に、真正面から、答えること。気持ちは軍儀に集中したまま、答えること。
最強の存在であるが故に誰にも並び立てるはずがなかった、その場所に、軍儀を通して並び立ち、対局を進める者がいること。



メルエム「黙れ!!考えさせろ!!」



おそらく人類最強であるネテロ会長に(「最強はジンじゃないか?」と予想する人もいるかもしれませんが、『HxH』は戦闘能力の高さは価値の一つに過ぎない…という描きをしているマンガなので……多分、あそこのが戦闘力地上最強を決めるバトルでいいんじゃないか………「まだ上が…!」とか言う必要がないマンガじゃないかと思ってます)読み勝ち、はるかに凌駕してみせた。その時でさえ、一拍も動作を止めなかった者が“長考”させられること。
戦闘力では誰一人足元にも及ぶ事がなかった者が、また負けるかもしれない。「黙れ!!」と声を荒げ、狼狽させる。そういう相手が目の前にいること。



コムギ「ワダすが…こんなに…幸せでいいのでしょうか?ワダすに……ワダすみたいな者に…こんなに素敵な事がいくつも起きて、いいんでしょうか…?」

己の全身全霊をかけて勝ちたい相手に、認めてもらえること。相手もまた、同じ気持ちであってくれたこと。互いに、並ぶ者のなかった、孤高にして孤独だった者たちが、今、ここで邂逅すること。その邂逅によって、既に孤高であるその場所の、はるかな先を垣間見ること。そこに昇って行けること。

この星の王である事よりも、最強である事よりも、自らの生命よりも、全てを引き換えにしても至りたかった“そこ”に至れる幸せを、この場面は見せてくれています。焦がれるような気持ちと恍惚を一息に、胸いっぱいに味わう、そんな1話でした。


HUNTER×HUNTER 29 (ジャンプコミックス)
冨樫 義博
集英社


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